つまらない話

その日は見間違いだと思った。

でも見間違いじゃなかった。

女の人はふとした瞬間に何度も現れた。
もう一度見てもそこには居ない。

いつも顔はよく見えない。

大きめの帽子を被って白いワンピースを着てる。

それだけははっきりとわかった。

いつものように友達と遊んでいたけど、あの日は一人で帰っていた。

一人で自転車をこぐ。
もう少しで家に着く。

その時あたしは見た。

積載車？に積まれた廃車の中の一台に、あの人が乗っていた。

目が合った。

その瞬間、ゾワッとした。

あの女の人はあたしを見てニヤッと笑った。

一瞬の出来事だったけど、確実に笑っていた。

怖くなり急いで自転車をこいで家に帰ったのを覚えている。

その後も女の人はあたしの前に何度も現れた。

年に数回。

最後に見たのは確か18か19くらいの時だった気がする。

16歳の時、友達と夜景を見に行った時の事。

最初は夜景を見ながらｷｬｯｷｬｯしてた。

でも段々視線を感じるようになって、物凄く嫌な感じがした。

ふと近くのガードレールの方を見てゾッとした。

ガードレールと地面の間から小学生くらいの女の子がこっちを見ていた。

物凄く恐ろしい形相で。

怯えるあたしを見て友達は急いで車を発進させてくれたけど、女の子を見た場所からしばらく離れるまでずっと視線を感じ続けた。

とくに何事も無く帰れたけど。

夜中に女の子が山の中にいるのはおかしいし、何よりもガードレールの先は小さな崖みたいになっていて登る事も子供がぶら下がる事も不可能。

その１年後くらいに友達があたしが体験した話はせずに霊感がある子と一緒に同じ場所へ行くと、その夜景が見える場所に近付くに連れて霊感がある子はブツブツと何かを言い出したらしい。
話し掛けても揺らしても返事も反応も無し。

危険を感じて夜景の見える場所には寄らずにそのまま帰ったとの事。

正常に戻ったその子に聞いた所、『数人いた』『足を欲しがってた』『子供もいた』と言っていたらしい。

見間違いだと思いたかったけど、本当にいたみたい。

数年後にまたあの場所に行ってみたけど、前ほど嫌な感じはしなかった。

ただ、最初は気付かなかったけど、夜景を見ていた真後ろには細長い階段があって、その先には夜で街灯もないのにはっきりと見える鳥居があった。
怖くて階段を登る気にはなれなかったけど…