Alice

"アリス。"

｢！｣
｢猫さんがしゃべった！｣

"猫はしゃべるよ"

｢そうなの？｣

"アリス、僕はこの日をまっていた。"

｢なんで？｣

―あなたの命は僕のもの―

金髪の少女は一匹の大きな野良猫に出会った。

暗闇では見えない程の黒猫に。

猫は言った。

"猫はしゃべる。"
"アリスを守る。"
"白ウサギは危険。"

｢ママッ！大きな猫さん連れて来たよ！｣

｢アリス？猫さんはどこにもいないよ？｣

…え？

"無駄だよアリス、君以外には僕の姿は見えないし聞こえない。"

｢なんで？｣

"アリスの命は僕の命。"

｢アリス、ママを騙すんじゃありません。１人で遊ばないでお友達と遊びなさい。｣

ママ、アリスにはお友達はいないの。猫さんしかいないの。

"…。"

｢猫さん。｣

"なんだいアリス。"

｢アリスはお友達がいないの。どうしたらお友達作れるの？｣

"チェシャ猫とお呼び。"

｢ちぇしゃ猫？｣

"…おいで。"

猫が導いた先は、違う世界だった。

８歳のアリスは無邪気で清純で、おいしそうだった。

猫はしゃべる。

でも無口。

アリスはいつも猫と一緒だった。

"気を付けて、白ウサギはアリスを惑わす。"

｢うさぎさんは悪くないよ！｣

"ウサギは悪い。"

｢どうして？｣

"着いた。"

猫は質問に答えず異世界にアリスを導いた。

―猫は導くもの―

"アリス、ここがアリスの作った世界。"

｢アリスが作ったの？｣

"…。"

そこは絵本でよくみた風景だった。

"反対側は違う。白ウサギが作った世界。白ウサギの世界には入っちゃ駄目。"

｢なんで？うさぎさん見たいよ！アリスはうさぎさん好きだもん！｣

"いけないよアリス。白ウサギは必ずアリスを食べに来る。白ウサギは見えない。"

アリスは猫の言葉がよく分からなかった。

意味も、どうして兔がいけないのか。

なぜ白ウサギにこだわるのか。

少女は好奇心しかなかった。

―白ウサギに逢いたい―