危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#756 [東脂ヤ転
階段を降りるとコーヒーの良い香りがする。
この家に来る前まで朝食は和食派だったのだが、毎朝静兄が煎れてくれるコーヒーが病みつきになり、今では俺も朝は洋食派になった。
「あ、またコーヒー豆変えた?」
何となくそんな気がした俺が呟いたのに対し、静兄は嬉しそうに頷いた。
「気に入ってる店の店長がさ、新しく入った豆をよく分けてくれるんだよ」
静兄はそう言うと慣れた手つきで俺のカップにコーヒーを煎れる。
煎れた後はいつも何も言って無いのに、砂糖とミルクを俺の好みの量に調節してくれる。
こんなたわいもない、静兄と一緒に過ごす朝が俺は大好きだ。
:08/09/05 01:22
:W52P
:☆☆☆
#757 [東脂ヤ転
「今度その店に連れて行ってやるよ。俺の後輩が経営しているカフェなんだ。」
「…へぇ」
静兄の煎れたコーヒーを飲みながら、俺は違うことを考えていた。
[今日…何て言って彩華に切り出そう…]
お気に入りのカップをなぞりながら、俺は様々な言葉を考える。
受験勉強が忙しくて。
バイトが楽しくて。
やるべきことが出来て。他に……
他に、好きな人が出来て。
本当の理由はこれだけど、言えるはずが無い。
彩華に向かって、「俺は静兄を好きになったんだ」なんて言える自信が全く無いんだ。
だんだん身体が重くなってきた俺は、思わず溜め息をついた。
:08/09/05 13:12
:W52P
:☆☆☆
#758 [東脂ヤ転
「…そんなに心配?」
その時静兄の声で我に返った俺は顔を上げる。
「俺の話聞いてなかったろ?」
静兄はそう言って意地悪く笑う。
俺はその時初めて、静兄の話をちっとも聞いていなかったことに気付く。
「ごめん…静兄」
「そんなことで謝らなくて良いよ」
話を聞いてなかったことだけではなく、彩華に静兄を好きだと言う勇気が無いことに俺は凄く謝りたかった。
きっと静兄が逆の立場だったら、静兄は俺を好きだと言ってくれると思うから。
:08/09/06 12:44
:W52P
:☆☆☆
#759 [東脂ヤ転
「…じゃあ行ってきます」
制靴に履き替えた俺は、玄関まで見送りに来てくれた静兄の方へ向き直る。
「気をつけてな」
静兄はそう言って微笑むと俺の額に軽くキスをした。
「新婚気分だろ?」
静兄の不意打ちのキスにまだ慣れなくて、顔を赤くしてる俺を見ながら静兄は笑う。
「だから…からかうなっての!!」
静兄のその余裕に腹が立ったけど、気を和らげようと静兄がしてくれているのがよく分かった。
「行ってきます」
俺は笑顔でそう言うと、優しい静兄に手を振って家を出た。
:08/09/07 12:39
:W52P
:☆☆☆
#760 [東脂ヤ転
「めーいー!!」
学校に着いてすぐ、大声で名前を呼ばれた俺は立ち止まって振り返る。
「おはよ!今日はヤケに早いじゃん!!」
声を掛けてきたのは幼なじみの北原直樹だ。
まぁ振り返らなくても、俺のことを下の名前で呼ぶ奴はコイツ以外居ないから、すぐ気付いたんだけど。
:08/09/07 17:22
:W52P
:☆☆☆
#761 [東脂ヤ転
「いや、今日はちょっと彩華に用事があってさ…」
「ふぅん…彼女が居る人は朝から忙しいんだねぇ〜羨まし!!」
北原はそう言って俺の肩を叩くと先に教室へ入って行った。
彩華の教室は俺等の隣。呼び出して"振る"なんて、本当だったら絶対やりたくない程気が重い。
しかも北原は彩華とも仲が良いので必ずいつかはこの事がバレてしまう。
もともと彩華の肩を持っていた北原がその事を知った時、どんな反応をするか…。
そんなことを考えたら益々胃が痛んだ。
:08/09/07 21:46
:W52P
:☆☆☆
#762 [東脂ヤ転
「あのさ、林彩華居る?」
何とか教室の前まで足を動かした俺は、入り口の1番近くに居た女子に声を掛けた。
「ちょっと待ってね…
彩華ー!彼氏さんだよ!」
そんな大声で呼ばなくても良いのにそんな呼び出し方をしたもんだから、彩華は嬉しそうに教室の奥から走って来る。
「珍しいね!こんな朝早くから呼び出しなんて」
嬉しそうに笑ってそう言う彩華を見て俺の胸は更に軋んだ。
:08/09/07 22:56
:W52P
:☆☆☆
#763 [東脂ヤ転
「ちょっと彩華に話があってさ…今大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!あ、大事な話だったら屋上行かない?ここじゃ何だし」
俺の真剣な表情が伝わったのか珍しく気を利かせた彩華は、俺の手を引いて屋上につながる階段へと向かう。
こういうことは早く伝えなくちゃいけない、そう考えた俺はあえて朝一に言おうと決めていた。
その割に未だ何て言うかも決めていないんだけど、俺の中ではとにかく早く伝えることが先決だった。
階段を上る彩華の足は軽く、俺の考えていることなど微塵(ミジン)も気が付いていないようだ。
:08/09/08 10:05
:W52P
:☆☆☆
#764 [東脂ヤ転
「ふわぁ…っ風が気持ち良いね鳴ちゃん!」
屋上に着くと夏の朝に相応しい涼し気な風が吹いていた。
それに合わせて彩華の茶がかかった髪が揺れる。
「で?話って何?」
彩華は楽し気に訊く。
きっと良いことを聞かされる、と思っているんだろう。
[彩華…ごめんな]
俺は小さく胸でそう呟くとゆっくりと口を開いた。
「彩華……俺達、別れよう」
「………え…?」
2人の間にさっきとは違う、裂くような強い風が吹き始める。
:08/09/08 12:38
:W52P
:☆☆☆
#765 [東脂ヤ転
「……何で?」
少しの沈黙の後、彩華は俯いて言った。
さっきまであんなに笑顔だったのが嘘のように、その笑みが強張ってゆく。
「ごめん彩華…俺はもうお前を友達としてしか見れないんだ」
そんな彩華を前に、何とか俺の口から出た言葉は酷く冷たい台詞だった。
「何で…何でそんなこと急に言うの!?意味分かんないよ…!」
彩華の声が少しずつ震え出す。顔を上げた彩華の頬には、何度も涙が零れ落ちる。
:08/09/08 17:42
:W52P
:☆☆☆
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