クリームソーダ

あたしって何なん？
あたしやって人間やで

お願いやから、

お願いやから
誰かあたしを愛して

「は？！

…敬斗何やってるん？」

店の制服を来た敬斗が
トレーの上にクリームソーダ
を乗せていた。

「ははっ。
俺ここでバイトしてる
だから前もここに連れてきた。

クリームソーダ、
気に入ったんか？」

えっ…
そういえばあたし、
これは昔の家族を
思い出すだけやのに
何故か頼んじゃった。

なんでやろ…

そっか…。
あたしは敬斗の体温が
忘れられへんくて、
あの時敬斗と飲んだ
クリームソーダを
飲みたくなったんかも。

「はっ、ちゃうし。
一番安かったから！」

“敬斗を思い出したくて
飲みたくなった”
なんて言えるはずなくて
ムキにこんなん言った。

そしたら敬斗は

“オレンジジュース
のが安いけどなぁ”

って笑い、

「俺あとちょっとで
上がるからクリームソーダ
飲んでまっとけよ！」

なんて強引な言葉を残し、
カウンターに戻っていく。

クリームソーダ。

シュワシュワした中に
甘さが広がる。

へへっと、柄にもなく
笑ってしまう。

美味しいから？
この後敬斗と
会えるから？

そんな疑問を持ちながら
敬斗が終わるのを待つ。

「待たせてごめんな。
どこ行く？」

敬斗はやっぱり
背、高いなー。

「なんやねん？
そんな見とれんなや。」

「はい？
ちゃうわ！
どこでもいいし。」

「素直やないなぁー。
ほんなら俺んち来るか？」

「えっ、いいん？」

「おー。すぐやし」

そう言ってあたし達は
敬斗の家へ向かう。

着いた先は８階建ての
キレイなマンションやった。

「おじゃまします」

「おう。誰もおらんで」

「誰もおらんの？」

「俺一人暮らしやから」

その時、敬斗から見えた
寂しげな微笑みを見逃さなかった

「えっじゃあ麻奈んち
このへんなん？
ってか何で一人暮らしなん？」

「えーっとなぁ、
実家が麻奈と隣の家で。
前麻奈が俺んち来たとか
言ってた時はたまたも
荷物取りに帰っててん。」
「へえー。
そうなんや」

敬斗が何で一人暮らし
してるんか、
聞いたらアカン気がして
それ以上は聞かんかった。