Fantasy Story
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#35 [英]
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「汚らわしい王国の人間よ…“シュウレン様”を何処へやった…」

「教えろ、あの方は今…」

「早く…早く…」

「教えなければ、」


――殺す。


物騒な言葉、だけじゃすまない。
彼らの声はとても穏やかなものとは言えない。透は直ぐさまそんなもの知らない、と言い頭を横に振りたかったが、それすら出来ないぐらいに身体は竦んでいた。

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⏰:08/09/21 01:27 📱:W53T 🆔:dVBbJtIo


#36 [英]
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「やはり王国の人間は何処までも汚らわしい…」


もういい、他を当たろう。

その一言で周囲は冷たい空気に包まれた。また幾つもの鋭い光が木々の隙間に現れ、透へと向けられる。


ああ、こんなわけの分からない所で、理解出来ない事を言われて、僕は殺されてしまうのか…


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⏰:08/09/21 01:35 📱:W53T 🆔:dVBbJtIo


#37 [英]
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そんな事を思っている間にも無数の矢は透へと狙いを定められている。


何であの時授業をサボって屋上へと行ってしまったのだろうか。
あの子と出会っていなければきっとこんな事にもならなかった筈だ…



これから起こる事に耐え切れず、透は涙を流した。


「…まだ死にたくない…」


透の言葉は届かなかった。

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⏰:08/09/21 01:46 📱:W53T 🆔:dVBbJtIo


#38 [英]
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「放て!!」


誰か一人が合図を出せば、矢は一斉に射られた。

自分へと目掛けて飛んでくる矢に、そして迫りくる恐怖から逃れられず、声を出す事も忘れきつく目を瞑った。


刹那、透と無数の矢の間に二つの影が何処からともなく現われた。
前と後ろ。蹲る透を挟んでその影は立ち、飛んできた矢を的確に叩き落としていったのだ。


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⏰:08/09/24 01:18 📱:W53T 🆔:lWGJvETk


#39 [英]
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「此処はウェルドの地。貴様らエルフが何用だ!」


直ぐ側で高い女の厳かな声があがった。



――エルフ。
物語の中でしか存在しないはずの生き物。そして聞いた事の無い地名…

何が起き、そして突然現われた女が何を言っているのかわからず、透はきつく閉じていた目を恐る恐る開いた。


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⏰:08/09/25 01:41 📱:W53T 🆔:V0xX2K.6


#40 [英]
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目の前には細い足があり、上へと見上げると漆黒の美しい髪が一つに束ねられていた。

その人物の足元には先程まで鋭い光を放っていた矢が折れた状態で幾つも散らばっている。


「どうせまたシュウレン様とやらを返せって言うんだろう?」


女の声とは別に、今度は真後ろから溜め息混りの若い男の声が聞こえてきた。

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⏰:08/09/30 19:43 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#41 [英]
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「何度もしつこいね、アンタら。シュウレンってのはエルフ族の長だったはず……そんな奴が此処、ウェルドに居るわけないだろ」

「嘘だ!王国の人間は幾度と我々を騙してきた…もう人間の言葉など信じるものか!」

「でも本当に知らないんだけどな…」


どうしたものか、と困った声をあげる青年に、エルフの者は今まで以上に声を荒げた。

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⏰:08/09/30 19:58 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#42 [英]
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「我らは見た!お前らの王がシュウレン様を連れ去ったのを…!!」

噛み付くように叫ぶエルフに、透の目の前に佇んで居た女は手に握っていた細身の剣を姿の見えないエルフ達へと向ける。


「…でまかせばかり言うな!そのような嘘をついて貴様らはウェルドの民を殺したのか…っ」


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⏰:08/09/30 20:01 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#43 [英]
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「お前達のような偽りばかりの人間と一緒にするな!早く、早くシュウレン様を返せ!!」


お互いが違うものに対して怒りを感じ、言葉が噛み合わなくなってきた。

言葉と同時に放たれる一本の矢。
女は自分目掛けて飛んで来る矢に、そして自分達を囲んで居るエルフ達に苛立ちを抑え切れず小さく舌打ちをして矢を叩き落とした。


そしてそれを見た青年は焦げ茶の髪を揺らし、音も無く右手を素早く上げる。

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⏰:08/09/30 20:25 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#44 [英]
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直後、透達とその後ろに隠れて居たエルフ達の背後から、多くの足音が響いて来た。

驚いて瞬きをした透が足音のする方へと振り返ると、そこには今まで姿を隠していたエルフ達が、焦りと混乱を顔に浮かべながら一斉に木々の陰から飛び出して来たのだ。


そしてそれを追う、およそ三十名程の兵士。
白を基調とした軍服に身を包んでいる彼らの手には、既に鞘から抜かれた剣が握られていた。

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⏰:08/10/07 02:18 📱:W53T 🆔:KO/lUya6


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