ぎんいろのおおかみ〈}イラスト付きBL}〉
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#228 [☆Cocomo☆MILK☆]
そのぎこちない笑顔に狼はふっと息を吐き

(少しここで待っていろ)

と倒れた輝夜を一人残し、洞窟の中へと消えて行った

輝夜はゆっくり息を吐き、天を仰いだ

雲が厚いせいか、星はひとつも見えなかったが、またこうして夜空を見上げることが出来るなんて思いもしなかった

初めに思ったのは生け贄の儀式の前夜

次に地下牢に閉じ込められたとき

もう二度も死を覚悟していた

⏰:07/08/31 22:21 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#229 [☆Cocomo☆MILK☆]
それでも、まだ自分は生かされ続けている

母親の復讐の為だけに今まで生きてきた

それも今となっては意味を成さない

『妖魔の子供だ』

あの老人が言った言葉が胸に突き刺さる

まるで化物のような目で自分を見つめ、嫌悪する

輝夜はふと目を閉じ、頭を抱えた

一体この先自分はどう生きていけばいいのか―――――…


「…考え事か?」

足音と共によく通る声が響き、顔を向ける

⏰:07/08/31 22:30 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#230 [☆Cocomo☆MILK☆]
「セツ…」

洞窟から現れた長身

白い羽織に長い銀髪

静かに近づいてきた男に、輝夜は、ほぅと息を吐いた

「やっぱり、セツだったんだ」

綺麗な顔立ちに、あの狼と同じ翡翠色の瞳

それは彼とあの白銀の狼を容易に連想させた
「すぐにわかったよ」

笑いながらの輝夜の言葉に、セツは苦笑を浮かべる

「…まあ、今更だな。………立てないんだろう、抱いていってやるから捕まっていろ」

⏰:07/09/01 00:47 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#231 [☆Cocomo☆MILK☆]
輝夜は頷き、身を屈めたセツの首にしがみついた

「軽いな」

ひょいと抱き上げ、洞窟の中へと足を向けるセツが言葉を漏らす

ちゃんと食っているのか?

と顔を覗き込まれ、瞬時に頬が熱くなる


「たっ食べてるよ…っ」

赤くなった顔を隠すようにうつむく

口を尖らせた輝夜に、セツはくすりと笑った

⏰:07/09/01 00:55 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#232 [☆Cocomo☆MILK☆]
(――…静まれ、心臓)

ドクドクと早鐘を打つ鼓動がうるさい

密着した肌越し、鳴り続ける心音がセツに聞かれてしまいそうだ

ふと彼の顔を盗み見上げ、その形のいい唇の端に赤い塊がこびりついているのを見つけた

「血…付いてる」

そっとなぞるように触れた指先に気づき、セツはペロリと口端を舐めた

「…人間の血は不味い」

⏰:07/09/01 01:00 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#233 [☆Cocomo☆MILK☆]
苦々しい物を口にしたように顔をしかめるセツ

輝夜は無惨に噛み殺された男を思い出し、顔を曇らせた

―――セツが悪いんじゃない。俺が殺したも同然だ――――

「…………」

くっと唇を噛み締めた輝夜を見下ろしたセツは何も言わず、洞窟の奥へ歩みを進めた








――――――――――――――………

⏰:07/09/01 01:06 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#234 [☆Cocomo☆MILK☆]
∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴今日はこのへんで|
感想版
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2643/

∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

⏰:07/09/01 01:07 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#235 [☆Cocomo☆MILK☆]
―――――――――――――――――…

たどり着いた洞窟の奥
パチパチと燃える焚火の前、輝夜は岩に腰を下ろしたセツに抱き抱えられる形でぼんやりと村での出来事を語りだした

セツが今まで逃して来た生け贄たちは、村人に殺されてしまったこと

自分の母親も殺され――――――そして妖魔であったこと

ぽつぽつと話す輝夜に、セツは無駄に聞き返さず、ただ静かに耳を傾け「そうか」と一言漏らすだけだった

[jpg/22KB]
⏰:07/09/01 08:44 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#236 [☆Cocomo☆MILK☆]
「……驚かないの?」

見上げた輝夜に、セツはふと笑みを溢した

「驚いてるさ。
つまりお前にも半分妖魔の血が流れているということだろう?」

「うん…」

ただそう言われただけであり、身体の異変もなければ今までと何ら変わりはない

お前は妖魔の子供だ、と言われたところで輝夜にはピンと来るものがなかった

「セツは…どうやって狼になれるの?」

尋ねた輝夜に、セツは小さく眉を寄せた

⏰:07/09/01 09:03 📱:W51S 🆔:☆☆☆


#237 [☆Cocomo☆MILK☆]
「どうやって、と言われてもな…。
――俺は元々、妖狼の一族だ。
今となっては俺一人だが…。
妖狼の一族は、代々受け継いで来た血で狼や人間の姿に変えられる」

「ってことは…自分の意志で変身出来るってこと…?」

「そうだな。
まあそれなりの代償はついてくるが」

「え?」

⏰:07/09/01 09:07 📱:W51S 🆔:☆☆☆


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