Fantasy Story
最新 最初 🆕
#1 [英]
はじめまして!
小説に挑戦してみようと思い、私もこちらで小説を書かさせていただきます^^

今から書く物語は血表現などがありますのでご注意を。
ファンタジーものが好きな方やそうでない方にも読んでいただけたら幸いです。


bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3904/
↑感想板

主人公 [jpg/23KB]
⏰:08/09/05 01:29 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#2 [英]




神隠し?

そんな不思議な事ある訳ないじゃん。



誘拐されたとか?

ないない、絶対ない!



じゃあ何で――兄貴はずっと帰って来ないんだ…?




―Fantasy Story.00―

⏰:08/09/05 01:40 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#3 [英]
今年の春、僕――石川透は高校一年生となった。


新しい生活に新しい友達、全てが新しく始まる事に嬉しさと緊張が僕の中に走った。

だけど兄――水人とまた同じ学校に通う事になって少々不満…と言うより不安があった。


だって兄貴はいつも僕の事こき使うんだから…


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⏰:08/09/05 01:48 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#4 [英]



だが、そんな不安な思いをさせる張本人は突然行方不明になったのだ…。

それも、僕の目の前で――



.

⏰:08/09/05 01:51 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#5 [英]



『おい透、お前入学して早々遅刻する気か?』

『…なっ?!』

『んじゃ。俺先に行くぜー』

『ちょ…!ちょっと待ってくれたって良いだろ兄貴!!』

⏰:08/09/05 14:03 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#6 [英]

バタンと玄関のドアが閉まり、慌てて兄貴を追い掛けようとドアを開ければ…朝の日差しとは全く違う、目の眩む程の光が飛び散った。



ありえない

ありえない…



『あ…あに、き…?』



⏰:08/09/05 14:08 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#7 [英]


光が消えればいつもと同じ道路とご近所。ただいつも違うのは、兄貴の学校の鞄が僕の足元に落ちている事だった。


最初は鞄持て。と、わざと置いてったのかと思ったが、学校に着いても兄貴は鞄を取りに来なかった。

⏰:08/09/05 16:11 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#8 [英]



教室に届けても先生や兄貴の友達は“知らない”の一言。

――それは来てない、と言う意味では無く“石川水人なんて知らない”であった…



⏰:08/09/05 16:46 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#9 [英]

不思議に思っている間にも学校は終わり、夕方、晩飯の時間へとなるが兄貴は一向に帰って来なかった。






「何処行ったんだよ馬鹿兄貴ぃー」



授業なんてお構いなしに屋上で寝転がり空を眺める。

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⏰:08/09/05 18:58 📱:W53T 🆔:t0ISOB7o


#10 [英]


――兄貴が行方不明になってもう一週間。


いつもこき使われてムカつくけど、流石にこんな長い期間帰ってこなきゃ僕も心配になる。

それで母さんと父さんにも聞いてみれば、二人共学校の人達みたいに兄貴なんて知らない…と言われた。


実の息子の事普通忘れるか?
まだ四十代だし、ボケが始まったとは到底思えない。

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⏰:08/09/06 15:08 📱:W53T 🆔:0J8yRLx.


#11 [英]



「…一体何が起こってんだ?」



兄貴は確かに存在していた。だって家に帰れば兄貴の部屋がそのままあるし、アルバムだって見れば家族で写ってる写真もあるんだから。


それなのに何で皆知らないって言うんだよ…!



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⏰:08/09/06 15:16 📱:W53T 🆔:0J8yRLx.


#12 [英]




わけわかんねぇ!そう溜め息と一緒に吐き目を閉じると、顔に陰がかかった。

空は青空。
雲ひとつ無く、とても良い天気だ。それに自分の周りに陰が出来るような物は何ひとつ無い。


……そう思いながら恐る恐る瞼を上げると、見知らぬ女の子のドアップが――



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⏰:08/09/08 01:06 📱:W53T 🆔:UFXEwrvI


#13 [英]





「……うわぁっ?!!」



驚きの声をあげるのと同時に勢い良く身体を起こした。すると女の子の顔と自分の額が大きな音を立てぶつかった。

額はズキズキと痛み、それはもう涙が滲むぐらい痛い。


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⏰:08/09/09 15:28 📱:W53T 🆔:veevqq1o


#14 [英]


「ご、ごめ――」
「ごめんなさい、驚かせてしまいましたね」


謝ろうと口を開くとそれは直ぐに遮られてしまった。
鼻を擦りながら女の子は申し訳なさそうにし、頭を下げて来た。

確かに驚いたけど、僕が起き上がったりしなかったらぶつかる事も無かったし…


「僕の方こそごめんね…鼻、大丈夫?」


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⏰:08/09/13 02:15 📱:W53T 🆔:s2jL32tk


#15 [英]


小首を傾げながら聞くと、女の子は赤くなった鼻を擦るのを止め、ふわりと笑った。


「私は大丈夫ですよ。心配してくれて有難う」


幼く可愛らしい外見には似合わぬ大人びた話し方。

まじまじと目の前に居る子を見て見れば…ピンク色の長い髪に、薄紫の瞳と何とも不思議色をもった姿だった。


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⏰:08/09/13 02:42 📱:W53T 🆔:s2jL32tk


#16 [英]
>>15
訂正。

不思議色ではなく、
不思議な色。


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⏰:08/09/13 02:44 📱:W53T 🆔:s2jL32tk


#17 [英]
>>15続きです。



染めてるのかな…でもこんな綺麗に染まるもんなのか…
目はやっぱカラコン?

それにこの服って…



髪や顔から下へ目を向けると、彼女は学校の制服ではなく…ファンタジーの映画や漫画に出てきそうな白のローブを羽織っているのに気付いた。
黄金色の刺繍がいくつも入っていて、それはとても綺麗だった。


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⏰:08/09/13 10:57 📱:W53T 🆔:s2jL32tk


#18 [英]


コスプレにしては良く出来てるし…でも、何だかコスプレとかじゃなく、本当に何かの物語に居るような……この世界の人間ではない気がした。



「…君は一体…」



――誰なの?
そう言おうと口を開けば、彼女は薄紫の瞳を楽しそうに細めた。


「さあ、誰でしょう――でも分からないままじゃつまらないですよね…」



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⏰:08/09/14 14:33 📱:W53T 🆔:7.B.APkA


#19 [英]
"
唇に人差し指を当て、小さく唸るかと思えば今度は唇を弧の形にし、更に言葉を続けた。


「貴方のお兄さんを“向こう”へ連れてった者…とでも言っときましょうか」

「?!」



……連れてったって…この子が兄貴を?
それに“向こう”って何処の事言ってるんだろうか…。


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⏰:08/09/15 14:55 📱:W53T 🆔:keVmWsYw


#20 [英]
"

「じゃあ…皆が兄貴の事忘れてるのも…」

「私がやりました。騒ぎになったら大変ですから皆さんの記憶を少々弄らせてもらいました」


人間にそんな事できるのか。…出来ないと頭で分かっているのに何故か彼女の言葉が本当の事に聞こえてくる。

でももし、これが本当の話なら兄貴は戻って来るかも――そう呟けば目の前にあるピンクの髪が揺れた。


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⏰:08/09/15 15:00 📱:W53T 🆔:keVmWsYw


#21 [英]
"

「必要だらか“向こう”に連れて行ったのに直ぐ帰すと思います?」

「……思わない」

「ふふ、安心して下さい。用が済めばこちらにちゃんと帰しますので……まぁ、当分先の話ですけどね。お兄さんも、貴方も…」


気付けば彼女の笑みは息がかかる程近くにあった。

薄紫の大きな瞳に映ったのは僕の顔ではなく、見た事もない世界が何処までも広がっていた。その世界は彼女の姿同様、ファンタジーの世界にあるようなモノばかりだった。

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⏰:08/09/16 00:54 📱:W53T 🆔:uMH/FQRM


#22 [英]
"

「――“向こう”へ行けばお兄さんに会えるでしょう……ですが今までのように簡単にはいかないですが――」



それはどう言う意味なのだろうか。行けば直ぐ会えるわけじゃないのか?


そう聞きたかったが思うように口が開かなく、声を出す事が出来なかった。次第に身体も動かせなくなり、重たくなった瞼が勝手に落ちていく。

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⏰:08/09/16 15:38 📱:W53T 🆔:uMH/FQRM


#23 [英]
"



薄れる意識の中、もう一度彼女を見たら先程までの妖しい笑みはどこにも無く、そこには辛そうな…悲しそうな顔があった。



そして僕の視界は真っ暗となった――。




next...第一章

⏰:08/09/16 15:44 📱:W53T 🆔:uMH/FQRM


#24 [英]
"

・お知らせ・
第一章からは主人公視点から三人称視点となります。読みにくいかもしれませんがまた主人公視点に戻る時もあると思います…。
申し訳ないです;;

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⏰:08/09/17 19:09 📱:W53T 🆔:W0ycFVR2


#25 [英]



朝、目覚し時計が鳴っても眠り続ける僕を起こしに来る母さん。

リビングに行けば新聞を読みながら「おはよう」と言ってくれる父さん。

自分の分だけじゃ足らなく、僕の朝ご飯まで食べようとする兄貴。



これが僕にとって当たり前の生活で…当たり前過ぎて幸せだとか分からないけど、この生活がとても温かく感じられるんだ。


⏰:08/09/17 21:25 📱:W53T 🆔:W0ycFVR2


#26 [英]

だけどそんな温かな風景に、どこからともなく闇が滲み出て来る。


その闇から聞こえて来るのは家族の話し声や笑い声ではなく、鼓膜を破るような金属音と人々の悲痛な叫びと悲鳴だった――



―Fantasy Story.01―

⏰:08/09/17 21:32 📱:W53T 🆔:W0ycFVR2


#27 [英]
"





「うわああああ!!!……あ、あれ…?」



夢から覚めれば透は悲鳴に近い叫びと、間抜けな声をあげた。


「へ…夢?そ、そっか…僕寝ちゃったんだ…」


視界に広がる青は学校の屋上から見える空と同じ色で…だけど今寝転がっている地面は屋上とは違った。


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⏰:08/09/17 22:14 📱:W53T 🆔:W0ycFVR2


#28 [英]
"

手を探るように動かしてみれば、そこにあるはずのない土と地面から生えた草が透の指に触れたのだった。


「…どうして土が…」


…あるんだろうか?
そう言葉を発する前に、風と共に流れてくる草木や土の匂いに気付いた透は空を眺めるのを止め、ガバッと効果音がつく程勢い良く上半身を起こした。

それと同時に周囲を見回せば、冷や汗が額から流れ出てくる。


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⏰:08/09/18 01:49 📱:W53T 🆔:0TIpl6QI


#29 [英]
"


「――も、森…?」



広場のように空いた場所の中心に透は居た。

緑色の短い草が敷き詰められていて、広場は奥が見えない程沢山の木々に囲まれている。よく見て見れば、真上にある青空はその高く伸びた木々によって狭いものとなっていた。


「森だなんて入った覚えないんだけど…」


呆然としていると、屋上で起こった出来事を思い出した。

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⏰:08/09/18 18:55 📱:W53T 🆔:0TIpl6QI


#30 [英]





『“向こう”に行けばお兄さんに会えるでしょう』





「ああ…此処があの子の言っていた“向こう”なのか…」


屋上で会った少女の言葉を全て思い出した透は深い溜め息をついた。

こんな鬱蒼とした森に水人は居るのか…。もし居たとしても、森の中を一人で歩く勇気なんてない。

そう心で呟く透だが、ずっと此処に座ってるわけにもいかず、重たい腰をあげた。


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⏰:08/09/18 21:43 📱:W53T 🆔:0TIpl6QI


#31 [英]
"


――いたぞ!あそこだ!!


突然、男の叫びが森中に響いた。そして叫びに続いて幾つもの足音がこちらへと駆けて来た。

人がこの森に居る事が分かって少し安心する事が出来た……が、何故かその足音は広場へとは出ず、途中で止まってしまった。


「何で隠れてるんだ…?」


小さな声で呟やいた透だが、風がなくなった今、物音一つしない森では十分に響いた。

だが誰一人、返事をする者はなく…ジッと木々の陰に潜んでいた。

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⏰:08/09/18 22:16 📱:W53T 🆔:0TIpl6QI


#32 [英]
"


あまりにも怪しい空気に緊張が走る。
一度流れた冷や汗はまた流れ出し、量が増すばかりだ。


木々の隙間から見える小さな光が幾つもあって、それらを見た透は立ったまま動く事が出来なくなった。

懐中電灯や携帯電話のライトとは全く違う、とても冷たくて鋭い光…。



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⏰:08/09/19 01:50 📱:W53T 🆔:Ltw.xKIY


#33 [英]
"

「動くな。動けば貴様の身体に数十本もの矢が突き立つぞ」


男の言葉に、透は顔を真っ青にさせた。


先程から小さく光っていたものが矢だとわかると、足が、身体が、途端に震え始める。

動けば一斉に矢が放たれるだろう。透は動かないように足を突っ張らせるが、震える身体は言うことを聞かず、ガクンと折れるようにして座り込んでしまった。


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⏰:08/09/19 14:29 📱:W53T 🆔:Ltw.xKIY


#34 [英]
"

「動くなと言ったはずだ!」


怒鳴る声と同時に数本の矢が放たれ、透を囲むようにして地面へと突き立った。

「ひ…っ」

矢だなんて初めて見る。
いつもなら興味津々にそれを見ていただろうが、今はそんな余裕なんて無かった。


もう透の心には恐怖しかない。


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⏰:08/09/20 18:05 📱:W53T 🆔:TxzOERd2


#35 [英]
"
「汚らわしい王国の人間よ…“シュウレン様”を何処へやった…」

「教えろ、あの方は今…」

「早く…早く…」

「教えなければ、」


――殺す。


物騒な言葉、だけじゃすまない。
彼らの声はとても穏やかなものとは言えない。透は直ぐさまそんなもの知らない、と言い頭を横に振りたかったが、それすら出来ないぐらいに身体は竦んでいた。

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⏰:08/09/21 01:27 📱:W53T 🆔:dVBbJtIo


#36 [英]
"

「やはり王国の人間は何処までも汚らわしい…」


もういい、他を当たろう。

その一言で周囲は冷たい空気に包まれた。また幾つもの鋭い光が木々の隙間に現れ、透へと向けられる。


ああ、こんなわけの分からない所で、理解出来ない事を言われて、僕は殺されてしまうのか…


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⏰:08/09/21 01:35 📱:W53T 🆔:dVBbJtIo


#37 [英]
"

そんな事を思っている間にも無数の矢は透へと狙いを定められている。


何であの時授業をサボって屋上へと行ってしまったのだろうか。
あの子と出会っていなければきっとこんな事にもならなかった筈だ…



これから起こる事に耐え切れず、透は涙を流した。


「…まだ死にたくない…」


透の言葉は届かなかった。

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⏰:08/09/21 01:46 📱:W53T 🆔:dVBbJtIo


#38 [英]
"


「放て!!」


誰か一人が合図を出せば、矢は一斉に射られた。

自分へと目掛けて飛んでくる矢に、そして迫りくる恐怖から逃れられず、声を出す事も忘れきつく目を瞑った。


刹那、透と無数の矢の間に二つの影が何処からともなく現われた。
前と後ろ。蹲る透を挟んでその影は立ち、飛んできた矢を的確に叩き落としていったのだ。


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⏰:08/09/24 01:18 📱:W53T 🆔:lWGJvETk


#39 [英]
"



「此処はウェルドの地。貴様らエルフが何用だ!」


直ぐ側で高い女の厳かな声があがった。



――エルフ。
物語の中でしか存在しないはずの生き物。そして聞いた事の無い地名…

何が起き、そして突然現われた女が何を言っているのかわからず、透はきつく閉じていた目を恐る恐る開いた。


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⏰:08/09/25 01:41 📱:W53T 🆔:V0xX2K.6


#40 [英]
"

目の前には細い足があり、上へと見上げると漆黒の美しい髪が一つに束ねられていた。

その人物の足元には先程まで鋭い光を放っていた矢が折れた状態で幾つも散らばっている。


「どうせまたシュウレン様とやらを返せって言うんだろう?」


女の声とは別に、今度は真後ろから溜め息混りの若い男の声が聞こえてきた。

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⏰:08/09/30 19:43 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#41 [英]
"


「何度もしつこいね、アンタら。シュウレンってのはエルフ族の長だったはず……そんな奴が此処、ウェルドに居るわけないだろ」

「嘘だ!王国の人間は幾度と我々を騙してきた…もう人間の言葉など信じるものか!」

「でも本当に知らないんだけどな…」


どうしたものか、と困った声をあげる青年に、エルフの者は今まで以上に声を荒げた。

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⏰:08/09/30 19:58 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#42 [英]
"

「我らは見た!お前らの王がシュウレン様を連れ去ったのを…!!」

噛み付くように叫ぶエルフに、透の目の前に佇んで居た女は手に握っていた細身の剣を姿の見えないエルフ達へと向ける。


「…でまかせばかり言うな!そのような嘘をついて貴様らはウェルドの民を殺したのか…っ」


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⏰:08/09/30 20:01 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#43 [英]
"


「お前達のような偽りばかりの人間と一緒にするな!早く、早くシュウレン様を返せ!!」


お互いが違うものに対して怒りを感じ、言葉が噛み合わなくなってきた。

言葉と同時に放たれる一本の矢。
女は自分目掛けて飛んで来る矢に、そして自分達を囲んで居るエルフ達に苛立ちを抑え切れず小さく舌打ちをして矢を叩き落とした。


そしてそれを見た青年は焦げ茶の髪を揺らし、音も無く右手を素早く上げる。

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⏰:08/09/30 20:25 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#44 [英]
"

直後、透達とその後ろに隠れて居たエルフ達の背後から、多くの足音が響いて来た。

驚いて瞬きをした透が足音のする方へと振り返ると、そこには今まで姿を隠していたエルフ達が、焦りと混乱を顔に浮かべながら一斉に木々の陰から飛び出して来たのだ。


そしてそれを追う、およそ三十名程の兵士。
白を基調とした軍服に身を包んでいる彼らの手には、既に鞘から抜かれた剣が握られていた。

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⏰:08/10/07 02:18 📱:W53T 🆔:KO/lUya6


#45 [英]
"

「一人たりとも逃がすんじゃないよ!捕らえろ!!」


逃げ惑うエルフを鋭く睨み、女は兵達に号令を下した。――直後、目映い光が幾つも現れ、その光は一瞬にしてエルフ達を呑み込んでいった。

目を閉じていると言うのに、瞼を通り抜けて入り込んでくる程の眩しさ。

そして、光から出て来る風が吹き荒れる。台風並の強風に透の身体は飛ばされそうになるが、誰かが咄嗟に肩を押さえてくれたお陰で飛ばされずにすんだ。
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⏰:08/10/09 01:37 📱:W53T 🆔:F8yb.BUY


#46 [英]
"


「何だったんだ…今の光。それに風まで…」


光が止み、風も止んだ。
目映い光の所為でチカチカする目は何度瞬きしても、暫くの間治る事はなかった。それ程、強烈な光だったのだ。


「風属性魔法。……瞬間移動だ」


耳元で聞こえる声。
まだ違和感のある目を擦り、透は横へと顔を向けた。するとそこには後ろに居たはずの青年が透を支える様にしゃがんでいた。自分の肩に置かれている手を辿ってみればやはりそれは青年の手だった。

⏰:08/10/09 01:54 📱:W53T 🆔:F8yb.BUY


#47 [英]
"



この人が助けてくれたのか…。




異常な強風から助けてくれた青年に礼を言おうとするが、彼は直ぐに立ち上がり黒髪の女の元へと駆けて行ってしまった。

兵達もそれに続き、女と青年…そしてもう一人誰かを囲むように円形の空間をそこにつくった。

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⏰:08/10/14 22:25 📱:W53T 🆔:lkVeWgYQ


#48 [英]
"



「あれ…?」


そのもう一人は誰なのか。
それも気になったが、透は先程まで逃げ惑っていたエルフ達の方が気になった。

辺りを見回すが、エルフの姿は何処にもない。


青年がさっき言った瞬間移動が本当なら、彼らは一瞬にして遠くへと行ったのだろうか…。



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⏰:08/10/16 23:43 📱:W53T 🆔:VTNzq/cQ


#49 [英]
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「いやでも魔法だなんてそんな…」


ありえない、ありえない…呪文を唱えるかのように透は何度もそれを否定した。

すると兵達の中心から誰かが呼び掛けてきた。


「おーい、少年!」


少年って僕…の事かな?

そう思いながらも透は色々と考えている内に俯いてしまった顔を上げると、先程助けてくれた焦げ茶色の髪の青年が兵達の間からヒョコッと顔を出しているのが見えた。

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⏰:08/10/16 23:54 📱:W53T 🆔:VTNzq/cQ


#50 [英]
"
兵達の間をすり抜け、青年は透の前へと立った。


彼の容姿をちゃんと見るのは初めてで、透は上から下まで、相手を気にする事なくまじまじと青年を見ていた。

兵と同じ軍服を身に纏い、その上には白に赤の模様が入った薄手のコート。
日本人には絶対に無い真紅の瞳。そして同じ男である透でさえ言葉を失ってしまう程、端整な顔立ち。年は、二十歳前半だろうか…



「すぐに助けてやれなくて悪かった……えぇと…」

「…い、石川透ですっ」

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⏰:08/10/19 22:56 📱:W53T 🆔:HWydIyxs


#51 [英]
"

「イシカワ…トール?」


名前を教えれば青年は何度もイシカワ、と繰り返していた。



「あのっ僕の名前に何か…?」

「んぁ…いや、珍しい名前だと思ってな。それに最近…どっかで聞いた事あるような気がして…」



うーん…と唸りながら記憶を辿っている青年に、透を助けてくれたもう一人の人物が、深い溜め息を吐いた。

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⏰:08/10/23 13:32 📱:W53T 🆔:6h46YwUk


#52 [英]
"

溜め息が聞こえた方へと顔を向けると、凛とした瞳を持った女と目が合った。
気の強そうな女の表情は少し呆れが入っており、透を見た後直ぐに青年へとその目は向けられた。


赤い着衣に鮮やかな銀の胸当て。腰までの朱色のマントと共に揺れる、束ねられた漆黒の髪。

膝上まであるブーツで地面に散らばっている無数の矢を蹴り、二人の下へと歩んで来るとまた一つ、溜め息を吐いた。

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⏰:08/10/23 13:59 📱:W53T 🆔:6h46YwUk


#53 [英]
"

「フェルナート、イシカワってのはこの前突然城に現われた子の名と同じじゃなかったか?」


「……ああ!そうだミナトだ!」



女にフェルナートと呼ばれた青年はモヤのかかった名前と、その人物を思い出してスッキリしたのか思わず大声をあげた。

そんなフェルナートの言葉に、今度は透が大声をあげる番となった。


「イシカワミナトって……あ、兄貴いいいぃ?!!」


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⏰:08/10/23 14:12 📱:W53T 🆔:6h46YwUk


#54 [英]
"


いや、そんなまさか…


頭に浮かんだ兄、水人の顔を必死に消そうとするが、屋上で会った少女を思い出してやはりその人物は水人にしか思えなかった。

この二人の言うイシカワミナトは行方不明となった石川水人だと、証拠もなにも無いが、透は確信する。



声も出さずに呟いている透にフェルナートが何度も瞬きをして口を開いた。


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⏰:08/10/28 17:11 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#55 [英]
"

「えっと…トール、兄貴ってもしかして君…ミナトの弟?」

「はい」


一応、とつけ足すとフェルナートが訝しげに何やら透の顔をじっと見てきた。そんな彼に透は一歩後ろへと引いてしまった。


「フェルナート、その子気味悪がってるから止めなさい」

「リ、リィン様…すみません。ミナトと似てないもんだから…つい」

.

⏰:08/10/28 20:32 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#56 [英]
"

続けて透にも謝るフェルナートに、リィンと呼ばれた女は小首を傾げながら頭にクエスチョンマークを浮かべて言った。


「そうか?黒髪に黒目、顔つきは確かに似てないが…纏っている雰囲気と強い光を宿した瞳はそっくりじゃない」


.

⏰:08/10/28 21:37 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#57 [英]
"

そう言い微笑むリィン。
似ていないと言われ少々複雑な気持ちになった透だが、彼女の言葉にほんの少し、頬が緩んだ。



「リィン様、トールも城に連れて行きますか?」

「そうだな。…トール君」

「は、はいっ」


いきなり名前を呼ばれた透は驚いて大声で返事をしてしまった。
だがリィンはそれを気にせず、いつの間にか後ろに整列していた兵達の一人に目を向け指示をした。

.

⏰:08/10/28 23:12 📱:W53T 🆔:sDgFewC2


#58 [英]
すると兵は逃げないように木に繋げていた二頭の馬を連れて来た。
リィンとフェルナートがそれぞれ馬へと乗る。


「君の兄はこのウェルド王国の皇都、シェドリエの城に居る。私達はもう城に戻るが……共に行くか?」


馬上から問うとリィンは透を見据えた。彼女の瞳を見、透は唱える。



――この人達と一緒に行けば、兄貴に会えるんだ



…と。透は自分よりも高い位置に居るリィンを見上げ、頭を縦に振り頷いた。
真直ぐ返ってくる瞳に、リィンはふと小さく笑みを浮かべた。

⏰:08/10/29 00:38 📱:W53T 🆔:4VYFIbPc


#59 [英]
"


「フェルナート、トール君を後ろに乗せてあげなさい。私は――彼女を乗せなきゃならないみたいだからね」

「彼女…?」


リィンの言葉に透は呟く。
だがその呟きは荒れた兵士の怒鳴り声によってかき消された。


.

⏰:08/10/29 00:43 📱:W53T 🆔:4VYFIbPc


#60 [英]
"

「早く歩けと言っているだろう!!」

「ふんっ!誰がお前なんかの言う事聞くかっ」

「なんだと?!この小娘…!!」


言い争いをしている一人の兵士と少女。
その少女は人間のようで、人間ではなかった。鮮やかな金髪からのぞく長い耳は尖っていたのだ。


全く言う通りにしない少女に腹を立てた兵は、少女の両腕を縛った縄を強引に引っ張った。

縛られた腕で受け身などとれるはずもなく、少女は勢い良く顔から地面へと倒れ込んでしまう。


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⏰:08/10/30 01:03 📱:W53T 🆔:JYnd9VOg


#61 [英]
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「痛っ…何すんのよ!!」


キッと碧色の瞳を鋭くさせ、縄を握っている兵を睨む。だがそれはまた少女の身体を地面へと転げる事となった。

受け身をとれず、顔や服は土で汚れ、頬や顎に出来た傷からは血が滲んでいた。


何があったのかわからないが、これ以上見ていられなくなった透は二人の間に入ろうとした…が、それよりも早くリィンが馬上から口を開いた。


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⏰:08/11/10 21:08 📱:W53T 🆔:gEMIe2QA


#62 [英]
「もうよせ、その子は私が連れて行く」

「なっ何故ですかリィン様!この小娘はエルフ共全員を逃が――」

「アサト、列に戻れ」

「………はっ」



アサトと呼ばれた兵は言葉を遮られ、強い口調で言い放ったリィンに頭を深く下げてから後ろに並ぶ列へと戻った。
その戻る際、微かにだが下唇を噛み締めているのが見えた。そして一瞬、ギロリと横目でリィンとエルフの少女を睨んだのだ。



「……っ」


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⏰:08/11/10 21:55 📱:W53T 🆔:gEMIe2QA


#63 [英]
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別に自分が睨まれたわけでもないのに、透は怯み身動きが出来なくなってしまった。

強い、強い憎悪が感じられたからだろうか…

もう一度、彼を見るがもうそこには先程見えた瞳は無くなっていた。


気のせいだったのかと疑問に思っていると突然、透の身体が宙へと浮いた。それと同時に制服も上へと上がり、首を締められ苦しさが襲う。

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⏰:08/11/11 14:59 📱:W53T 🆔:gclhAZx.


#64 [英]
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「暴れるなよ」


頭上からフェルナートの声が聞こえたかと思うと、透の身体は更に高く宙へと上がった。
そして馬…フェルナートの後ろに乗っけられたのだ。

先程透を襲った苦しさは猫の首を掴んで運ぶように、フェルナートが制服の襟を掴んで持ち上げたものからだった。

「…僕、猫じゃないんですけど…」

「何度も呼んでるのに返事しないからつい」


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⏰:08/11/12 01:40 📱:W53T 🆔:BCLl.xUA


#65 [英]
悪い悪いと笑って謝るフェルナート。

そんなフェルナートから透は口角を歪めたが直ぐに元の表情にもどし、「暴れるな!」と叱咤されながらリィンの前に座らされているエルフの少女を見、口を開いた。



「フェル…ナートさん、あの子は…」



……もしかして魔法…瞬間移動が目の前で起こった後、兵やフェルナートさん、リィンさんらに囲まれていた人物なのだろうか。

⏰:08/11/12 02:03 📱:W53T 🆔:BCLl.xUA


#66 [英]
>>65訂正

二つ目の文、
《そんなフェルナートから透は口角を〜》

とありますが、

《そんなフェルナートに透は口角を〜》です。

⏰:08/11/12 02:15 📱:W53T 🆔:BCLl.xUA


#67 [英]
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お久し振りです。
長い間更新出来ず、申し訳ありませんでした。直ぐには無理ですが、今月中には更新開始しますので、よかったらまたお付き合い下さい*


>>2-65
>>68-100

⏰:09/06/05 15:31 📱:W53T 🆔:VGzKfMVo


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