月の裏側
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#355 [我輩は匿名である]
「夢を…見るの」
「え?」
夢?
百合は家族3人が映されている写真立てを見ながら言った。
「あんな可愛い娘がいて、家族を愛してくれる旦那がいるのに…私、最低だよ」
「…」
何も言えない。
俺は黙って煙草を吸いながら話を聞いた。
:08/09/19 12:11
:PC
:./.2cs2Y
#356 [我輩は匿名である]
「いつも、私が追い掛けてるの。泣きながら…待ってよって言いながら追い掛けてるの。なのにどんどん行っちゃうんだ」
百合がおかしくなったのかと思った。
話が統一されていない。
だけど俺は必死に理解しようとした。
:08/09/19 12:12
:PC
:./.2cs2Y
#357 [我輩は匿名である]
「追い掛けても追い掛けても届かなくって…私はつまづいて転んじゃうの。すると、やっと立ち止まってくれる。それで振り返って…百合はもういらないから、って言うんだー」
今、百合が泣きそうになりながら話してくれているのは…夢の話だ。
:08/09/19 12:12
:PC
:./.2cs2Y
#358 [我輩は匿名である]
百合がいつも見るという夢は、誰かを追い掛けているのに捕まえられない。
百合が転ぶと誰かは立ち止まって、やっと振り返ってくれる。
そしてその誰かは言う。
百合はもういらない、と。
:08/09/19 12:12
:PC
:./.2cs2Y
#359 [我輩は匿名である]
「そっか、私いらないんだって自覚して…大泣きするの。苦しくてさ、そこで目が覚めるの。枕びしょびしょになるくらい泣いててさ。夢と現実の境目わかんなくて、ボーッとしてると、隣で寝てる美優とミナトが気持ちよさそうに眠る寝息とか聞こえるの。二人見てると余計に泣けちゃってさ。」
:08/09/19 12:13
:PC
:./.2cs2Y
#360 [我輩は匿名である]
百合はそう言って泣き始めた。
もう、バカな俺でもそろそろわかってきた。
「自分が情けない。こんな素敵な家族がいるのに…あんな夢見るなんてさ。ごめんね…ごめんなさい」
「…百合」
俺は煙草の火を灰皿で消した。
:08/09/19 12:13
:PC
:./.2cs2Y
#361 [我輩は匿名である]
百合は潤んだ目で俺を見た。
「その追い掛けても追い付かない相手のこと…まだ好きなのか?」
百合は首を横にふった。
「まさか。好きな訳ないじゃん。もう全然会ってないんだから」
:08/09/19 12:14
:PC
:./.2cs2Y
#362 [我輩は匿名である]
「でも夢に出てくるって事は…自然に百合はあいつを求めてんじゃねーの?」
「あんな奴…もう忘れたよ。忘れたのに…なんでよ…もうやだ。今更何なんだろ…夢にまで出てきてさ…」
百合は涙をぽろぽろ零して泣いた
:08/09/19 12:14
:PC
:./.2cs2Y
#363 [我輩は匿名である]
互いに名前は出さないけど、誰の話をしてるかはわかるだろ?
名前を出すと百合が苦しむから。
「ちょうど今みたいな季節じゃね?クリスマス前でさ、あいついきなり俺の部屋入って来たんだよな」
:08/09/19 12:14
:PC
:./.2cs2Y
#364 [我輩は匿名である]
何年前になるだろうか。
百合は懐かしみながら頷いていた。
「あの時の百合カッコよかったよー。俺、それまで不安だったんだ」
今更ながらの俺の本音。
:08/09/19 12:15
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