Fantasy Story
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#41 [英]
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「何度もしつこいね、アンタら。シュウレンってのはエルフ族の長だったはず……そんな奴が此処、ウェルドに居るわけないだろ」

「嘘だ!王国の人間は幾度と我々を騙してきた…もう人間の言葉など信じるものか!」

「でも本当に知らないんだけどな…」


どうしたものか、と困った声をあげる青年に、エルフの者は今まで以上に声を荒げた。

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⏰:08/09/30 19:58 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#42 [英]
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「我らは見た!お前らの王がシュウレン様を連れ去ったのを…!!」

噛み付くように叫ぶエルフに、透の目の前に佇んで居た女は手に握っていた細身の剣を姿の見えないエルフ達へと向ける。


「…でまかせばかり言うな!そのような嘘をついて貴様らはウェルドの民を殺したのか…っ」


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⏰:08/09/30 20:01 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#43 [英]
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「お前達のような偽りばかりの人間と一緒にするな!早く、早くシュウレン様を返せ!!」


お互いが違うものに対して怒りを感じ、言葉が噛み合わなくなってきた。

言葉と同時に放たれる一本の矢。
女は自分目掛けて飛んで来る矢に、そして自分達を囲んで居るエルフ達に苛立ちを抑え切れず小さく舌打ちをして矢を叩き落とした。


そしてそれを見た青年は焦げ茶の髪を揺らし、音も無く右手を素早く上げる。

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⏰:08/09/30 20:25 📱:W53T 🆔:vKD6JVY6


#44 [英]
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直後、透達とその後ろに隠れて居たエルフ達の背後から、多くの足音が響いて来た。

驚いて瞬きをした透が足音のする方へと振り返ると、そこには今まで姿を隠していたエルフ達が、焦りと混乱を顔に浮かべながら一斉に木々の陰から飛び出して来たのだ。


そしてそれを追う、およそ三十名程の兵士。
白を基調とした軍服に身を包んでいる彼らの手には、既に鞘から抜かれた剣が握られていた。

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⏰:08/10/07 02:18 📱:W53T 🆔:KO/lUya6


#45 [英]
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「一人たりとも逃がすんじゃないよ!捕らえろ!!」


逃げ惑うエルフを鋭く睨み、女は兵達に号令を下した。――直後、目映い光が幾つも現れ、その光は一瞬にしてエルフ達を呑み込んでいった。

目を閉じていると言うのに、瞼を通り抜けて入り込んでくる程の眩しさ。

そして、光から出て来る風が吹き荒れる。台風並の強風に透の身体は飛ばされそうになるが、誰かが咄嗟に肩を押さえてくれたお陰で飛ばされずにすんだ。
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⏰:08/10/09 01:37 📱:W53T 🆔:F8yb.BUY


#46 [英]
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「何だったんだ…今の光。それに風まで…」


光が止み、風も止んだ。
目映い光の所為でチカチカする目は何度瞬きしても、暫くの間治る事はなかった。それ程、強烈な光だったのだ。


「風属性魔法。……瞬間移動だ」


耳元で聞こえる声。
まだ違和感のある目を擦り、透は横へと顔を向けた。するとそこには後ろに居たはずの青年が透を支える様にしゃがんでいた。自分の肩に置かれている手を辿ってみればやはりそれは青年の手だった。

⏰:08/10/09 01:54 📱:W53T 🆔:F8yb.BUY


#47 [英]
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この人が助けてくれたのか…。




異常な強風から助けてくれた青年に礼を言おうとするが、彼は直ぐに立ち上がり黒髪の女の元へと駆けて行ってしまった。

兵達もそれに続き、女と青年…そしてもう一人誰かを囲むように円形の空間をそこにつくった。

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⏰:08/10/14 22:25 📱:W53T 🆔:lkVeWgYQ


#48 [英]
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「あれ…?」


そのもう一人は誰なのか。
それも気になったが、透は先程まで逃げ惑っていたエルフ達の方が気になった。

辺りを見回すが、エルフの姿は何処にもない。


青年がさっき言った瞬間移動が本当なら、彼らは一瞬にして遠くへと行ったのだろうか…。



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⏰:08/10/16 23:43 📱:W53T 🆔:VTNzq/cQ


#49 [英]
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「いやでも魔法だなんてそんな…」


ありえない、ありえない…呪文を唱えるかのように透は何度もそれを否定した。

すると兵達の中心から誰かが呼び掛けてきた。


「おーい、少年!」


少年って僕…の事かな?

そう思いながらも透は色々と考えている内に俯いてしまった顔を上げると、先程助けてくれた焦げ茶色の髪の青年が兵達の間からヒョコッと顔を出しているのが見えた。

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⏰:08/10/16 23:54 📱:W53T 🆔:VTNzq/cQ


#50 [英]
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兵達の間をすり抜け、青年は透の前へと立った。


彼の容姿をちゃんと見るのは初めてで、透は上から下まで、相手を気にする事なくまじまじと青年を見ていた。

兵と同じ軍服を身に纏い、その上には白に赤の模様が入った薄手のコート。
日本人には絶対に無い真紅の瞳。そして同じ男である透でさえ言葉を失ってしまう程、端整な顔立ち。年は、二十歳前半だろうか…



「すぐに助けてやれなくて悪かった……えぇと…」

「…い、石川透ですっ」

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⏰:08/10/19 22:56 📱:W53T 🆔:HWydIyxs


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