危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#1 [東脂ヤ転 08/02/08 13:03
#832 [東脂ヤ転
― ピピピ…ッ
「…っ!?」
突然の着信音に俺は驚き、思わず手に持っていた教科書を落としてしまった。
この音はメールの受信音。
[またメール…?]
何となく嫌な予感がしながらも、再び携帯を手に取り開くと案の定送り主は北原だ。さらにメールの内容はさっきと同じように1行だけ書かれていた。
― 今お前んちの前だから、待ってるよ。
「俺の…家の前…!?」
:09/02/10 17:20 :auSN3G :☆☆☆
#833 [東脂ヤ転
[……なんで…]
俺の頬を嫌な汗が伝う。
恐る恐る、閉めっぱなしだったカーテンに手を掛けそっと開いてみると、丁度向かいの自販機の前に見覚えのある学生服を来た男が立っている。
「北原…」
俺はその姿に小さく呟く。
北原は下を向いたまま携帯をいじっていてこちらには気付いていない様子だ。
― ビビピ…ッ
その時、手に持っていた携帯が再び鳴り始める。
目で北原を見ながら携帯を開くと受信メールが1件。
― 早く出てこないと、インターホン鳴らすよ?
:09/07/30 18:24 :W64S :ZTYjh7sc
#834 [東脂ヤ転
その文面にドキッとして外を見ると、さっきまで携帯を見ていた北原は真っ直ぐ俺の方を見ていた。
その笑顔から微塵も悪意は感じられず、逆に変な胸騒ぎを覚える。
― すぐ行くからそこで待ってて
素早くそれだけ打ち込んで送信ボタンを押す。
「送信しました」の画面を確認した後、急いで制服のズボンを手に取った。
インターホンなんか押されたら静兄は絶対起きてしまう。今の俺にとって、静兄に気付かれないように家をでることが重要なのだ。
:09/07/30 20:55 :W64S :ZTYjh7sc
#835 [東脂ヤ転
「よし…っ」
簡単に制服に着替えると制カバンを手に取る。
教科書や辞書なんかは全部学校に置いてあるので、持って行く荷物など僅かなものだ。
忘れ物がもしあったとしてもそんなこと大したことじゃない。どうせ遅刻なのだ。それなら1秒でも早くこの家を出なければ。
慌て過ぎて思わず転びそうになりながらも俺はドアを開けた。
すると、
「あ…おはよ、鳴」
何も知らない笑顔の静兄がそこに居た。
:09/07/31 21:40 :W64S :Q0uThy8w
#836 [東脂ヤ転
「静…兄」
「…ん?どうかした?」
あまりに驚いてしまったせいで声も出ず一瞬、思考回路まで止まってしまったかのように思えた。
油断してた。
寝てる、と思っていたのに。
それでも意外と早くに頭の中は動き始め、どんどん冷静になっていく自分が居た。
「ゴメン…ちょっと急いでるから」
:10/07/14 01:30 :W64S :mhPY5WmM
#837 [東脂ヤ転
家を出なくちゃならない。
そればかりが頭の中にあったせいか、静兄が怪訝な表情で俺を見ていたことに気付かぬまま、部屋を飛び出す。
階段を駆け降りて、玄関まで後ろも振り返らずに走り出した俺の頭には北原の顔しかなかった。
焦る気持ちに比例するように心臓の音が早くなる。急いで皮靴に足を入れ、玄関の扉を開けた。その時、
「───鳴…っ!」
カバンを持つ左手がギュッと強く握られかと思うと、開けた扉をそのまま静兄によって再び閉められてしまう。
しかし、バタン、という音を立てて閉じられた扉を前にしても、俺の焦る気持ちは鎮まらない。
:12/01/06 18:39 :W64S :qAq1Kv9g
#838 [東脂ヤ転
「静兄…離して…」
握られた左手が熱くて、痛い。
掌から伝わる温もりから静兄が俺のことを本気で心配してくれていることが伝わってくる。
いつもならこんなに嬉しいことなんて無いのに…。
「…鳴」
今はその優しさが俺を苦しめる。
「ホントに遅刻しそうなんだって…!」
何とか力を振り絞って言い訳じみたことを口にしてみたけれど、静兄の前では何の意味も果たせずに言葉だけが宙に舞って消え入ったようだった。
:12/01/10 17:25 :W64S :p.4EmC32
#839 [東脂ヤ転
「鳴、ちゃんと俺を見て」
何も言えなくて俯く俺に、静兄は穏やかな声で話し掛ける。この声に俺が逆らえないのを知っているからだろう。あまりに優しい声色だから思わず泣きついてしまいたい衝動に駆られそうだった。
「静兄…俺……」
でも、
「鳴、何してんの?」
出来るわけなかった。
:12/01/10 17:36 :W64S :p.4EmC32
#840 [東脂ヤ転
「メールの返事はくれたのにさぁ…出てくるの遅いっての」
後ろから聞こえているのは聞き慣れた声なのに、自分の身体が言うことを利かなくて怖い。まるで身体中の血の気が引いていくような感覚に苦しくなる。
せっかく静兄が閉めてくれたドアに鍵は掛かっていなかったのだろう。さっきまで俺が握っていたドアノブに、今は北原の手が重ねられていた。
「……君は…確か、」
張り詰めた空気の中で先に口を開いたのは、静兄。
「“初めまして”じゃないですよ?」
そして、静兄の言葉に返答したのは、何故か可笑し気に笑っている北原だった。
:12/01/17 16:35 :W64S :/P8FFxcc
#841 [東脂ヤ転
「北原直樹って言います。鳴と同じクラスなんで、参観日の時に俺のこと見ませんでした?」
淡々と、不自然な程落ち着いた声で話す北原の方を見ると、何を思っているのか読み取れないような笑みを浮かべている。
「……あぁ、思い出したよ。北原っていう名前だったんだね」
そんな北原とは反対に静兄の声は俺でも分かるくらい、静かな怒りに満ちていた。
1番怒らせたくない人を怒らせてしまった。小さな罪悪感は徐々に膨らんで、俺の全てを呑み込んでいくような感覚になる。
そして右手は北原に、左手は静兄に握られた状態のまま俺はどうすることも出来なくて、ただただ床を見つめていた。
:12/01/17 17:13 :W64S :/P8FFxcc
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