ぎんいろのおおかみ〈}イラスト付きBL}〉
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#65 [☆Cocomo☆MILK☆]
「オレは元から人を食らう習性などない」
「え……?」
聞き間違いか
輝夜は耳を疑った
「そん…な、はずは…」
毎年恒例のように生け贄に出されているものがいるはず
なにより洞窟前で発見された若い娘の亡骸
どういう事だと困惑した輝夜の疑問を感じとり、微かに笑った
:07/08/10 21:31 :W51S :☆☆☆
#66 [☆Cocomo☆MILK☆]
「…洞窟の入り口にあった亡骸は俺の仕業ではない。
熊か何かに襲われたんだろう」
「毎年の生け贄…は…?」
「逃がしている。
この森を抜けた所にある、小さな町へとな…」
生け贄として差し出された時点で、その者の人生は終わる。
:07/08/10 21:34 :W51S :☆☆☆
#67 [☆Cocomo☆MILK☆]
たとえ生き延びたとしても、村の怒りを買ってしまうことは明白だった
それを知っているこの妖魔は、村の者達が足を踏み入れない地まで彼らを逃がし、そこで新たな暮らしをするように言い渡していたと言うのだ
:07/08/10 21:35 :W51S :☆☆☆
#68 [☆Cocomo☆MILK☆]
「そんな…じゃあ…母さん…は……」
――生きている――――?
震えた唇から漏れた声に、妖魔が眉を寄せた
「母さん?」
ドクドクと早い鼓動に耐えきれず、輝夜は彼の元へ飛び付いた
「あの…っ!13年前に、俺の母さんが生け贄にされたんだ!もし…もし何か知っているなら…!」
:07/08/10 21:38 :W51S :☆☆☆
#69 [☆Cocomo☆MILK☆]
今にも泣き出してしまうんじゃないかと思うくらい切羽詰まった表情
着物の襟を強く握り絞めながら訴える少年に、妖魔は一瞬目を見張り
そして小さく息を吐いた
「ほとんどの者はあの町で暮らしているはずだ…今は保証しかねるがな」
:07/08/10 21:41 :W51S :☆☆☆
#70 [☆Cocomo☆MILK☆]
その言葉に輝夜は胸の中が熱くなるのを感じた
―ああ、母さん
あなたが生きているかもしれないなんて――…!――――
「……今日はもうじき日が暮れる。
明日の朝、その町まで案内してやろう」
「…え…」
「会うんだろう、母親に」
:07/08/10 21:43 :W51S :☆☆☆
#71 [☆Cocomo☆MILK☆]
襟を握りしめる輝夜の手をそっとほどき、立ち上がった妖魔が言った
「いっいいんですか!?」
「良いも何も。
オマエもどのみちあの町へと送り届けるつもりだった」
さも当たり前のようなセリフ
輝夜は驚きと喜びに頭を深く下げた
「ありがとうございますっ!
ありがとうございます…!」
:07/08/10 22:27 :W51S :☆☆☆
#72 [☆Cocomo☆MILK☆]
嬉々として例を繰り返す輝夜を見下ろし、妖魔はふと笑った
「オマエは面白いな、輝夜。
こんな奴は初めてだ」
その笑顔に、顔をあげた輝夜はどきりとする
:07/08/10 22:29 :W51S :☆☆☆
#73 [☆Cocomo☆MILK☆]
冷たい印象とは裏腹に、優しい微笑み
こんな表情をする人が妖魔だなんて信じられなかった
住みにくい今の世界
その片隅で、暗い洞窟の中ひっそりと独りで生きる
それはどこか自分に似ていると感じた
「………………。
飯は食ったのか」
顔を曇らせた輝夜を無言で見つめていた妖魔が口を開く
:07/08/10 22:41 :W51S :☆☆☆
#74 [☆Cocomo☆MILK☆]
「あ…いえ…」
「腹が空いただろう。
何か食えるものを探してくる。オマエはここにいろ」
そう言ってきびすを返した彼の背に、輝夜は気付けば呼び止めていた
「あっ、あの…」
輝夜の声に振り返った彼が視線だけで呼び掛けに応える
:07/08/10 22:43 :W51S :☆☆☆
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