○最後の四季○
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#2 [ゆり]
バタン
いってきますの
挨拶もなしに
あたしは家を出る。
だって誰もいないし。
両親が別居始めて
もう2年か。
:06/08/31 13:28
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#3 [ゆり]
バイトまでの道程。
一人歩く。
今日も空は変わらないし
でも風が少し強い。
こうやってまた
夏が終わって
秋が来るんだ。
「あ〜ぁ…」
何に対してか
わからないけど
溜め息が出る。
:06/08/31 13:29
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#4 [ゆり]
バッチリ髪を巻いて
ヒールを鳴らして歩いても
最近あたしは
いつもこんな感じだ。
満たされないまま
何を求める訳じゃなく
失う事も出来ないでいる。
:06/08/31 13:38
:V703SH
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#5 [ゆり]
2週間前から
パチンコ屋でバイトを始めた。
理由は
まぁ-お金。
キャバは彼氏の隼人に止められたし
なんだかんだで
夜の仕事をする程度胸はないし。
ちょ-ど近くにあったパチ屋に決めたんだ。
隼人は渋りながらも
頑張れよって言ってくれてる。
:06/08/31 13:39
:V703SH
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#6 [ゆり]
夜12時まで
バイトをして
煙草を吸わないあたしは
バイトの皆と溜まる事もなく
さっさと着替えて
店を出る。
「高原さん」
低い声で
名前を呼ばれて
振り返る。
同じバイトの大橋くん。
少しパーマ掛かった茶色い髪が
昔好きだった人に似てる。
:06/08/31 13:41
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#7 [ゆり]
「送ってく。
乗りなよ。」
「ほんと?
ありがと。」
薬指が輝く手で
車のドアを開けてくれる。
あたしの薬指にも
違う輝きがある。
「わざわざ
ごめんね。」
「近いし
全然いいよ。」
隼人が
こんな風に
女の子車に乗せてたら
あたしはたぶん
泣くだろーな。
とか思いながら
助手席に座る。
:06/08/31 13:42
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#8 [ゆり]
こんな所見たら
隼人も泣くんかな。
でも夜道をさ
一人で歩いて
何かあるよりは
いいじゃん?
なんて
言い訳してみたり。
:06/08/31 13:45
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#9 [ゆり]
近いから
すぐに家の前。
「お疲れさん。」
「ありがと。」
ガチャッ
車からおりて
笑顔を作って
「おやすみ。」
何食わぬ顔で
真っ暗な家の鍵を開ける。
:06/08/31 13:48
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#10 [ゆり]
飼ってるにゃんこが
あたしの足に纏わり付く。
こいつはほんと
あたしと違って
可愛いな。
キャットフードを
お皿に流し入れ
隼人にただいまのメール。
隼人からおかえりのメール。
:06/08/31 13:50
:V703SH
:O7rysDvw
#11 [ゆり]
変わらない
繰り返し。
平凡で単調な
こんな毎日を
きっと
幸せって
呼ぶんだろうね。
でも
あたしは弱くて
悪い女。
あの日から。
あたしは変わってしまったんだ。
:06/08/31 13:51
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