ぎんいろのおおかみ〈}イラスト付きBL}〉
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#15 [☆Cocomo☆MILK☆]
「失礼します」

そしてこの少年もまた、生け贄になることを命じられた


「入りなさい」
「…はい」

村長の屋敷へと通され、歩みを進める人物

年は16

幼い風貌に似合わぬ寂しげな瞳は見事な蜂蜜色で彩られ、髪は艶やかな栗色をしていた

⏰:07/08/08 14:33 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#16 [☆Cocomo☆MILK☆]
だが身に着けている衣服は質素であり、その者があまり裕福な暮らしをしていないことは明白だった


「すまないな、輝夜〈カグヤ〉」

「いいえ」

白髪の村長が、かぐや、と呼んだ少年へと視線を向ける

⏰:07/08/08 14:35 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#17 [☆Cocomo☆MILK☆]
輝夜は自分が生け贄えとなる事実を知っても動揺もせず、静かに瞳を閉じた。


周りの者から見ても異質な存在であった少年、輝夜


幼い頃、彼の母親は生け贄となり姿を消した

父はその責任と罪悪感から逃れるように自ら命を絶った

⏰:07/08/08 17:53 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#18 [☆Cocomo☆MILK☆]
輝夜は物心ついた時から両親を奪った妖魔が憎かった

いつか殺してやろうと、そればかりを考え育った


世話が必要な幼少期は村長の元で暮らし、すぐ自立した

だがその珍しい髪と瞳の色、そして美しい容姿を村の者は


『まるで妖魔のようだ』


と言い彼を忌み嫌った

⏰:07/08/08 17:56 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#19 [☆Cocomo☆MILK☆]
誰とも交流を深めず、信じるものは己のみ

ずっとそうして生きて来た



この村に今は数少ない妖魔が現れたのは数年前

村人も滅多に足を踏み入れない森の奥地に、ひっそりとした洞窟を見つけたのが始まり

⏰:07/08/08 17:59 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#20 [☆Cocomo☆MILK☆]
その洞窟の入り口には数日前から行方不明となっていた村の若い娘の亡骸が転がっていた


毎年続いていた天災も、その洞窟を見つけてからはピタリと治まり、村では


『年に一度、あの洞窟に住む妖魔に生け贄を捧げよう』


ということが決められた

⏰:07/08/08 18:01 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#21 [☆Cocomo☆MILK☆]
初めは半信半疑だった村人たちも、生け贄を捧げる際に、洞窟でその妖魔の姿を見た途端、認めざるを得なくなる


輝夜も話には聞いていて、遅かれ早かれ自分もそうなるだろうと悟っていた

⏰:07/08/08 18:03 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#22 [☆Cocomo☆MILK☆]
両親もいない自分を育ててくれた村長にその事実を告げられたのは酷であったが、輝夜は静かに頷いた


「明晩、生け贄の義を執り行う。よいか、輝夜」
「…はい」


生け贄となるものは、前日から施錠された納屋へ入れられ、当日には身体を清める高価な衣服を身にまとわされる

⏰:07/08/08 18:06 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#23 [☆Cocomo☆MILK☆]
今まで生け贄は村の若い女性たちだったが

小さい村ではそれが数年も続けば大きな打撃となってしまう

故に今年は輝夜が選ばれた




輝夜は村人に手を引かれ、納屋へと案内された



これが、最後の夜

⏰:07/08/08 18:20 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#24 [☆Cocomo☆MILK☆]
だが彼に恐れはなかった

生きていても喜びも何も感じない生活

狭い世界

虐げられて生き延びる理由が、自分にはなかった

がちゃん、と施錠される音が、やけに大きく響く

⏰:07/08/08 18:21 📱:W51S 🆔:☆☆☆


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