ｓtｒiｐ

　
…何だろ？

亜由美と裕也ｸﾝは
ﾎｰﾙに立って踊っている。

亜由美には何も言わず
少し複雑な気持ちで
私は店の外に出た。

また外の静けさに
驚かされる。

ﾌｩと溜め息をつき、
私は電話に出た。

　
莉奈『はい』

司『パーティー中
ごめんなさい。
今、大丈夫ですか？』

莉奈『うん。店の外に
出て来たから』

司『すみません。
…どうですか？
楽しんでます？』

莉奈『ﾄﾗﾝｽがうるさくて
疲れちゃうよ』

　
司『そうなんですか』

莉奈『うん。
…で、どうしたの？』

司『え！？あの…
えーっとですね』

…わかりやすいな。

焦りすぎだよ。

莉奈『まさか…
心配してくれてんの？』

　
自意識過剰な言葉を
無意識に言ってしまった。

司『え？』

司も驚いていたみたい。

莉奈『あ…別に』

撤回しようとしたけど
司は私の言葉を遮った。

司『そうです。
何か…すごく心配で』

　
莉奈『そっか…
ありがとね。
でも大丈夫だよ』

司『何かﾃﾝｼｮﾝ低いし
笑顔引きつってたし…
体調悪いなら無理しないで
帰って下さいね！？』

莉奈『ｱﾊｯ…うん』

司『それだけです。
じゃあまた…』

　
莉奈『ありがとね』

そして電話を切った。

司の言葉が嬉しかった。

一人でも
私の事を心配してくれる
男がいたなんて…

司の優しさが
すごく嬉しかった。

　
静かな店の外は
少し寒かった。

ｼｰﾝっとした外に
急に低い声が響いた。

『電話終わった？』

びっくりして振り返ると
剛ｸﾝが地面に
腰を降ろしていた。

莉奈『剛ｸﾝ…
びっくりした～！』

　
剛『俺もﾄﾗﾝｽ苦手なんだ』

莉奈『…盗み聞き？』

私は怒ったフリをした。

剛『ｱﾊﾊｯ。ごめんね』

だけど剛には
笑って交わされた。

莉奈『別にいいけど…
剛ｸﾝも苦手なんだね』

　
剛『剛でいいよ。
莉奈って呼ぶからね』

莉奈『うん…わかった』

剛『隣座りなよ。
見下ろされてると
何か嫌だから』

莉奈『…自己中！』

そう言いながらも
私は剛の隣に座った。

　
剛『俺さぁ
普段こんな所に
滅多に来ないんだよ。
何かめんどくさいじゃん』

莉奈『私もだよ！？
今日はたまたま…
亜由美と裕也ｸﾝは
しょっちゅうらしいけど』