Fantasy Story
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#51 [英]
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「イシカワ…トール?」


名前を教えれば青年は何度もイシカワ、と繰り返していた。



「あのっ僕の名前に何か…?」

「んぁ…いや、珍しい名前だと思ってな。それに最近…どっかで聞いた事あるような気がして…」



うーん…と唸りながら記憶を辿っている青年に、透を助けてくれたもう一人の人物が、深い溜め息を吐いた。

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⏰:08/10/23 13:32 📱:W53T 🆔:6h46YwUk


#52 [英]
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溜め息が聞こえた方へと顔を向けると、凛とした瞳を持った女と目が合った。
気の強そうな女の表情は少し呆れが入っており、透を見た後直ぐに青年へとその目は向けられた。


赤い着衣に鮮やかな銀の胸当て。腰までの朱色のマントと共に揺れる、束ねられた漆黒の髪。

膝上まであるブーツで地面に散らばっている無数の矢を蹴り、二人の下へと歩んで来るとまた一つ、溜め息を吐いた。

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⏰:08/10/23 13:59 📱:W53T 🆔:6h46YwUk


#53 [英]
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「フェルナート、イシカワってのはこの前突然城に現われた子の名と同じじゃなかったか?」


「……ああ!そうだミナトだ!」



女にフェルナートと呼ばれた青年はモヤのかかった名前と、その人物を思い出してスッキリしたのか思わず大声をあげた。

そんなフェルナートの言葉に、今度は透が大声をあげる番となった。


「イシカワミナトって……あ、兄貴いいいぃ?!!」


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⏰:08/10/23 14:12 📱:W53T 🆔:6h46YwUk


#54 [英]
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いや、そんなまさか…


頭に浮かんだ兄、水人の顔を必死に消そうとするが、屋上で会った少女を思い出してやはりその人物は水人にしか思えなかった。

この二人の言うイシカワミナトは行方不明となった石川水人だと、証拠もなにも無いが、透は確信する。



声も出さずに呟いている透にフェルナートが何度も瞬きをして口を開いた。


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⏰:08/10/28 17:11 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#55 [英]
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「えっと…トール、兄貴ってもしかして君…ミナトの弟?」

「はい」


一応、とつけ足すとフェルナートが訝しげに何やら透の顔をじっと見てきた。そんな彼に透は一歩後ろへと引いてしまった。


「フェルナート、その子気味悪がってるから止めなさい」

「リ、リィン様…すみません。ミナトと似てないもんだから…つい」

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⏰:08/10/28 20:32 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#56 [英]
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続けて透にも謝るフェルナートに、リィンと呼ばれた女は小首を傾げながら頭にクエスチョンマークを浮かべて言った。


「そうか?黒髪に黒目、顔つきは確かに似てないが…纏っている雰囲気と強い光を宿した瞳はそっくりじゃない」


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⏰:08/10/28 21:37 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#57 [英]
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そう言い微笑むリィン。
似ていないと言われ少々複雑な気持ちになった透だが、彼女の言葉にほんの少し、頬が緩んだ。



「リィン様、トールも城に連れて行きますか?」

「そうだな。…トール君」

「は、はいっ」


いきなり名前を呼ばれた透は驚いて大声で返事をしてしまった。
だがリィンはそれを気にせず、いつの間にか後ろに整列していた兵達の一人に目を向け指示をした。

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⏰:08/10/28 23:12 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#58 [英]
すると兵は逃げないように木に繋げていた二頭の馬を連れて来た。
リィンとフェルナートがそれぞれ馬へと乗る。


「君の兄はこのウェルド王国の皇都、シェドリエの城に居る。私達はもう城に戻るが……共に行くか?」


馬上から問うとリィンは透を見据えた。彼女の瞳を見、透は唱える。



――この人達と一緒に行けば、兄貴に会えるんだ



…と。透は自分よりも高い位置に居るリィンを見上げ、頭を縦に振り頷いた。
真直ぐ返ってくる瞳に、リィンはふと小さく笑みを浮かべた。

⏰:08/10/29 00:38 📱:W53T 🆔:4VYFIbPc


#59 [英]
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「フェルナート、トール君を後ろに乗せてあげなさい。私は――彼女を乗せなきゃならないみたいだからね」

「彼女…?」


リィンの言葉に透は呟く。
だがその呟きは荒れた兵士の怒鳴り声によってかき消された。


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⏰:08/10/29 00:43 📱:W53T 🆔:4VYFIbPc


#60 [英]
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「早く歩けと言っているだろう!!」

「ふんっ!誰がお前なんかの言う事聞くかっ」

「なんだと?!この小娘…!!」


言い争いをしている一人の兵士と少女。
その少女は人間のようで、人間ではなかった。鮮やかな金髪からのぞく長い耳は尖っていたのだ。


全く言う通りにしない少女に腹を立てた兵は、少女の両腕を縛った縄を強引に引っ張った。

縛られた腕で受け身などとれるはずもなく、少女は勢い良く顔から地面へと倒れ込んでしまう。


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⏰:08/10/30 01:03 📱:W53T 🆔:JYnd9VOg


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