好きだから｡

｢妹みたいにしか見えないわ｣

初恋は片思いだったみたい。１年半付き合ってこれが彼の出した答えだと納得できるほど、あたしは大人じゃなかったよ。

　

｢ねぇ､ユウト！また遅刻だよ？｣
｢シズカ、おはよ。今何時？え、やばくね？もっと早くモーニングコールしろよな。｣

｢いやいや、あたし１時間前から鬼電してるし。｣

こんな言い合いはしょっちゅうで、１年半もすれば慣れっこだった。月曜日から金曜日まで毎日彼氏のユウトを起こすのがあたしの朝の日課。

ユウトを起こしてやっとあたしは学校に出発。ユウトが起きなくて何回か遅刻もしたけど好きな人を起こせるのがなんとなく嬉しくて。
　

　

｢うっわ。教室寒くね？｣

毎日駅で待ち合わせして学校まで無駄に盛り上がりながら一緒に歩いてる相手は同い年で中２のリナ。色が真っ白で目はぱっちり。スカートはもちろん短くて所々メッシュのエクステ。見た目はもろモテます！って感じ。

あたし？あたしは地味。親も厳しいし先生に逆らえるほどませてもないからね。
　

　

｢うわ。まじだ。ちょ、早くリナ室温あげて！｣

｢待ってー。スカート長くしなきゃ顧問にバレたらやばいし！｣

｢なら朝から長くしたら？｣

なーんて担任の話を無視して教室の後ろで朝ごはんのおにぎりを食べるのが私たちの日課。
　

　

｢つかさー、リナすきな好きな人できたんだよね。｣

｢どんな人？｣

｢１つ年上でスポーツしてる人だよ。サトシって言う。｣

｢ふーん。で？写メは？｣

毎日恋ばなだってする。すきな人からメールがきたとか、今日デートだとか、最近いい人がいないとか。

でも基本的にあたし自身のことは話さない。話しても何もかも幸せなふり。

だってね、恋がこんなに苦しいなんてリナは経験してない。だからあたしが辛いのは気のせいなんだって思い込みたかったの。

　

　

私がユウトと知り合ったのは今から１年半前。たまたま親に頼まれた買い物をしてるときに派手に転んでそのときに助けてくれたうえに落ち着くまで隣にいてくれたのがユウト。

見た目はちょっと今時だけど２つしか離れてないようには見えないくらい落ち着いて見えた。

その日連絡先を交換したんだけど、なにせそれがあたしの初恋。

いままで全く異性と関わりがなかったわけじゃないけど、学校が女子校だから学校での出会いはないしほんとに限られた繋がりしかなかったから連絡先を交換しただけであたしは興奮。

　

　

メールなんて変えそう。
このメールおかしくないかな？
あ、電話。緊張するな。

こんなことを毎日繰り返してやっとなれてきた頃、会いたいと言われデートをすることに。

｢やっば、私服なんてかわいいの持ってないし…｣
そんなの気づく頃にはすでに遅かった。日にちや場所時間まで決まってしまった。

もちろんそれからは大忙し。
服どんなの買う？化粧濃くした方が大人っぽい？靴は何履こう。
学校が終わって家についた瞬間からユウトとデートすることしか頭になかった。
　