危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#776 [東脂ヤ転
「何とかしてやる…?」

俺は北原の言葉の意味がよく分からず、その意図を読み取ろうと教室の前で立ち止まった。

しかしそれも次の瞬間、無駄な足掻(アガ)きになってしまう。

「日下部君!とっくにホームルーム始まってるわよ!!」

…担任の俺を呼ぶ馬鹿デカい声のせいで。

⏰:08/09/16 22:31 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#777 [東脂ヤ転
ーーーーーーーー

「えー…だから、この否定構文の訳はここで意味を持つのであって…」

この日最後の授業の英語は、未だかつて無い程頭に入ってこないでいた。シャープペンシルの音と教師の声が教室内に響く中、俺は一人退屈そうに窓の外を見つめる。

あと数十分もすれば彩華とまた屋上で話し合わなければならないのに、上手い言い訳が全く思い浮かばない。

空は朝と変わらず灰色で俺の気分を益々落ち込ませる。

⏰:08/09/18 09:25 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#778 [東脂ヤ転
[こんな時…静兄だったらどうするだろ…]

目を瞑ると静兄の笑顔が浮かんだ。
きっと静兄だったら何の迷いもなく彩華に言うだろう。
「俺は鳴が好きなんだ」って。

実際に言われたワケでもないのに俺は何故か、顔が熱くなるのを感じた。

[静兄に会いたいなぁ…]

家に帰ればいつでも会えるのに、不思議ともう何日も会っていないような気持ちだ。

本当なら今すぐにでもこの場を逃げ出して真っ直ぐ家まで走って行きたいけれど、そういうワケにもいかないだろう。

時計に目をやると授業終了まであと十分。
変な緊張が俺を襲う。

⏰:08/09/18 09:26 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#779 [東脂ヤ転
…ドクンー…ッ

何か変だ。急に胸の鼓動が大きく聞こえる。
俺の中の何かが異様に不安を訴える。

『林とのことなら心配すんな。俺が何とかしてやるからさ。…な?』

その時突然さっきの北原の言葉が頭をよぎった。

そうだ、この言葉がずっと引っかかっていたんだ。それに言葉だけじゃない、あの時の北原の妙な笑みが気になっていて。

北原とは長い付き合いだが、あんな表情(カオ)を俺は初めて見たような気がする。
何というか…何かを内に秘めた笑み。

上手く表現出来ない不安が募るのに、時は進むのを止めない。

⏰:08/09/18 09:40 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#780 [東脂ヤ転
ーーーーーーーー

「日下部ーッ」

帰りのホームルーム終了とほぼ同時のタイミングで後ろから大声で名前を呼ばれる。

「来た」と俺は心の中で呟いた。
振り返ると案の定、クラスメートの隣には彩華の姿があった。

教室内は掃除の為に机を動かしたり掃除道具を出したりで皆忙しく動き回っていて、俺達の様子が違うことなんてちっとも気が付いていないようだ。

「…行こっか」

彩華が小さくそう言ったのを合図に俺達は教室を出て、その足で屋上へと向かう。

しかしその時は気付いていなかった。
彩華と北原がアイコンタクトを取っていたなんて。

⏰:08/09/19 15:49 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#781 [東脂ヤ転
キィー…ッ

屋上の扉が軋む音を立てながらゆっくりと開く。今朝来た時よりも風は無く、代わりに雲の隙間から少し光が刺していた。
「もう晴れても良いのにね…」

そんな空を見ながら彩華は呟いた。
俺は彩華の言葉に返事も返さず、未だ言い訳の言葉を探している。
だが、探すには時間が経ち過ぎていた。

「鳴ちゃん…」

彩華が俺の名を呼ぶ。
それが合図のように俺の胸は早鐘を打ち始める。
[こうなったら…]

もう適当に何か言っておくしかない、そう心に決めた時、

「北原君に聞いたよ。
それならあたしも…納得出来たから」

次に彩華の口から発せられた言葉は予想外のものだった。

⏰:08/09/19 16:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#782 [東脂ヤ転
「…え?」

彩華の言っている意味が全く分からない。
北原が…何だって?

しかし彩華は俺の動揺した様子を違う意味に捉えたのだろう。
俺に柔らかく微笑んだ。

「始めから正直に言ってくれたら、あんな責めるような言い方しなかったのに。
本当、鳴ちゃんは優しいね」

"正直に言う"?
北原は彩華に何を言ったんだ?
彩華の穏やかな表情とは逆に俺は混乱していた。

どうやら北原が言っていた通り"何とかしてくれた"みたいだ。
普通ならここで喜ぶべきなのかもしれない。自分じゃ何とも出来なかった問題を、北原が手助けしてくれたんだから。

⏰:08/09/20 10:57 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#783 [東脂ヤ転
[だけど…]

それでも俺の胸はざわついて止まない。
言いようの無い不安が込み上げる。

「それじゃあ…あたしこれから部活だし、行くね」

沈黙に耐えかねたのか、突然彩華はいつも以上に明るい声で言った。
「行くね」この言葉が俺には「さよなら」にも聞こえた。

彩華の声に俺は顔を上げると、今朝とは違い彩華は何故か諦めたような笑顔を浮かべていた。

長いようで短かった彩華との付き合いが、こんなにもあっけなく終わろうとしている。

⏰:08/09/20 11:00 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#784 [東脂ヤ転
「…今までありがとな」

俺は何とかそれだけ言うとぎこちなく笑った。
それにつられるように彩華も微笑むと、小さく頷く。その目はまた涙が込み上げているように潤んでいた。

彩華は俺の視線に気付いたのか慌てて目をこすると、照れくさそうに笑って小走りで屋上を後にした。

「…終わっ…た」

誰も居なくなった屋上で一人、俺は溜め息をつく。ある意味解放感と罪悪感の入り混じった溜め息。

最後の彩華の笑顔があまりに真っ直ぐで、俺の胸は罪悪感でいっぱいだった。

⏰:08/09/20 11:09 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#785 [東脂ヤ転
「鳴、別れられたんだ?」

その時だった。
突然背後から名を呼ばれ俺は身を強ばらせる。
振り返らなくても、声の主が誰かは見当がついた。
俺の名前を唯一、この学校で呼び捨てにする奴。

「…北原」

俺はゆっくりと振り返りながら言った。
名前を呼ばれた本人は何故か嬉しそうに微笑むと、俺の方に近付いて来る。

それと同時に、止み始めていた筈の風が屋上に再び吹き始める。

⏰:08/09/20 11:53 📱:W52P 🆔:☆☆☆


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