恋するドーリィ
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#4 [リナ]
スッ
ドーリィを持ち上げるシワがれた手
「今日も売れなければいい…」
続くシワがれた声。
腰は曲がっており、髪は白く、服は上下黒で統一している。
歳の頃なら70をゆうに越しているだろう老婆は、この店の店主。
――オープン――
:07/08/28 17:54
:N901iS
:SP8DPMaU
#5 [リナ]
チリンチリン
店のドアに付いているベルが鳴り、一人の女性が入ってくる。
「おや、また来たのかい」
言いながら奥から出てくる老婆。
「こんにちは。
やっぱりこの人形の事が気になっちゃって」
先月二十歳の誕生日を迎えた彼女は、今日もきれいな黒髪をなびかせドーリィに会いにきた。
「あまりその人形に見入られてはダメよ」
老婆が言う。
「どーしてですか?」
:07/08/28 17:59
:N901iS
:SP8DPMaU
#6 [リナ]
×見入られる
○魅入られる
誤字失礼しました。
:07/08/28 18:02
:N901iS
:SP8DPMaU
#7 [リナ]
「ドーリィは人を選ぶの、選ばれぬよう気を付けなさい」
「欲しくてもこの値段じゃ買えませんよ」
ドーリィの値段は38万。
二十歳になったばかりの彼女にはとうてい手が出せる値段では無かった。
彼女はそれからも週に一度は必ずドーリィに会いに来る。
「おやおや、また来たのかい」
:07/08/28 18:05
:N901iS
:SP8DPMaU
#8 [リナ]
「こんばんは。おばあちゃん」
あれから3ヵ月が過ぎようとしているにドーリィは、まだ丸いテーブルに立ったまま、売約の2文字も見当たらない。
「良かった。今日も売れなかったんだねドーリィ」
彼女は嬉しそうに人形を手に取り話し掛ける。
「魅入られてはいけないと言ったのに…。
ドーリィのどこを、そんなに気に入ってしまったんだい?」
老婆は彼女に聞いた。
:07/08/28 22:23
:N901iS
:SP8DPMaU
#9 [リナ]
「どこ…ですかね?
ドーリィを見た瞬間ビビビッて来たんです。
おかしいですよね」
うふふっと笑いながら言う彼女の言葉を聞いて、老婆は小さなため息を吐く。
それからまた半年が過ぎたある日。
薄暗い店内の奥にある、丸いテーブルの上にドーリィは居なかった。
:07/08/28 22:47
:N901iS
:SP8DPMaU
#10 [リナ]
今ドーリィが居るのは、彼女の腕のなか。
「あなたを買うためにバイト頑張ったのよ」
嬉しそうにドーリィを抱え家路に着く。
ガチャッガチャガチャ
家の鍵を開ける。
「あれ?開いてる…。」
:07/08/29 16:01
:N901iS
:P0njTMhM
#11 [リナ]
「おかえり小春」
家のなかから男の声がする。
「健ちゃん来てたんだ?
ただいま」
靴を脱ぎ嬉しそうに男の隣に座る。
「おっ?その人形」
男はドーリィに気付いた。
「うん。買っちゃった」
人形を持ち上げテーブルの上、男の目の前にドーリィを座らせる。
「可愛いでしょ〜?
これ買うためにバイトしてたんだもん」
彼女はツンツンとドーリィの鼻をつつく。
:07/09/03 17:59
:N901iS
:R1qf7mqs
#12 [リナ]
「ちょっと…気持ち悪くないか?」
男はそう言うと手でドーリィを彼女の方に押し戻す
「健ちゃんヒドイ」
彼女はプクッとふくれドーリィを飾る場所を探し始めた
「どこがいいかな〜?
よしっここにしよ」
ベッドの横にある出窓に、部屋の方を向かせドーリィを座らせた。
:07/09/03 18:01
:N901iS
:R1qf7mqs
#13 [リナ]
「んじゃ、俺帰るわ。
戸締まりちゃんとしろよ」「うん。健ちゃんも気を付けて帰ってね」
別れ際にキスをし、彼女の頭をなで
ガチャッ
「じゃーな」
ドアを開け男は帰る。
時計は10時を回っていた。
「あたしもそろそろ寝よっかな〜?」
風呂に入り寝る準備をすませ床につく。
ドーリィに“おやすみ”と言い電気を消した。
カタンッ…――
:07/09/03 18:02
:N901iS
:R1qf7mqs
#14 [リナ]
ピピピピッピピピピッ
携帯の目覚ましが鳴った
「もー9時かあ、ふあ〜よく寝た」
彼女は伸びをしながらベッドを出る。
目線を床に落とした。
「え?何でこんなとこに?
あたしそんなに寝相悪いの?」
目線の先、床にはドーリィが仰向けに落ちていた。
:07/09/03 18:04
:N901iS
:R1qf7mqs
#15 [リナ]
「ごめんねドーリィ」
人形を拾い上げ、服に付いたホコリを手で払い、また出窓に座らせる。
シャワーで寝汗を流し化粧を済ませバイトに行く。
「行ってきます」
ドーリィに話し掛け部屋を出た。
バタンッ
「疲れたあー。ただいま」
:07/09/03 18:06
:N901iS
:R1qf7mqs
#16 [リナ]
一人の時はドアを開け無言で入ってきたこの部屋。
人形を買ってからは挨拶をするようになった。
ベッドに座りドーリィを膝に乗せグチをこぼす。
「…でね、すっごいムカついたの!聞いてる?
って、人形だから聞いてないよね」
あはっと、頭をポリポリかく。
「明日は健ちゃん来るからもー寝なきゃ」
ドーリィを出窓に戻し電気を消した。
:07/09/03 18:08
:N901iS
:R1qf7mqs
#17 [リナ]
カタン…ズルズル…―
んっ…かはっ……
:07/09/03 18:08
:N901iS
:R1qf7mqs
#18 [リナ]
翌朝顔を洗い鏡を見ると、首にアザが出来ていた
「なに、これ…手形…?
まさか…ね?」
首の左右には小さなアザが一つずつ付いている。
ちょうどドーリィの手と同じくらいの大きさで…。
ピンポーン
男がやって来た。
:07/09/03 18:09
:N901iS
:R1qf7mqs
#19 [リナ]
「健ちゃんいらっしゃい」
パタパタとドアまで男を迎えに行く。
「小春、その首どーしたんだよ?」
靴を脱ぎ彼女の部屋に上がる男。
「んー…起きたらこーなってた」
「起きたらって…。
それって人形の手形…」
「な訳無いじゃん、やだなあ〜健ちゃんたら」
:07/09/03 18:17
:N901iS
:R1qf7mqs
#20 [リナ]
「なぁ、俺今日泊まろーか?」
男は彼女の顔を覗き込み心配そうに言う。
「だぁーいじょうぶ。心配ないって!痛くないし。
ほら、座って?」
彼女にうながされカーペットの上に座る。
目線はアザに向けたまま。
「本当に大丈夫か?」
「し・つ・こ・い!
本当に大丈夫。明日も逢えるんだから心配しないで?」
男の顔をみてニコッと微笑む。
「何かあったら俺に言えよ?あの人形、不気味だからな……」
彼女の髪をくしゃくしゃと撫でながら声低く男は言った。
:08/01/12 21:46
:N905i
:p/4tz8HY
#21 [リナ]
「健ちゃん、ありがと」
言って彼女は男のホッペにキスをする。
次に男が彼女の口にキスをした。
「んっ」
彼女の声が漏れ
「俺……我慢できない」
二人はまじり合ってしまった。
ドーリィの目の前で……。
:08/01/12 21:52
:N905i
:p/4tz8HY
#22 [リナ]
男は帰り、彼女はベッドに寝転がると右手に手鏡を持ち首のアザを映す。
アザがあった部分には男がキスマークを付けた。
そのキスマークを右手の人差し指でなぞる。
「んふふっ。
キスマークかぁ〜あたし健ちゃんの物って感じ。
アザも隠れたし。
明日も健ちゃんに逢える……し……」
スゥー。
強烈な睡魔に襲われた彼女は深い眠りについた。
:08/01/12 21:59
:N905i
:p/4tz8HY
#23 [リナ]
彼女は息苦しさで目を覚ます。
「…………っ!?」
目の前に人形の顔。
手は首に回っていた。
目を見開きその光景を理解するのに少し時間がかかったが、彼女は息苦しさで我に返る。
「んくっ……あ、が……やめ……くる、し……」
体を動かそうとしたが、指一本すら動かない。
「ド……リ……おね、が……死……死……ん……じゃ……」
――グルンッ。
彼女は白目を向いた。
:08/01/12 22:18
:N905i
:p/4tz8HY
#24 [リナ]
当たり前だ、彼女が目を覚ます前から首は締められていたのだから。
酸素はすぐに底を突く。
それでもドーリィは手を緩めない。
あれから何分。いや、何時間絞めていただろう。
やっと手を首から離した。
カタッ――。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
ドーリィは肩を震わせ笑う
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッ――。
震えは激しさを増した。
:08/01/12 22:31
:N905i
:p/4tz8HY
#25 [リナ]
ピンポーン
翌日また男がやって来た。
彼女は現われない。
男は合鍵を使いドアを開けた。
ガチャッ
「上がるぞー。
おーい小春?まだ寝てるのか?」
言って男は上がり込む。
ズルッ…――。
部屋の中にあるガラス戸の向こうから音がした。
戸は閉められている。
「……小春?」
:08/01/12 22:40
:N905i
:p/4tz8HY
#26 [リナ]
ガラッ。
男はガラス戸を勢い良く開いた。
「いらっしゃい健ちゃん」
:08/01/12 23:02
:N905i
:p/4tz8HY
#27 [リナ]
「なんだ…居たのか」
彼女の姿を確認し、ホッと胸を撫で下ろす男。
「ごめんね?ちょっと手が離せなかったの」
「そっか。
いや、昨日のことがあっからちょっと心配したんだ」
言って彼女の頭を撫でる。
「心配してくれてありがと」
ニコッと笑う彼女の顔は相変わらず愛らしい。
「なんか飲む?コーヒーでいぃ?」
彼女はコーヒーを作り机のうえに置くと、男の隣に腰をおろす。
「サンキュッ。……?」
男は彼女の首を見た。
「どーかした?健ちゃん」
「首の、アザは?」
:08/01/12 23:33
:N905i
:p/4tz8HY
#28 [リナ]
「起きたら消えてた」
「キスマークもか?」
「……いーじゃないそんなこと」
彼女は怪しく笑うと男を押し倒した。
「どーしたんたよ?
今日は大胆だな」
カーペットに押し倒された男は笑いながら言う。
「あたしが付けてあげる」
男の耳元で囁き、首の左側に唇を近付ける。
右を向く男。
ベッドの下に見える影。
目を凝らし見る。
首にアザを付けた女――。
そこには白目をむいた彼女が無残に横たわっていた。
:08/01/13 00:03
:N905i
:3mo4DZHk
#29 [リナ]
「……こは……る……?」
小さく呟き、ベッドの下に手を伸ばし触れた彼女の肌は、人間のそれとは違っていた。
――冷たい。
いや、冷たすぎる。
男は自分の上にまたがる女を退かし、手で口を押さえるとキッチンへ走り水を出す。
「ヴッ……オエッ……」
「どーしたの?健ちゃん」
今にも吐きそうな男の背中をさする女。
バッ!
その手を払い除け、女から距離をとる。
「お前……誰だ……」
声は震えていた。
:08/01/13 00:13
:N905i
:3mo4DZHk
#30 [リナ]
「何言ってるの?小春よ?」
ニヤニヤ笑いコキコキッと首をならす女。
「ウソだ!
お前は……小春じゃない」
男は女から離れ、またベッドのある部屋に戻ってきた。
「小春よ健ちゃん。
しん……じ……テ?」
カクッカクッと変な動きで近づいてくる女。
男は本棚にあった分厚い辞書を取り出すと、女めがけて走り頭を思い切り殴る。
ブンッ
ゴキュッ――…。
鈍い音がして女の首が曲がらない方向へ曲がる。
:08/01/13 22:11
:N905i
:3mo4DZHk
#31 [リナ]
女は殴られた衝撃で後ろへ飛ばされ動かなくなった。
男はよろよろと後退し、ベッドの横に尻もちを着いたのも束の間。
ゴリッボキボキボキッ
「ひっ…………!」
女は立ち上がり両手で頭を持つと、首を元の位置に戻した。
「ば、けも……の……」
:08/01/13 22:18
:N905i
:3mo4DZHk
#32 [リナ]
「ひどイよ、ケン……ちゃん……でモ、許して、アげる」
焦点の定まらぬ目で言う女。
「……………………」
男は女を見たまま動けないでいる。
「だ、カラ……ちょウだい……ケンちゃ、んの……ケン、ちゃん、の…………………………………オ前のッ!!」
言って女は男に向かって走りだす。
男は逃げる間もなく女に肩を捕まれた。
「やっやめろっ!離せっ!」必死でもがくが、女の手は離れないどころか肩に強くめり込み始めた。
:08/01/13 22:34
:N905i
:3mo4DZHk
#33 [リナ]
「うううっ……」
痛さで声が漏れる。
「ねぇ……ダイ、テ……?」
ニヤリと気味の悪い笑顔で男の顔を下から覗き込み言う女。
「ひっ……た、助けっ」
男の言葉に女の顔から笑みが消え、右手を男の胸に持っていく。
クジュッ――…
「う"わ"ああぁあああー!
な、何をっ!?
やめっ……やめてくれっ」
痛さに顔が歪み、胸からは血がにじむ。
:08/01/13 23:36
:N905i
:3mo4DZHk
#34 [リナ]
「……ダ……メ……。
ちょウだい?
さっキ、やくそ、ク……したデ……しょ……?
ケンちゃんの……ココ、ロ……しんぞウ、ちょだ……イ……」
ググググッ…ズブッ…
女の指に力が入り、さっきより深くめり込んだ。
「ひいっ!あが、ぐっ……や、め……抱く、から」
必死の思いで言葉を発する男の服には、血の染みが出来てしまった。
「あはははははははははははははははは。
もー遅イ、おまエも……同じダ……」
:08/01/14 17:20
:N905i
:TA9JcsmA
#35 [リナ]
言うと女は血にまみれた男の服をやぶり、それを男の口に押し込んだ。
「……黙れ」
グググッグシャッ……ブヂブヂッ……グジュッ……グジャッ……ズブブッ……
女が指を押し込むたび肉が裂け、血管がちぎれ血しぶきが飛ぶ。
「ん"っ、ん"ん"ん"ん"ーーーーーーっ!!」
声にならない叫びを上げる男の目は充血し、大量の涙が流れる。
叫ぶと同時にまた血が溢れた。
:08/01/14 17:29
:N905i
:TA9JcsmA
#36 [リナ]
今、女の右手は五本とも根元まで胸に沈んでいる。
「はんのウするかラよ。
死なないデ……ね?
死んだラ……つまらなイでしょ?」
男の反応を楽しむかのように、ゆっくり指を動かす。
「ん"ん"っ…ん"……!」
涙は止まることを知らず、男は首を激しく左右に振り叫ぶ。
胸から飛ぶ血で女の顔も服も赤く染まっている。
「アははははははははははははははははは!
泣くホど気持ちイの?
…………………………………………男、なんテ……」
女の顔が醜く歪み
グッ!
と指に力を込めた。
:08/01/14 17:44
:N905i
:TA9JcsmA
#37 [リナ]
「ぐぁ"あ"あ"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"あ"あ"ーーーーーー…………」
服が口から抜け落ち、男は力のかぎり叫けぶ。
これが男の最後だった。
胸から引き抜いた女の手には、男の心臓が握られている。
グググッ、グシャッ…――
女はその場に立ち上がり手に力を込め、心臓を握り潰した。
「ふふふ……あははははははははははははは!」
女は笑いながら右手を頭上に上げ、したたる血を浴びた。
:08/01/14 17:51
:N905i
:TA9JcsmA
#38 [リナ]
チリンチリン――…
ドールハウスのドアに付いているベルが鳴る。
「いらっしゃいませ」
奥からこの店の店主、老婆が顔を出す。
「おや、誰も居ないのかい?誰か入ってきた気がしたんだがねぇ」
老婆は、店内を見回す。
チリンチリン…――
再び鳴るドアベル。
「誰か居るのかい?」
店内からドアの方を覗き込むがやはり誰も居ない。
:08/01/14 17:57
:N905i
:TA9JcsmA
#39 [リナ]
コツッコツッコツッ
ドアに向かい歩く老婆。
ギイイーと音をきしませドアを開ける。
「誰も居ないねえ……」
一人呟きドアを閉め店内に戻ると、コトンッ――…
ドアに何かぶつかる音がした。
再びドアに向かう老婆。
「なんだろーねぇ?」
さきほどと同じようにドアを開ける。
違いと言えば……そぅ。
ドアの外にドーリィが座っていた。その服を血で赤く染めて……。
:08/01/14 18:11
:N905i
:TA9JcsmA
#40 [リナ]
「ねぇ、知ってる?」
「なに?」
「恋するドーリィ人形」
「なにそれー」
「入り組んだ路地裏にあるドールショップに、この世の物とは思えないほど綺麗な人形があってね……」
――END――
:08/01/14 18:14
:N905i
:TA9JcsmA
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