〇ニ番目の四季〇
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#292 [ゆり]
子供みたいに泣くあたしを
隼人が無理矢理引っ張って
連れて入ったのはホテルだった。

適当に部屋番号を押して
エレベーターに乗った。


手は強く握られたままで、
目は合わさない。

隼人がこんなに強引になったのは初めてだ。

あたしはもう抵抗する気もなくなって、
黙って部屋に入った。
 

⏰:06/06/03 11:19 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#293 [ゆり]
部屋に入ると
隼人は重い溜め息を吐いて
ベットに腰を下ろした。

「本当…ごめん」

その謝罪の言葉が
現実を連れて来て

あたしは唇を噛んだ。

ただ涙を堪えた。
 

⏰:06/06/03 11:21 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#294 [ゆり]
こんな事くらいで泣きたくない

うるさく言いたくない

傷付いたなんて思いたくない。


これ以上涙を流さない事が
あたしのくだらないプライドを守る
精一杯だった。


さっきまでとは別人の様に
頭を抱えてうなだれる隼人がいた。

隼人は自分の隣を手で叩き、
来いと催促した。
 

⏰:06/06/03 11:22 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#295 [ゆり]
あたしは黙って彼の隣に座った。

どうせ強引に抱かれるんだろう
と思いながら。


すると手を握られた。

強かったけど、
とても優しく感じた。


「許してもらうつもりはないけど…
また信じさせるから」

下を向いたまま、
隼人はそう言った。
 

⏰:06/06/03 11:26 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#296 [ゆり]
また信じさせる?

たった3時間で

一年間積み上げたものを
簡単に壊したくせに。

チャラ男だった隼人を
あたしは信じてなかった。

どうせ浮気するんだろうって諦めてた。

やっぱり裏切られた時に
傷付くのが恐かったから。

だけど隼人は本当に変わって、
毎日あたしを想ってくれてた。

だからいつの間にか信じていたんだ。
 

⏰:06/06/03 11:28 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#297 [ゆり]
別に内緒で会った訳でも

キスした訳でも

体の関係があった訳でもない。

こんなの世間じゃ
浮気なんて言わないのかもしれない。

こんな些細な事で…って
周りだって思うだろうし
自分だって情けないよ。


だけどそれだけ信じてた。

信じてたから。
 

⏰:06/06/03 11:30 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#298 [ゆり]
あたしは隼人にキスをして
舌を絡ませながら上にまたがった。

「…早くやれば?
どうせ最後にもう一回やってから別れたいんでしょ?」

あたしは冷めた声で言った。


こんな最後に
感動的な馴れ合いなんて必要ない。
 

⏰:06/06/03 11:33 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#299 [ゆり]
男はそんなもん…

あたしはそれだけの女。

そうやって割り切っていた方が楽。

心まで求めるから、
こんな風に傷付く。

あたしはもうこんな生き方しか出来ないし、
きっとこんな愛し方しか出来ないんだ。

ごめんね。

いつからこんなに弱くなったんだろう。  
 

⏰:06/06/03 11:35 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#300 [ゆり]
「…待って…話し」

隼人の声が少し震えた。

胸が痛んだ。

だけどもう無理じゃん。

戻れないじゃん。


あたしは苛立ちとか
切なさとか
ぐちゃぐちゃな感情で
隼人にキスをした。

隼人は何かをぶつけるように
あたしを抱いた。
 

⏰:06/06/03 11:37 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


#301 [ゆり]
あたしの大好きな手で
どうして他の子に触れたの?

あたしの大好きな声で
どうして他の人の名前を呼ぶの?

あんな隼人の姿
見たくなかった。



「…じゃああたし帰るね」

「ゆり」

服を着てベットを下りようとするあたしを
呼び止める隼人の声。

何か伝えなきゃいけない、
そんな気持ちが伝わってきた。
 

⏰:06/06/03 11:40 📱:V703SH 🆔:ip8fjOhw


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