正義のヒーロー
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#1 [我輩は匿名である] 08/05/30 00:59
正義のヒーロー
それは男なら一度は憧れる存在―――

正義のヒーロー
それは誰かがピンチの時、必ず助けに現れる者―――

正義のヒーロー
それは悪を倒し、平和を守る者―――

正義のヒーロー
それは弱い者の味方―――


だから―――
だから僕はそんな正義のヒーローになりたかった―――

#12 [我輩は匿名である]
ただその人影がこちらに向かって歩いているだけなのに……その時の僕は、その人影が自分に向かって迫って来ている様に感じていた。

理由はない。
根拠もない。
でも―――
そう思ってしまう。

お互いの位置、方向を考えれば、ただ横切るだけだと言う事は安易に推測出来る。
だけど―――

違う!!
こっちに来る!!!
何で!?
まさか……殺しに!!?

僕の頭は通常では考えられない結論を出していた。

⏰:08/06/03 23:51 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#13 [我輩は匿名である]
日常の中で、横切る人に殺意を感じる事などあるだろうか?

まず、ないと言える。

人と接する事が苦手な僕でさえ殺意を感じる事などない。
そう、普通に考えればそうなる。

―――だけど
――――だけど!!!

違う……
前方から迫り来る人影は、その平常な結論を吹き飛ばすに値する"殺意"と"恐怖"を孕んでいるんだ……

「!!!」

気付けば、その人影は本当の目前にまで近づいていた。
僕は咄嗟に目を閉じた。これ以上ないくらいに瞼に力を込めて。

⏰:08/06/04 00:07 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#14 [我輩は匿名である]
だけど―――

目を閉じても尚、その人影から発せられている"殺意"と"恐怖"が、僕の周りをぐるぐるとまとわり付いて来るのを肌で感じていた。
さながらそれは、食卓に漂う蝿の様で、いたずらに僕の肌に触れてはまた離れ、触れてはまた離れを繰り返しながら確実に僕の体を"恐怖"で縛っていく。

嫌だ……嫌だ……。
どっかに行けよ……
通り過ぎるなら早く行ってくれぇぇぇええ!!!

僕は悲願にも似たその気持ちを心の中で大きく叫んだ。

⏰:08/06/04 00:18 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#15 [我輩は匿名である]
しかし――
その人影は僕の悲願を嘲笑うかの様に、僕の真横でピタリと歩を止めた。

視線を感じる。
それは目を閉じていても解った。先程まで僕にまとわり付いていた"殺意"と"恐怖"が、僕の顔一点にプレッシャーとなってへばり付いているから。

何で見てるんだよ……
僕を殺して何になるんだ?
何で僕なんだ!!?

いつしか悲願は、怒りへと変わっていた。

いつもと変わらぬ帰り道。いつも通りに一日が終わる筈だったその日。

それが訳もわからない人影にめちゃくちゃにされた事が理解に苦しみ、僕の思考に怒りをつけた。

⏰:08/06/04 00:42 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#16 [我輩は匿名である]
相変わらずその人影が僕の顔を見つめたままその場から動く気配はない。

見続けられている事が余計に僕の怒りを煽る。

何でさっきから突っ立ったままなんだ?
何とか言ったらどうなんだ?

でも―――僕はその怒りをその人影にぶつける事はしない。
そう、いつだってそうだ。怒りを抑えて自分より強い奴には従うだけ。
そうする事が1番痛くない事を僕は誰より理解している。

小学生の時も
中学生の時も
高校生の時も
バイトの時も

今だって―――

⏰:08/06/04 00:48 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#17 [我輩は匿名である]
いじめ。

平仮名にしてたったの3文字のその言葉。
でもそのたった3文字には人の人生をねじ曲がった物に変えるには十分過ぎる程の重みが孕んでいた。

人はそれを恐れる。
いじめから逃げる為に誰かをいじめるなんて話は、今やドラマの中でも普通に使われている。

そう、だから僕はいじめに逆らわず、それを受け止めた。

―――1番楽だったから。
逆らって今より酷い目に合うくらいなら【今のまま】でいい。

⏰:08/06/07 22:44 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#18 [我輩は匿名である]
僕はいつもそうやって耐えて来た。
今まで――――ずっと

だから―――
今にしたって少しの間僕が我慢すればいいだけなんだ。
21年間ずっと耐えて来たんだからやれるさ。

大丈夫―――
大丈夫――――

お金がほしいならくれてやる。少ないけど僕はこう言う時の為にいくつか余分にお金を財布に入れているから。

「…………!」

僕は自分でも信じられない程【今の状況】に前向きになっていた。

⏰:08/06/10 13:36 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#19 [我輩は匿名である]
開き直りだと言われればそれまでかもしれない。

けど――――

だけど――――

その僕を見つめて離さない人影から発せられた次の言葉は、僕が予想し得る言葉に……
該当する物はなかった………。

⏰:08/06/26 22:53 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#20 [我輩は匿名である]
その―――
その言葉は―――













『もしかしてお前……俺の姿が見えてんのか………?』

⏰:08/06/26 22:54 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


#21 [我輩は匿名である]
「うわぁぁぁぁぁああああああ!!!」


その言葉の次の瞬間には、僕の足は動いていた。僕の意思なんか関係なく、本当に勝手に動いていた。

「ひぃぃいいい!ひぃぃぃぃいい!!!」

情けない程に大きな悲鳴を上げながら家とは逆の方向に逃げる僕を先程の人影が追い掛け始める。

『キャッハハハハハ見つけたぞぉぉおおお!!!見つけたぁぁぁあああ!!!!キャッハハハハハ!!』

口の無い筈のその人影は、絶えずその言葉を繰り返しながら僕との距離を徐々に詰めて行く。

⏰:08/06/26 23:07 📱:F901iS 🆔:☆☆☆


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