○最後の四季○
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#1 [ゆり]
なんの迷いもなく

濁りもない

想いをくれた。


そんな
あなたが
とても

とても

好きだったけれど。

⏰:06/08/31 13:27 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#2 [ゆり]
バタン

いってきますの
挨拶もなしに
あたしは家を出る。

だって誰もいないし。


両親が別居始めて
もう2年か。
 

⏰:06/08/31 13:28 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#3 [ゆり]
バイトまでの道程。
一人歩く。

今日も空は変わらないし
でも風が少し強い。

こうやってまた
夏が終わって
秋が来るんだ。


「あ〜ぁ…」

何に対してか
わからないけど
溜め息が出る。

⏰:06/08/31 13:29 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#4 [ゆり]
バッチリ髪を巻いて
ヒールを鳴らして歩いても

最近あたしは
いつもこんな感じだ。


満たされないまま
何を求める訳じゃなく
失う事も出来ないでいる。
 

⏰:06/08/31 13:38 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#5 [ゆり]
2週間前から
パチンコ屋でバイトを始めた。
理由は
まぁ-お金。

キャバは彼氏の隼人に止められたし

なんだかんだで
夜の仕事をする程度胸はないし。

ちょ-ど近くにあったパチ屋に決めたんだ。

隼人は渋りながらも
頑張れよって言ってくれてる。
 

⏰:06/08/31 13:39 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#6 [ゆり]
夜12時まで
バイトをして

煙草を吸わないあたしは
バイトの皆と溜まる事もなく
さっさと着替えて
店を出る。


「高原さん」

低い声で
名前を呼ばれて
振り返る。

同じバイトの大橋くん。
少しパーマ掛かった茶色い髪が
昔好きだった人に似てる。
 

⏰:06/08/31 13:41 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#7 [ゆり]
「送ってく。
乗りなよ。」

「ほんと?
ありがと。」

薬指が輝く手で
車のドアを開けてくれる。

あたしの薬指にも
違う輝きがある。


「わざわざ
ごめんね。」

「近いし
全然いいよ。」

隼人が
こんな風に
女の子車に乗せてたら

あたしはたぶん
泣くだろーな。

とか思いながら
助手席に座る。
 

⏰:06/08/31 13:42 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#8 [ゆり]
こんな所見たら
隼人も泣くんかな。


でも夜道をさ
一人で歩いて
何かあるよりは
いいじゃん?

なんて
言い訳してみたり。
 

⏰:06/08/31 13:45 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#9 [ゆり]
近いから
すぐに家の前。

「お疲れさん。」

「ありがと。」

ガチャッ

車からおりて
笑顔を作って
「おやすみ。」


何食わぬ顔で
真っ暗な家の鍵を開ける。
 

⏰:06/08/31 13:48 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#10 [ゆり]
飼ってるにゃんこが
あたしの足に纏わり付く。
こいつはほんと
あたしと違って
可愛いな。

キャットフードを
お皿に流し入れ

隼人にただいまのメール。

隼人からおかえりのメール。
 

⏰:06/08/31 13:50 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#11 [ゆり]
変わらない
繰り返し。

平凡で単調な
こんな毎日を
きっと

幸せって
呼ぶんだろうね。


でも
あたしは弱くて
悪い女。


あの日から。
あたしは変わってしまったんだ。
 

⏰:06/08/31 13:51 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#12 [ゆり]
隼人と付き合って
2年を迎えた夏。


何気ない
当たり前の日々が
幸せだった。

あたしは。


隼人はそう思ってなかった?
幸せはもう
あんたにとっては
当たり前に
なっていたのかな。
 

⏰:06/08/31 13:55 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#13 [ゆり]
「ゆり!これ可愛くね?」

「うーわ…それはないわ」


この日は車で
アウトレットに来ていた。
メンズの服を見てる。

相変わらず
隼人の好みはおかしい。
 

⏰:06/08/31 13:56 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#14 [ゆり]
「だいたいさぁ〜
可愛いじゃなくて
カッコイイ視点で選ぼーよ」

腕を組みながら
呆れ返るあたし。
よくある光景。


「え〜可愛いじゃん…」

「ハイハイ。
あ、このTシャツかっこいくない?」
隼人に合わせてみる。 

⏰:06/08/31 13:58 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#15 [ゆり]
「あ〜かっけ-!似合う?♪」

「似合う似合う。」
(だからあのダサイキャラTはやめて)

「惚れる?♪」

「惚れる惚れる。」
(だからこれにして)

「まじで?♪
でもさっきのも可愛くない?」

「はーいコレに決定!
買ってこい!」
 

⏰:06/08/31 13:59 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#16 [ゆり]
バシッと叩くと
ゆりチャン冷た-いとか
ブツブツ言いながら
レジに向かって歩いて行った。


向かう途中で
携帯を見てた。


最近やたら
携帯ばっかり見てる。

普通に
カンだけど
なんかあるよね。
 

⏰:06/08/31 14:01 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#17 [ゆり]
あ-あ。
浮気ですか?
勘弁して下さいよ。


あたしは隼人に
過去に一度
体の浮気とかじゃないけど
信用を壊された事がある。

だから
トラウマ。

もう
裏切られるのは
嫌だし
傷付くのも
嫌。
 

⏰:06/08/31 14:03 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#18 [ゆり]
「ゆりチャン!おまたせ〜」

「いいのあって良かったね♪」


周りから見れば
色黒な男と
色白な女が
その場限りの恋をして
手を繋いで歩いてる。

そんな風にしか
見えないだろうけど

実際
いろいろあるんです。
こんなうちらにだって。
 

⏰:06/08/31 14:06 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#19 [ゆり]
ファ-ストフード店で
飲み物を買って
席に座る。


また
隼人が携帯を気にする。

「ねぇ」

あたしの声に
携帯から視線を上げた。

「ん?」

「誰とメールしてるの?」
 

⏰:06/08/31 14:09 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#20 [ゆり]
不安をごまかす様に
あたしはグラスの氷を
ストロ-で突きながら聞いた。


「着うたとか見てるだけだよ!」

あらら。
そんな言い訳?
頭悪いなぁ。
 

⏰:06/08/31 14:10 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#21 [ゆり]
「最近急にだよね。
携帯ばっか気にして
どーかした?」

笑いながらゆったけど
怖い笑顔だっただろーな。


「どうもしないって!笑
新しい着うたあるかな-とか見てただけだし!」
 

⏰:06/08/31 14:12 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#22 [ゆり]
「…ふーん。」


あーあ。
やっぱ何かある。
悔しい。
ムカつく。
あたしに嘘つくなんて
たいした度胸だなちくしょ-。
 

⏰:06/08/31 14:13 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#23 [ゆり]
「携帯見せて。」


あちゃー
言っちゃいました。
今まで20年生きてきて
一度も言わなかった台詞。
 

⏰:06/08/31 14:16 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#24 [ゆり]
変なプライドがあるあたしは
相手の全てを知りたがる事を
ずっと出来ずにいた。

そこまでのめり込んでるって
思わせたくないから。

男を調子に乗らせない。
安心させない。

猫みたいに気まぐれな
微妙な距離を保つのが
あたしの付き合い方だった。
 

⏰:06/08/31 14:20 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#25 [ゆり]
でもとりあえず
そのプライド捨てました。

だって
気になる。


「えーなんもないって!笑」

「じゃあいいじゃん
見せてよ」

手を出して催促する。

「ほら!サイト見てるだけだよ!」
 

⏰:06/08/31 14:22 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#26 [ゆり]
いやいや。
そんなとこから
サイトが映った
携帯の画面見せられてもね。


あたしが見たいのは
メールですから。


でもこれ以上は
無理だ。

あープライドめ。
捨て切れなかった。
 

⏰:06/08/31 14:24 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#27 [グミ]
ゆりチャンだぁ。
前の話も、隼人クンの話も読ませてもらったよ。今回も続き気になっちゃう。ガンバってね☆

⏰:06/08/31 17:00 📱:N901iC 🆔:☆☆☆


#28 [ゆり]
グミチャン☆
読んでくれてありがとォ(^-^)少し更新します☆

⏰:06/08/31 20:51 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#29 [ゆり]
「あっそ。」

もうやめた。
意味ないや。

なんかあるって
わかっちゃったし。


隠すなら
もっとマシな嘘で

もっと上手く
隠してよね。

バカ男。
 

⏰:06/08/31 20:53 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#30 [ゆり]
「まじなんもないよ?!」
笑いながら
隼人が焦る。

「わかったよ」
いつも通りの
あたし。

「も〜…怒らんでよー」

「…」

一気にウーロン茶を
飲み干して
席を立った。
 

⏰:06/08/31 20:54 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#31 [ゆり]
「行こ!」

気にしてない
そぶりは出来ても

笑顔で許せる程
かっこよくは
なれない。


「ゆり待ってよ〜」

隼人は膨れっ面で
あたしの手を取る。

振り払いたいけど
我慢我慢。
 

⏰:06/08/31 21:22 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#32 [ゆり]
「あたしも服見る〜ッ」

「うん♪
あっちの方
ゆりの好きそーな店
いっぱいあったよ!」

「じゃ-連れてって☆」

隼人は嬉しそうに
本当に嬉しそうに
笑って

あたしの肩を抱いて
歩き出した。
 

⏰:06/08/31 21:23 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#33 [ゆり]
この日は青い空が
果てしなく広がっていて

暑い夏の
日差しも強くて


隼人はあたしの日焼けを
気にしてくれていたね。

日影を探して歩いてくれたり

大きな手で
日が当たらない様にしてくれたり。
 

⏰:06/08/31 21:28 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#34 [ゆり]
そんな
無条件の優しさは

もういらないから


信用だけは
壊さないで
欲しかった。


あたしはあんたと
一緒に居られたら

それだけで
幸せだったんだよ。
 

⏰:06/08/31 21:29 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#35 [ゆり]
あたしの買い物を済ませて
アウトレットを出た。


帰り道の途中
洋食屋さんで夕飯を食べていた時

なにがどうなってかは忘れたけど

隼人が他の女の子と
メールしてたのが発覚。
 

⏰:06/08/31 22:01 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#36 [ゆり]
隼人の口から
メ-ルしてた事を
リアルに聞いた時は
マジでショックだった。

わかってはいたけど
あくまで妄想だったから

現実って
痛いな。
 

⏰:06/08/31 22:06 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#37 [ゆり]
あたしは
「うーわ」
って言った。


笑い飛ばしたかった。

そんな気持ちとは真逆に
涙が込み上げてきた。

堪えたけど。
 

⏰:06/08/31 22:08 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#38 [ゆり]
「あ〜
泣きそうだわ、ほんと。」


軽く笑いながら
目に溜まる涙を押さえた。


「でも俺にゆりがおるのは
向こうも知ってるし
なんもないよ?!」
 

⏰:06/08/31 22:10 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#39 [ゆり]
ハイハイ。
でもあんたさ
アド変した時ゆったじゃん。

ゆりと
家族と
学校の奴にしか
教えてないよ
って。

女の子と
メールなんて
してない
って。

なんもないなら
なんで
嘘ついちゃった?

上手い言い訳で
納得させてよ。
お願いだから。
 

⏰:06/08/31 22:12 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


#40 [ゆり]
「あたしはさぁ…
メモリに女の子がいるとか
メールしてる子がいるとか
そーゆうのはいいんだよ。
言ってくれれば。
嘘つかれてた事が
悲しいだけ。」


食べかけの
オムライス。

このお店にも
二人で
よく来たよね。
 

⏰:06/08/31 22:15 📱:V703SH 🆔:O7rysDvw


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