漆黒の夜に君と｡[BL]

｢会いたかった‥‥ずっと‥‥───｣

俺は目の前の光景に唖然とした。

だってそこには恭弥に抱きつく優里の姿があって。

｢久しぶりだね。元気だった？｣

おい、待て待て。
なに頭とか撫でちゃってんの？ねえ。

むかつく…。

胸の奥から湧いてくるそのなんとも言えない腹立たしさに、俺は暫くの間何も言えずただその光景を睨む事しか出来なかった。

｢‥‥て言うか、優里いつから帰ってきてたの？｣

｢‥‥‥‥‥、一昨日。｣

｢一昨日？！お前、もしかして抜け出して来た？｣

｢‥‥‥‥‥。｣

｢お前なあ‥‥ダメだろ？｣

｢だって‥‥‥っ｣

２人の会話の意味が全く
分からない。

抜け出すだの、なんだのって‥‥

なんか余計疎外感感じるんだけど。

｢とりあえず帰ろ。話はそれから。｣

｢い､いやっ!!!!｣

顔を大きく横に振る優里を見て、恭弥は一度ため息をついて言った。

｢黙っててあげるから。｣

その瞬間、優里の顔はパッと明るくなった。

｢冥、行こ？｣

差し伸べられた片手がやけに嬉しかった。

｢うん‥｣

その手を掴もうとした瞬間かなり鋭い視線を感じ、結局握る事もないまま俺達は教室を後にした。

｢｢おかえりなさいませ｣｣

やっぱりこう大人数から一度に言われると緊張するなあ…

なんて事を考えながら恭弥の斜め後ろをちまちまとついていく。

俺の部屋の前に着いたところで、

｢じゃ､また夕食の時にね｡｣

と、それだけ言って優里とどこかへ言ってしまった。

俺はベッドに倒れるように身をなげて、枕に顔を埋めた。

｢あー‥‥なんだよ、もう…っ｣

独り言は虚しく室内に響くだけ。

どうしようもない苛立ちが俺を苦しめる。

なんか独り占めされてるみたいで、むかつく…

馬鹿みたいだよな。

｢はぁ…｣

それからどれくらい経っただろうか。

｢冥様、食事の用意が出来ました。｣

ｺﾝｺﾝと言うノック音と共にドア越しでメイドにそう言われて、俺はムクリとベッドから起き上がった。

１人とぼとぼといつもの部屋へと歩いていく。

中に入ると既に恭弥と優里の姿があった。