『異常』━『先輩』
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#372 [正常]
「これほど母親から愛情を注がれている子供なんて、全国捜し回ってもそうそういないよ。ただ、注ぎ方を少し間違えただけ。
それに、彼女は地下通路を使って外に出ているけど、ちゃんと地下室に戻っている。しかも夫人が墓参りに戻って来る前にね。」
「それがどうしたと言うんですか?」
先輩の言いたいことが理解出来ない僕を馬鹿にするかのごとく、先輩はわざとらしく溜息をついた。
:06/09/30 22:05
:SH901iS
:CO.6ImKM
#373 [正常]
「もし、本当に彼女が、地下室での生活が辛いと思うなら、そのまま隠し通路から外に逃げ出し、2度と屋敷には戻って来ないはずだよ。なのに彼女は屋敷の地下室に戻って来た。
それと彼女は、夫人が墓参りに行っている時間帯に地下室を出る。それは『地下通路の存在をばらしたくないから』という理由もあるが、『母親に心配をかけさせたくないから』という理由もあるのではないかな。」
そう言われると、少女のことを一概に『可哀相』と見なすのは、誤りかもしれない。
:06/09/30 22:06
:SH901iS
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#374 [正常]
けど…
「けど、やっぱり地下室に閉じ込めっぱなしというのは、良くないと思います。少女にはもっと様々な光景を見てほしいし、陽の暖かさや風の心地良さを肌で感じてもらいたい…そう僕は望んでます。」
我ながら臭いセリフを吐いた。
:06/09/30 22:08
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#375 [正常]
「そうは言っても、あんな幼い子供を独りでフラフラ歩かせて良いと思ってる?
今まで外に出歩いて、何も身に起きなかったのが奇跡的なくらいだ。」
「いやいや、誰かさんが少女を貧血という危ない目に会わせようとしましたよ。」
僕の発言を無視して、先輩は話を進めた。
:06/09/30 22:09
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#376 [正常]
「だから使用人に言ってあげたよ。
少女を外に出すのは危険過ぎる。今すぐ地下通路を塞ぐべきだ、てね。」
先輩は冷ややかな笑みを浮かべた。
この悪魔め。それじゃあ夫人と同じではないか。
僕は先輩を睨み付けた。
:06/09/30 22:13
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#377 [正常]
すると先輩は腹を抱えて途端に笑い出した。
「冗談だよ、ジョーダン。そんなこと言ってないって。腹が痛くなるからその顔やめてくれ。」
どうやら先輩は僕をからかったらしい。1発先輩を蹴りたいと思った。
:06/09/30 22:15
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#378 [正常]
「まー落ち着いて。俺は『少女独りで歩かせるのが危険』と言ったんだ。なら、『保護者』を付けて二人で歩けば良い。」
先輩は使用人とお茶を過ごした後、帰り際にこう言った。
「あなたにお願いがあります。お嬢さんの保護者になってくれませんか?
地下通路がどこに繋がっているのか教えます。夫人が墓参りに出掛けた後すぐに、その場所へ向かって下さい。彼女が出てくると思いますので。そして夫人が帰ってくるまで、どこか素敵な場所に彼女を連れて行ってもらいたいのです。」
:06/09/30 22:19
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#379 [正常]
使用人は少し躊躇ったが、先輩の意見に同意した。
「もしもこんなことが夫人にばれたら、間違いなく使用人は殺されるかもしれない。しかし、それを覚悟して彼は同意してくれた。きっと、彼も君みたいなことを考えていたんだろうね。」
先輩はブランコに乗ったまま上を向いていた。多分、月を見ていたんだろう。辺りはそれほどまでに暗くなっていた。
:06/09/30 22:21
:SH901iS
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#380 [正常]
僕は安心した。同時に嬉しかった。
「ありがとうございます。」
僕は先輩に礼を言った。
「あの娘の血、結構飲み過ぎちゃったからね。このくらいはしないと。」
先輩はブランコから降り、公園から出ようとした。その後を追うように僕も歩いた。
:06/09/30 22:24
:SH901iS
:CO.6ImKM
#381 [正常]
「何かおごって下さいよ。夕食とか。」
僕は何となく唐突に言ってみた。
「そんな舌で何か食べられるの?」
そうだった。少女に血が溢れ出るほど舌を噛まれたんだった。そのことをすっかり忘れていた。
「やっぱ大人しく家に帰ります。」
「その方が良いよ。」
地下室のような薄暗い夕闇の中、僕は先輩と別れを告げた。
:06/09/30 22:26
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