冷めた身体

本当にごめんね。

｢和ちゃん‥
唯電車で帰る｣

逃げるみたいだけど

こんな和也を見てられない。

あたしに泣く権利なんてないのに

涙溢れてきた。

ｶﾞﾁｬ

｢唯、待って｣

　

ドアにかけた手を離した。

｢もうちょっと‥
一緒に居て｣

｢‥‥うん。｣

ドアを閉めた。

｢何かごめんな｣

和也は指で涙を拭って
ハンドルを取った。

｢唯ちゃん行きたいとこない？｣

こんな最低なあたしに向けられたのは

怒りでも
罵声でもなくて

溜まった涙が反射した
優しい笑顔だった。

｢ごめん‥和ちゃ…
ほんと、ごめ‥なさい｣

あたしは和也の腕を掴んで

何か訴える様に泣いた。

その｢何か｣は
多分
どうしようもなく好きって気持ち。

リぉサﾝありがとうｯ☆

どうしてこんなに好きなのに

他の人に気持ち揺れたりするんだろ。

無い物ねだりばｯかりで

本当に大事なものまで無くしてしまう。

　

好きとか
愛してるとか

あたしはたくさんの人に
貰ってきた。

和也も雅樹も
木之下だって言った。

だから今まで分からなかった。

本物なんて。
あたしには。
　

だから身体を簡単に
あげて来たんだ。

ありきたりな
温もりばかり求めていたんだ。

和也がくれたものは

そんな安いものじゃ
なかったんだよね。

本物を
全身で

精一杯
伝えてくれた。

あたし達の月日は
温かいまま。
　

｢唯‥｣

｢ﾋｸｯ‥唯ｯかずちゃ‥すきぃ｣

子供みたいに
泣いた。

こんな時まで
甘えてごめんね。

困らせてごめんね。

｢俺も好きだよ｣

和也が切ない顔で
笑った。
　

｢かずちゃ‥と
離れるのやだｯ｣

あたしの悪い癖。

傷付けたくなくて
離れるくせに
やっぱり欲しくて
また手を伸ばす。

振り回して
結局また愛を探す。

繰り返して

繰り返して

いつまで繰り返すつもり？