危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#771 [東脂ヤ転
本当の理由なんて…伝えたところできっと、今以上に傷付けるだけだ。
それなら嘘の理由でも彩華を傷付けずに別れるのが一番良いに決まっている。それに今の俺には、最後にそれ位しかしてやれない。
そう自分自身に言い聞かせながら、俺はゆっくりと階段を下りて行く。
[もうホームルーム始まってるよなぁ…]
そんなことをぼんやり考えながら廊下を歩いていると、聞き覚えのある声に呼び止められた。
「おーい!めーいーっ」
俺の名前を呼び捨てにする奴はこの学校で一人しか居ない。
:08/09/15 23:39
:W52P
:☆☆☆
#772 [東脂ヤ転
「もうホームルーム始まってんじゃないの?北原」
俺は振り返って立ち止まると、走って来る北原に向かって尋ねた。
北原は上がる息を少し整えてニッと笑って見せる。
「多分な。でも鳴も一緒ならお叱りも受けずに済むし!担任、鳴には甘いからなぁ〜」
北原のいつもの脳天気な明るさが今日はヤケに堪える。
きっと互いに温度差があるからだろう。
俺は彩華とのことで頭が一杯で北原の話が何一つ入って来なかった。
:08/09/16 16:50
:W52P
:☆☆☆
#773 [東脂ヤ転
「っていうかお前さぁ、林と別れたんじゃないよな?」
「……は!?」
話の流れから聞き流そうとした時、突然北原は思いがけない事を訊いて来た。
あまりに直球の質問に、は動揺を隠しきれずに居た。
「やっぱ図星かよ〜。
さっき林とすれ違った時目が赤かったから、もしかしてとは思ったんだけどな」
それだけで別れ話をしていたと判るなんて、意外と北原は勘が鋭かったんだと驚かされる。
[絶対反対されるだろうな…]
俺は次に北原からどんな罵声が飛ぶのか少し身を構えた。
:08/09/16 22:22
:W52P
:☆☆☆
#774 [東脂ヤ転
しかし北原は意外にも晴れ晴れとした表情(カオ)で「そっか」とだけ呟くと黙って歩き出した。
「そっか…って、お前が言いたいのそれだけ?」
彩華と俺の仲をあれだけ取り持っていた北原だ。相談も無しに別れようとしている事を怒るなり、反対するなりあっても良いと思うんだけど…。
俺の方はそんな思いを巡らせて北原に訊いたのに、当の本人はあっけらかんとした様子で逆に訊き返して来た。
「え、何?俺に何か言って欲しいの?」
:08/09/16 22:25
:W52P
:☆☆☆
#775 [東脂ヤ転
「…いや、別にそういうワケじゃないけど…」
北原はいつも通り笑っているのだが、何故か俺には北原の行動が腑に落ちないでいた。
そうこうしている間に教室が見えて来て、担任の声も徐々に聞こえて来る。
「あ、そうだ鳴」
教室までもうすぐそこという所まで来た時、突然北原が思い出したように声を上げた。
「林とのことなら心配すんな。俺が何とかしてやるからさ。…な?」
北原はそれだけ言うとまたニッと笑って、いつものノリで教室へと入って行った。
:08/09/16 22:28
:W52P
:☆☆☆
#776 [東脂ヤ転
「何とかしてやる…?」
俺は北原の言葉の意味がよく分からず、その意図を読み取ろうと教室の前で立ち止まった。
しかしそれも次の瞬間、無駄な足掻(アガ)きになってしまう。
「日下部君!とっくにホームルーム始まってるわよ!!」
…担任の俺を呼ぶ馬鹿デカい声のせいで。
:08/09/16 22:31
:W52P
:☆☆☆
#777 [東脂ヤ転
ーーーーーーーー
「えー…だから、この否定構文の訳はここで意味を持つのであって…」
この日最後の授業の英語は、未だかつて無い程頭に入ってこないでいた。シャープペンシルの音と教師の声が教室内に響く中、俺は一人退屈そうに窓の外を見つめる。
あと数十分もすれば彩華とまた屋上で話し合わなければならないのに、上手い言い訳が全く思い浮かばない。
空は朝と変わらず灰色で俺の気分を益々落ち込ませる。
:08/09/18 09:25
:W52P
:☆☆☆
#778 [東脂ヤ転
[こんな時…静兄だったらどうするだろ…]
目を瞑ると静兄の笑顔が浮かんだ。
きっと静兄だったら何の迷いもなく彩華に言うだろう。
「俺は鳴が好きなんだ」って。
実際に言われたワケでもないのに俺は何故か、顔が熱くなるのを感じた。
[静兄に会いたいなぁ…]
家に帰ればいつでも会えるのに、不思議ともう何日も会っていないような気持ちだ。
本当なら今すぐにでもこの場を逃げ出して真っ直ぐ家まで走って行きたいけれど、そういうワケにもいかないだろう。
時計に目をやると授業終了まであと十分。
変な緊張が俺を襲う。
:08/09/18 09:26
:W52P
:☆☆☆
#779 [東脂ヤ転
…ドクンー…ッ
何か変だ。急に胸の鼓動が大きく聞こえる。
俺の中の何かが異様に不安を訴える。
『林とのことなら心配すんな。俺が何とかしてやるからさ。…な?』
その時突然さっきの北原の言葉が頭をよぎった。
そうだ、この言葉がずっと引っかかっていたんだ。それに言葉だけじゃない、あの時の北原の妙な笑みが気になっていて。
北原とは長い付き合いだが、あんな表情(カオ)を俺は初めて見たような気がする。
何というか…何かを内に秘めた笑み。
上手く表現出来ない不安が募るのに、時は進むのを止めない。
:08/09/18 09:40
:W52P
:☆☆☆
#780 [東脂ヤ転
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「日下部ーッ」
帰りのホームルーム終了とほぼ同時のタイミングで後ろから大声で名前を呼ばれる。
「来た」と俺は心の中で呟いた。
振り返ると案の定、クラスメートの隣には彩華の姿があった。
教室内は掃除の為に机を動かしたり掃除道具を出したりで皆忙しく動き回っていて、俺達の様子が違うことなんてちっとも気が付いていないようだ。
「…行こっか」
彩華が小さくそう言ったのを合図に俺達は教室を出て、その足で屋上へと向かう。
しかしその時は気付いていなかった。
彩華と北原がアイコンタクトを取っていたなんて。
:08/09/19 15:49
:W52P
:☆☆☆
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