ぎんいろのおおかみ〈}イラスト付きBL}〉
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#215 [☆Cocomo☆MILK☆]
頭に凛と響いた冷たい声色

この声は。




「セ…」

聞き覚えのあるその声の名を口にするより早く、のしかかっていた男の身体が視界から消えた

同時にザァっと目の前が赤く染まる

「ギャァァァ!」

耳が割けるような叫び声に身体を起こし振りかえると、男がぺたりと腰を抜かしてガタガタと震え出した

⏰:07/08/31 00:15 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#216 [☆Cocomo☆MILK☆]
「あ…あ…よう、妖狼…」

青ざめた男はうわ言のように言い、輝夜の背後を指差した

「妖、狼…?」

輝夜は男が指を指した方向に顔を向け、そして目を見張った

薄暗い中、だらりと力ない手足が見える

それはブラブラと揺れ動き、大量の血液が滴り落ちていた

⏰:07/08/31 00:21 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#217 [☆Cocomo☆MILK☆]
それはズルズルと引きずられながら近より――――ドサリと地に落ちた

「ひっ…」

地に落ちた身体は先程まで自分にのしかかっていた男

何かに食いちぎられたように喉元の肉は開き、おびただしい血液を地に染めている

サァっと血の気が失せ、ふと見つめた視線の先には――――


「お…狼…」

暗闇からヒタリと姿を現したのは、血で染まった口許をペロリと舐め近づく、白銀の狼

⏰:07/08/31 00:29 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#218 [☆Cocomo☆MILK☆]
虎ほどもあるであろう、その大きな体にゆらりと揺れる長い尻尾

グルグルと低くうめき、鋭い牙を見せつけながら一歩、また一歩と近づいてくる

突然現れた狼に唖然ととするも、不思議と恐怖は感じなかった


ふと、狼が輝夜に視線を寄越す

一瞬であったが、その翡翠の瞳に輝夜はハッと息を飲んだ

「もしかして…セツ?」

半信半疑で呟いた声に、狼は小さく笑った気がした

⏰:07/08/31 00:38 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#219 [☆Cocomo☆MILK☆]
白銀の毛並を称えた大きな獣は、呆然と見つめる輝夜を通り過ぎ、ガタガタと震え座り込む男の側へと近づいて行く

「くっ来るなァァ!!」

狂ったように叫びながら、男が懐から取り出した刃物を向ける

しかし狼は怯まず、じりじりと殺気にも似たオーラを醸しだし男に牙を剥いた

(こいつがお前をこんなめに合わせたのか)

⏰:07/08/31 12:29 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#220 [☆Cocomo☆MILK☆]
不意に頭に響く声色

ハッとして男を見るが、変わらず狼に向けて刃物を振り回している

どうやらこの声は自分だけに聞こえるものだと確信し、輝夜は慌てて立ち上がった

「そう…だけど」

もしもここでそうだと答えるのなら、男は間違いなく噛み殺されてしまうだろう

背後に転がったもう一人の男の死体に、輝夜は言葉を飲み込んでしまった

⏰:07/08/31 12:34 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#221 [☆Cocomo☆MILK☆]
確かに男達に陵辱されかけたのは事実だ
暴行を受け、媚薬まで飲まされた

しかし、だからといって殺してしまうなどという決断は下せない

「だけど…」

乱れた羽織の裾を握りしめ、歯切れの悪い輝夜に狼がウロウロとせわしなく動き回る

「でも…」

(だが、なんだ!)

苛立ちにも似た声色と共に、狼がガァッと牙を剥き吠える

「ひぃっ…!!」

男は目の前で威嚇され、 余りの恐怖に刃を投げ出した

⏰:07/08/31 20:30 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#222 [☆Cocomo☆MILK☆]
(こいつは生かす価値もない!いずれお前を殺すつもりだったんだぞ!)

鋭い牙を剥きグルグルと睨み付ける狼に、男は殺さないでくれと何度も首を振った

そのあまりにも無情な姿に、輝夜の胸がつきんと痛む

(こんな奴、噛み殺してやる!)

「うわぁぁ!!」
「やめて!」

狼が男に襲いかかるのと、輝夜が走り出したのはほぼ同時だった

⏰:07/08/31 20:35 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#223 [☆Cocomo☆MILK☆]
伸ばした両手がガシッと白銀の尾を捕まえた

半ば倒れ込む形でその長い尻尾にしがみついた輝夜に、男の喉元へ口を開いた狼が振り返る

(なんのつもりだ)

「確かに…ひどいことされた…けど…殺すなんて…出来ないよ」

蜂蜜色の瞳から、ポロリと涙が零れ、狼の尾を濡らす

「駄目だ、セツ…お願い…」

(……………)

祈るように見つめられ、狼はスッと口を閉じた

⏰:07/08/31 20:42 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#224 [☆Cocomo☆MILK☆]
そのまま静かに身を引いた狼に、小刻みに震える男の体から力が抜ける

そうして余りの恐怖に解放され、そのまま気を失うように地面へと倒れた

(…………)

狼はしばらく倒れた男を見つめ、握りしめられた尾を離せと言うように、ぴしゃりと長い尻尾を振った

もしかして怒らせてしまったのだろうか

「あの…セツ……」

絞り出すような声に、狼はクッと顎を反らせ、輝夜の胸に擦り寄った

⏰:07/08/31 20:52 📱:W51S 🆔:☆☆☆


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