ぎんいろのおおかみ〈}イラスト付きBL}〉
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#20 [☆Cocomo☆MILK☆]
その洞窟の入り口には数日前から行方不明となっていた村の若い娘の亡骸が転がっていた
毎年続いていた天災も、その洞窟を見つけてからはピタリと治まり、村では
『年に一度、あの洞窟に住む妖魔に生け贄を捧げよう』
ということが決められた
:07/08/08 18:01 :W51S :☆☆☆
#21 [☆Cocomo☆MILK☆]
初めは半信半疑だった村人たちも、生け贄を捧げる際に、洞窟でその妖魔の姿を見た途端、認めざるを得なくなる
輝夜も話には聞いていて、遅かれ早かれ自分もそうなるだろうと悟っていた
:07/08/08 18:03 :W51S :☆☆☆
#22 [☆Cocomo☆MILK☆]
両親もいない自分を育ててくれた村長にその事実を告げられたのは酷であったが、輝夜は静かに頷いた
「明晩、生け贄の義を執り行う。よいか、輝夜」
「…はい」
生け贄となるものは、前日から施錠された納屋へ入れられ、当日には身体を清める高価な衣服を身にまとわされる
:07/08/08 18:06 :W51S :☆☆☆
#23 [☆Cocomo☆MILK☆]
今まで生け贄は村の若い女性たちだったが
小さい村ではそれが数年も続けば大きな打撃となってしまう
故に今年は輝夜が選ばれた
輝夜は村人に手を引かれ、納屋へと案内された
これが、最後の夜
:07/08/08 18:20 :W51S :☆☆☆
#24 [☆Cocomo☆MILK☆]
だが彼に恐れはなかった
生きていても喜びも何も感じない生活
狭い世界
虐げられて生き延びる理由が、自分にはなかった
がちゃん、と施錠される音が、やけに大きく響く
:07/08/08 18:21 :W51S :☆☆☆
#25 [☆Cocomo☆MILK☆]
狭い納屋のなか、輝夜は天を仰いだ
そこには無数の星明かり
そっと手を伸ばすが、指はむなしく空をつかむばかり
自分になせる、最初で最後のこと
妖魔に身を食われ、命つきようとも構わなかった
ただ一傷でもいい
両親を奪った憎い敵に痛みを与えられれば―…
○ [jpg/4KB]
:07/08/08 19:16 :W51S :☆☆☆
#26 [☆Cocomo☆MILK☆]
まちがいなく自分は殺されるであろうことは覚悟の上
なにもせず退屈な生を過ごすこと
それが輝夜にとって何よりの苦痛なのかもしれない
夜明けは間もなく
自分の命も、あとわずかなのだろうと輝夜は夜空を仰ぎながら思っていた
そのときまでは―――
:07/08/08 19:18 :W51S :☆☆☆
#27 [☆Cocomo☆MILK☆]
夜が明けた
人々にとっては希望の夜明けであっても、輝夜にとってこの目で見れる最後の朝日
だが輝夜はなんの迷いもなく命じられたまま納屋を出、泉へと連れられ身を清めた
幼い頃から太陽の光に弱く、あまり長い時間外で過ごすことができなかった
:07/08/08 20:31 :W51S :☆☆☆
#28 [☆Cocomo☆MILK☆]
それ伴い、輝夜の肌は雪のように白かった
思わず見張りの村人が息をのむほどの妖艶さ
それは死を前にしてもたじろかず、潤いを帯びた瞳を宿しているのも手伝っていた
身を清めてから、鮮やかな刺繍がほどこされた織物を纏わされる
:07/08/08 20:34 :W51S :☆☆☆
#29 [☆Cocomo☆MILK☆]
生け贄のものが着るもので、本来女性用として作られた藍色のそれは、細身で色白の輝夜の肌によく映えた
「準備はいいか」
「はい」
朝から村人たちは妖魔の出現を恐れ、家に隠っている
生け贄の義を執り行う村長と、見張り役二名だけで輝夜を森の奥地へ連れて行くことになった
:07/08/08 20:37 :W51S :☆☆☆
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