月の裏側

「うっざー。みっちゃんのそんな笑顔見た事ないよ」

「幸せなんっすよ」

「ムカつく！」

「さきえも彼氏作れー」

「うるさい、バーカ」

さきえは舌を出して俺の席から離れて行った

もうすぐ補習が始まる

俺と百合が恋人同士だって周りが信じ始めたのは、つい最近だったりする。

それまで百合もミナトに遊ばれてるだけ、って思われてたみたい。

百合は気にしてないよ、と笑ってたけど…いい気な訳ない

なんとか周りに信じてもらいたくて、俺は半年記念にペアリングをプレゼントした

百合は半泣きで喜んでくれた。

何度も優しいキスをして、ゆっくり愛のあるエッチして…

超最高の記念日。

その日から…っつっても、つい最近。

ペアリングをつけはじめたんだ、百合と俺は。

指輪のおかげで見事に俺と百合は恋人だって事実が浸透したらしい。

まさか、あのミナトの薬指に指輪が？？みたいなね。

でもこのおかげで、やーっと百合が俺の彼女なんだって信じて貰えた。

指輪作戦大成功じゃん。

百合は頭がいいから補習なんか受けなくていいし、大学も決まってる。

今ごろ友達と遊んでんだろうな

俺は今日もわざわざ登校して虚しく補習

俺のせいでゆっくり会えないけど、この左手の左から２番目の指に光るものがあるから上手くいってるんだと思う

愛の証。

蛍光灯の光りを堂々と弾いている。

三年生の冬なんてものは、普通、登校しなくていいもの。

なのにバカ組は補習登校

まぁ自業自得だな

ポジティブに考えると、普通の奴らより多く制服を着れんだぞ

すげーだろ

得だよ、得！

…なーんて事を考えてでもないと、やってられねぇっつーの。

今日はここまで、また明日。という先生の声で開放されるバカ野郎たち。

「ミナトー、飯行こうぜ」

「おーっ」

「あれ？彼女はいいの？」

「いいのいいの」

高校生活もあと少し。

友達と過ごす時間も必要だから、百合にべったりってわけにもいかない。

百合だって友達と遊びたいだろうし。

野郎達が騒ぐ

「束縛とかねーの？」

「ない」

「マジで？」

「だって百合のこと信用してるしー。束縛するってことは信用してないって事だろ？」

「あぁ…まぁ。でも逆に彼女が不安がらない？私のこと興味ないのかな？って」

「そうならないように、ほどよい束縛ならするけど」

「やっぱすんじゃん」

みんなが笑った

男と連絡取るな、とか
男と喋るな、とか
露出するな、とか…

そんな束縛はしない。

たまーに、俺だけの百合でいろよ？とか…そんな感じ。

って！

何、恥ずかしい事言わせんだよ。

墓穴だわ、バカ。

飯食ってカラオケしてゲーセン行って…高校生らしい遊び方。

逆ナンされても俺は他人事のように、他の奴らのデレデレ顔を眺めてた。

「彼女いるの？」

俺の指輪を見て、チビ女がそう言った

「うん」

「ダサくない？彼女なんてダルいっしょ？」

昔の俺ならそうだった。

この女の言う事もわからんでもない。

でも今は違う