「純也」
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#401 [あぃみ]
「金…」
そうつぶやいたあいみは
更に目を赤くして
俺を睨みつけた。
「降りる!」
あいみは叫んだ。
まさか本気ではないだろう、こんな道路の真ん中で降りたら危ない事くらいはわかるだろう。
:09/05/12 19:46 :911SH :☆☆☆
#402 [あぃみ]
しかし次の瞬間、あいみは本当に車のドアを開けた。
「おま…まじ危ねーから」
俺が止めたのと、あいみが飛び降りたのはほぼ同時だった。
:09/05/12 19:49 :911SH :☆☆☆
#403 [あぃみ]
着地は転がって、立ち上がったあいみ。
一度こちらに振りむいた。
なぜだろう。
穏やかな目をしていた。
俺はそこに向かい無意識に叫んでいた。
「あいみーーー!」
そのあとすぐに大きなクラクションが聞こえて、
大きなトラックが爆音とともにあいみを吸い込んだ。
あいみが消えた。
:09/05/12 19:54 :911SH :☆☆☆
#404 [あぃみ]
かすかに聞こえた救急車の音。
ざわめきの声。
叫び声。
俺の知らない世界の映像を遠くから眺めているような感覚を失った俺がいた。
身体中がガタガタと奮え、
心臓が早過ぎて痛い。
:09/05/12 20:03 :911SH :☆☆☆
#405 [あぃみ]
.
いきなり携帯がなって、
俺は飛び跳ねた。
音のない空間に
携帯のメロディーだけが響いている。
白い壁。
白いソファー、
白い棚。
そして 玄関に用意された二つのスリッパ
:09/05/12 20:14 :911SH :☆☆☆
#406 [あぃみ]
俺は 何も考えることができないまま 新居でただひたすら、 流れ出てくる涙が終わるのを待っていた。
携帯はなり続けた。
「はい、」
俺は携帯を耳に当てた。
:09/05/12 20:17 :911SH :☆☆☆
#407 [あぃみ]
「もしもし?りんだよ、あんた今どこにいるの?」
りんに居場所を伝えると 10分もしないうちに現れた。
目の前に立つりんは
化粧をしておらず、目の回りを赤く腫れさせていた。
「純也、大丈夫?」
なんで一緒に救急車に乗らなかったのか、なんであんな場所であいみが事故に合うのかなど、りんは聞いて来なかった。
:09/05/12 20:23 :911SH :☆☆☆
#408 [あぃみ]
「純也、あいみが死んじゃったよ。」
腫れあがった目からは大粒の涙が流れ出した。
俺はあいみはもう駄目なんじゃないかってどこかでわかっていた。
わかっていたくせに、その事実を改めてつき付けられて 絶望した。
「俺のせいだ。なんでだよ、なんであいみなんだよ、俺が死ねばよかったのに 畜生!」
俺の目からも涙が溢れて止まらない。
床を何度も叩きつけて、引越しの荷物の段ボールを蹴り飛ばして、スリッパを外に投げ捨てた。
:09/05/12 20:40 :911SH :☆☆☆
#409 [あぃみ]
りんはしくしくと泣いていたが、我慢していたのか、やがてしゃがみ込み、大声で子供のように泣きだした。
俺も泣き続けた。
新しい匂いがする広く虚しい部屋で、二人はただ泣く事しかできなかった。
:09/05/12 20:48 :911SH :☆☆☆
#410 [あぃみ]
あいみの実家。
通夜。
葬式。
りんが俺を連れていこうとしたが、行く気になれない。しかもあいみの「彼氏」がいたらどんな顔をしたらいいのかわからない。
俺は三日間 ただ呆然と過ごした。
それでも、あいみから連絡が来る時間、あいみが仕事終わる時間などはつい携帯を手にとってしまう。それが嫌で悔しくて、力任せに二つに折った。
仕事も行かず、家から出れなかった。
:09/05/13 08:52 :911SH :☆☆☆
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