短編集
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#1 [◆LOSh2yD9/c] 08/09/21 01:51
気ままな短編集

#279 [◆LOSh2yD9/c]
俺の言葉に奴は大きな溜め息を吐いた後、淡々と喋り出した。

「お前が"画家の俺"も"名家の俺"も知らないなら知らないで別に良かった。それに、お前の行動の意味は大体予想はついていた。」

俺は今だに状況が理解出来ていないままだったが、とりあえず黙って話を聞いた。

「俺は、普通の人間として接してくれた方が良い。俺を特別視しないでくれたのは、お前とエリサと、亡くなった親友だけだ。だから、俺はもう大事な人を失いたくないんだよ…」

「……慧弥さんの言いたいことは、何となくわかりました。でも、そもそも俺とは次元が違うって言うか、住む世界が全然違うんですよ!だから俺みたいな一般庶民が関われる人じゃないし、あり得ないんです!!」

⏰:10/08/31 02:02 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#280 [◆LOSh2yD9/c]
「もう遅い。お前は俺に関わっちまった。只で帰れると思うなよ」

「はいいいいっ??!!!」

「冗談だ」


…〜〜っテンメーッッッ!!!


「まぁ冗談はさて置き、此処まで乗りかかっちまったんだ、全部話すから最後まで付き合ってくれよ」

「はぁ…?」

俺は曖昧な返事をした。

相変わらずこいつは訳わからん奴だ。

⏰:10/08/31 02:05 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#281 [◆LOSh2yD9/c]
―――――――――



俺の父は指揮者で指導者。母はバイオリニスト。姉はピアニストで旦那もピアニスト。
ちなみに祖父たちも元指揮者とか、みんな音楽関係な訳。

そんな音楽一家に生まれた俺の下には、もちろん音楽家へのレールが引かれていた。

音楽に関することは勿論、色んなスキルを身に付けさせられた。

物心ついた頃にはもう音楽は俺の一部だったな

⏰:10/08/31 23:57 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#282 [◆LOSh2yD9/c]
毎日毎日ピアノやバイオリンの練習…
でもそんな生活は嫌いじゃなかった。
姉の影響もあってか、ピアノは好きだったから

ああ、勿論学校も音楽学校だった
小から高校まで一貫の

でも、ある時気付いたんだ。
俺は絵を描くことが好きなんだって。

最初は只の暇潰しから
段々ピアノよりも何よりも楽しくなっていたんだ。

……思えば寂しかったのかもな
両親は多忙で、使用人はいたが広い家に独りきり
姉とは8つ離れていたから、俺がまだ餓鬼の頃にはもう世界中を飛び回っていて、姉が二十歳になったら結婚したからな

⏰:10/09/01 00:00 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#283 [◆LOSh2yD9/c]
いつも窓の景色をぼけーっと見てた。
次第にその風景を描いてみたいと思った。

…ははっ
初めはすげー下手くそでさ、自分で描いてて苛々したよ。
全然上手くいかねーの

習い事においてこんな挫折感?っての味わったことなかったから、余計熱中しちゃったって言うかさ、そんな感じでどんどん嵌っていった。

でも当然親はそれを許さなくて、特に父は大激怒してさ。スケッチブックとか一式全部没収されたこともあった

初めはすげーショックだったけど、仕様がないって言い聞かせた。
俺は音楽の道で頑張ろうって…

⏰:10/09/01 00:04 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#284 [◆LOSh2yD9/c]
……でもやっぱり、どうしても絵を諦めることが出来なかった。

俺は音楽の勉強をする傍ら、親の目を盗んで絵の勉強もした。
誰にも教えを請う訳にもいかなかったから本当、独学だったなー…

まぁ姉にはすぐバレたんだけどね
でも姉は俺の絵を褒めてくれた
それがすげー嬉しかった


高3になって進路の話が浮上した頃には、俺の心はもう決まっていた。

画家になりたいと。


反対されることはわかっていた。

⏰:10/09/01 00:08 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#285 [◆LOSh2yD9/c]
それを話したら、やっぱり父は猛反対していたよ。
ついでに周りの大人もね

でも母は俺の気持ちに薄々気付いていたみたいで、助け舟を出してくれた。

夏にある絵画のコンクールで最優秀賞を取ること。そうしたら考え直すと。

父は渋々承諾した。
音楽コンクールは勿論のこと、全国模試一位もと付け加えたがな


それからが大変だったな
俺の人生の中で一番頑張った時だと思うぜ

本当必死だったなー…

今だから笑えるけど。

⏰:10/09/01 00:10 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#286 [◆LOSh2yD9/c]
でまー結局俺の才能と努力の結果、全てクリアした訳だが父は最後まで認めなかったな

今でこそ少しは認めてくれているとは思うけどさ


―――――――――

「ここまでが前置き。長かったろ?これからもっと長くなるけど、何か不明な点は」

慧弥さんはそこまで話すと紅茶を一口飲み、ふっと小さく息をついた。

「…………えと、壮絶な幼少期を過ごされたんで「感想じゃねー質問だ質問!」

ひぃ〜

⏰:10/09/01 00:14 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#287 [◆LOSh2yD9/c]
「いやあの正直、ツッコミ所満載で……」

「は?」

「坊ちゃんは坊ちゃんでも、俺たちみたいな一般人にはわからない所で色々苦労してるんだなぁって…」

「………」

「ってすみません感想になってますよね?!」

「…ばーか」

そう言って慧弥さんははにかんだ。

⏰:10/09/01 00:16 📱:F906i 🆔:☆☆☆


#288 [◆LOSh2yD9/c]
生まれながらの才能があったのに、慧弥さんは自分が好きな道を選んだんだ

そして努力と言う名のもう一つの才能で、未来を切り開いたんだ…

今は笑ってるけど俺には想像出来ないような努力や苦労があったんだろうな

音楽一家の名家に生まれた慧弥さんにとって、画家を目指すには障害が多かったことぐらい、一般庶民の俺にだって容易に想像が出来る。

「じゃ、続きな」

俺の思考は慧弥さんの言葉によって遮られた。

そして俺は、再び慧弥さんの話に耳を傾ける。

⏰:10/09/01 00:19 📱:F906i 🆔:☆☆☆


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