access 〜フロッピーディスクに消えた少女〜
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#1 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA] 08/10/05 07:51
access[アクセス]
・利用できること、利用する権利、インターネットやデータなどへのアクセス、アクセス権。
・入る方法、近づく方法。
チャレンジ英和辞典ー第四版ー
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#53 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
もしもそうだとしたら、この星々はなんて儚くて、虚しくて、悲しいのだろう。
不意に、隣部屋のベランダから物音がした。
僕は何気なくそちらを見て、目を丸くした。
そこにはカーディガンを羽織って白い息を吐く、懐かしい顔をした女性。
竹内芽衣子がいた。
:08/11/03 20:20 :L704i :RxopXXTA
#54 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「竹内さん?」
僕は恐る恐る声をかける。
竹内芽衣子がこちらを向いた。
彼女も驚いたように目を丸くした。
「……彰くん?」
いつも脳内で再生されていた懐かしい声。
:08/11/03 20:21 :L704i :RxopXXTA
#55 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
間違いなく竹内芽衣子のそれだった。
「やっぱり竹内さんだった。もしかしたらって思って、声がけてみたんだ」
心なしか声が震えた。
竹内芽衣子は口に手をあて、形のよい目を細めて笑顔をほころばせた。
それは彼女にとっての驚愕の意を表す仕草だと理解した。
:08/11/03 21:07 :L704i :RxopXXTA
#56 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「信じられない。大学が同じで、ううん、……それよりも半年近く部屋が隣り合わせだったなんて驚いた! ……びっくりしちゃって、なんて言えばいいのか分からないよ。とりあえず、久しぶり! 彰くん!」
僕達は、部屋別にベランダを遮る低く薄いフェンス越しに握手を交わした。
彼女の温もりが手のひらに網をはる神経から脳へ伝わる。
そして、柔らかくて優しい彼女のベールが僕を包み込み、例えようのない安心感を与えた。
:08/11/05 16:54 :L704i :qUyBkm1k
#57 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
僕はこの時を、一年近く待っていたにちがいない。
「私ね、センター試験が終わってからずっと、母の看病をしていたの」
竹内芽衣子はベランダの柵にもたれ掛かるようにしてこちらを見ながら言った。
僕もだいたい同じような格好をとっていた。
:08/11/06 21:01 :L704i :12S986y.
#58 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「母がいきなり癌だって言われちゃってさ。しかも末期。
悲しくて、どうしようもないくらいに悲しくて、何もしてあげられない自分が悔しくて。
母は気丈に振る舞ってはいるけれど、私、どうしてあげたらいいのか、何してあげたらいいのか分からなくて……。
毎日泣いてばかりいたよ。
母の方がよっぽど辛くて苦しいのに、私、本当な駄目な娘だよね」
僕は黙って話を聞いていた。
:08/11/06 21:02 :L704i :12S986y.
#59 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
彼女は、竹内芽衣子は、幸せな人生を送っていると信じていた。
自分だけが不幸だと信じていた。
そんな自分が恥ずかしくてたまらなくなり、彼女の顔を直視できずにいた。
彼女は濡れた目をこちらに向けて微笑んだ。
:08/11/07 15:39 :L704i :5YPUsECA
#60 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
「実は、私も高校時代に子宮癌になっちゃって、子宮をまるごと摘出したの。
術後は痛くてずっとうめいていたし、リハビリも大変だった。
そんなときにね、私、ずっと人間の死について考えてた。
どうして人間は死んじゃうんだろう。死んだらどうなっちゃうんだろう、って。
そしたらね、だんだん死ぬことが怖くなってきたの。
死は逃れることのできない、暗くて深い無なんだって、気づき始めたからだと思う……」
:08/11/23 19:46 :L704i :3p1ALRO2
#61 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
無。
この世に生を受けた人間は大抵がそれを忌み嫌い恐れている。
しかし僕には死を恐れる者の気持ちが分からない。
死とは生と表裏一体。
エンドでありスタートでもある。
:08/11/23 19:47 :L704i :3p1ALRO2
#62 [神崎もえ子◆Hi9o8eIXuA]
人間の生まれる前の意識、そして死んだ後の意識、それが無である。
君は生まれてくる前のことを恐ろしく思うのか?
君は死んだ後のことを恐ろしく思うのか?
これは違うようで同じ質問である。
:08/11/23 20:23 :L704i :3p1ALRO2
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