月の裏側

もう限界だった。

「お義母さん、すみませんが今から行ってもいいですか？」

「今から？」

時刻は夜の９時を迎えようとしていた

「はい。百合には言わないでください。今から俺とヨースケが行く事」

お義母さんに了解を得て、俺は車を走らせた。

「…ぱぱぁ、んー。ねむいー」

「美優ごめんね。寝てていいよ」

眠いせいでぐずっている美優に謝りながらヨースケの家まで走らせた。

到着した頃には美優は夢の中だった

「何ー」

「外出てきて」

「言われるとおもった」

ヨースケは家から出てきて俺の車に乗った

「そろそろ、また電話くるだろうなーって思ってた。で、また呼び出しされるんだろーなーって」

あからさまに迷惑なんだけど！って態度のヨースケ

一応謝ったけど、こっちだって迷惑してんだよ

おめーの存在に。

「どこ行くの」

「松本宅」

「どこそれ」

「百合の実家」

「はぁ？なんで？意味わかんねー」

この前の話をヨースケにした

「俺も迷惑してんの。明日仕事だから美優の面倒見る人いねーし。百合が帰って来なかったらヨースケ、お前が面倒見て！」

「やだよ。つーかなんで百合なんかに会わなきゃいけないのー」

「もうハッキリしてもらわねーと俺もキツい」

百合に考える時間をたくさんあげるつもりだったのに、俺ってば短気でさ。

もう限界だった

１０時前に松本家につき、お義母さんが出迎えてくれた。

眠った美優を、お義母さんたちの寝室に運び、俺とヨースケは百合の部屋に通された。

「百合、まだ起きてるから。どうぞ」

ノックの後に部屋を開けると、驚いた顔の百合がベットの中から体を起こしていた

きっと百合は俺が来た事に驚いてるんじゃない。

数年ぶりに見る、かつての恋人、今でも忘れられない人を見て驚いてるんだ。

「百合、ベットから出てきて」

百合は今にも泣きそうな顔でベットから出てきた

元々細い体の百合が、また細くなっていた

「ハッキリしたいんだ。俺のこと、美優のこと、ヨースケのこと」

俺が言い終えるとヨースケが言った

「百合さ、まだ俺が好きなの？」

普段の俺ならヨースケを殴り飛ばしてるかもしれないセリフ

だけど今は、これを聞かないと何も始まらないし…終わらない

「…好きじゃない」

「俺のこと気にしなくていいから、本当のこと言って」

俺がそう言うと百合は強い目でこっちを見た

「私はミナトが好きなんだよ」

ヨースケが言った

「だってさ。はい、解決」

ヨースケは続けた

「百合、もうお前ミナトんとこ帰れよ。俺が迷惑」

「…帰れない」

「なんで」

「ヨースケが夢に出てくるからだよ」

「っ。意味わかんねー」