危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#837 [東脂ヤ転
家を出なくちゃならない。
そればかりが頭の中にあったせいか、静兄が怪訝な表情で俺を見ていたことに気付かぬまま、部屋を飛び出す。
階段を駆け降りて、玄関まで後ろも振り返らずに走り出した俺の頭には北原の顔しかなかった。
焦る気持ちに比例するように心臓の音が早くなる。急いで皮靴に足を入れ、玄関の扉を開けた。その時、
「───鳴…っ!」
カバンを持つ左手がギュッと強く握られかと思うと、開けた扉をそのまま静兄によって再び閉められてしまう。
しかし、バタン、という音を立てて閉じられた扉を前にしても、俺の焦る気持ちは鎮まらない。
:12/01/06 18:39
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#838 [東脂ヤ転
「静兄…離して…」
握られた左手が熱くて、痛い。
掌から伝わる温もりから静兄が俺のことを本気で心配してくれていることが伝わってくる。
いつもならこんなに嬉しいことなんて無いのに…。
「…鳴」
今はその優しさが俺を苦しめる。
「ホントに遅刻しそうなんだって…!」
何とか力を振り絞って言い訳じみたことを口にしてみたけれど、静兄の前では何の意味も果たせずに言葉だけが宙に舞って消え入ったようだった。
:12/01/10 17:25
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#839 [東脂ヤ転
「鳴、ちゃんと俺を見て」
何も言えなくて俯く俺に、静兄は穏やかな声で話し掛ける。この声に俺が逆らえないのを知っているからだろう。あまりに優しい声色だから思わず泣きついてしまいたい衝動に駆られそうだった。
「静兄…俺……」
でも、
「鳴、何してんの?」
出来るわけなかった。
:12/01/10 17:36
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:p.4EmC32
#840 [東脂ヤ転
「メールの返事はくれたのにさぁ…出てくるの遅いっての」
後ろから聞こえているのは聞き慣れた声なのに、自分の身体が言うことを利かなくて怖い。まるで身体中の血の気が引いていくような感覚に苦しくなる。
せっかく静兄が閉めてくれたドアに鍵は掛かっていなかったのだろう。さっきまで俺が握っていたドアノブに、今は北原の手が重ねられていた。
「……君は…確か、」
張り詰めた空気の中で先に口を開いたのは、静兄。
「“初めまして”じゃないですよ?」
そして、静兄の言葉に返答したのは、何故か可笑し気に笑っている北原だった。
:12/01/17 16:35
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#841 [東脂ヤ転
「北原直樹って言います。鳴と同じクラスなんで、参観日の時に俺のこと見ませんでした?」
淡々と、不自然な程落ち着いた声で話す北原の方を見ると、何を思っているのか読み取れないような笑みを浮かべている。
「……あぁ、思い出したよ。北原っていう名前だったんだね」
そんな北原とは反対に静兄の声は俺でも分かるくらい、静かな怒りに満ちていた。
1番怒らせたくない人を怒らせてしまった。小さな罪悪感は徐々に膨らんで、俺の全てを呑み込んでいくような感覚になる。
そして右手は北原に、左手は静兄に握られた状態のまま俺はどうすることも出来なくて、ただただ床を見つめていた。
:12/01/17 17:13
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