〇ニ番目の四季〇
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#310 [ゆり]
次の日−
重い瞼を開ける。
ベッドから手を伸ばし
バックの中から鏡を取り出し顔を見る。
「うわぁ〜…ブサッ」
腫れた目が
昨日の事は夢じゃないんだって
あたしに思い知らせた。
:06/06/03 19:55 :V703SH :ip8fjOhw
#311 [ゆり]
毎日の日課だから
携帯を開く。
何件もの隼人からの着信。
友達や
岩田くんからの心配のメール。
みんながあたし達の別れを心配するくらい
誰の目から見ても
隼人はやり過ぎてたって事なんだね。
メールを読めば
有り触れた
励ましの言葉。
:06/06/03 19:58 :V703SH :ip8fjOhw
#312 [ゆり]
男なんていっぱいいるよなんて
簡単に言わないで
ゆりチャンは強いからって
お願いだから決め付けないで
雨音が
こんなあたしを責める様に
窓を叩く。
あたしは
隼人だけを求めてた訳じゃないけど
失いたくないのは
隼人だけだったんだよ。
:06/06/03 20:02 :V703SH :ip8fjOhw
#313 [ゆり]
「あーお腹すいたッ!!」
自分を立ち上がらせる様に
大きな独り言を言って
部屋を出た。
外は雨だから
昼間なのに暗い。
相変わらず誰もいない家。
世界に一人になった。
本当
そんな感じ。
:06/06/03 20:09 :V703SH :ip8fjOhw
#314 [ゆり]
「なんもないなぁ…」
冷蔵庫を開けて
呟いて
閉める。
足元に飼ってるにゃんこが
喉を鳴らしながら
擦り寄ってくる。
「お前のご飯はあるからね」
あたしはキャットフードとミルクをお皿に入れた。
:06/06/03 20:13 :V703SH :ip8fjOhw
#315 [ゆり]
しゃがんで
撫でながら
美味しそうに食べる姿をただ眺めてた。
「あたしもさぁ…お前みたいに可愛かったらよかったのにな」
ちょっと笑って
あたしは言った。
昔
高1の時に付き合ってた人に
言われた事があった。
[ゆりって捨て猫みたいだな]
って。
:06/06/03 20:18 :V703SH :ip8fjOhw
#316 [ゆり]
拾って拾ってって
鳴いてばっかいるくせに
いざ抱き上げようとすると
噛み付く
って。
妙に納得したんだ。
甘えるのが
苦手だったから。
「あたしあの頃から
なーんも変わってないね」
あたしはそう言って
リビングを出た。
:06/06/03 20:22 :V703SH :ip8fjOhw
#317 [ゆり]
髪にワックスをつけて
寝癖アレンジして
軽くファンデつけて
でかサングラスつけて
コンビニに向かった。
雨は本降り。
なんか
空が代わりに泣いてくれてるみたいだった。
ご飯買って
家に帰った。
使い慣れた鍵を出して
ドアを開ける。
いつからだろう
「ただいま」って
言わなくなったのは。
:06/06/03 20:30 :V703SH :ip8fjOhw
#318 [ゆり]
あたしはこんな性格だから
不幸自慢みたいなのが嫌いで
自分はこんなに辛いんだよって
言うのが嫌で
平気な顔をする事が
強さだと思ってた。
だけど隼人を見てて思った。
自分の弱さを認めて
全部さらけ出せる
それ以上の強さって
きっとない。
:06/06/03 20:36 :V703SH :ip8fjOhw
#319 [ゆり]
それからのあたしは
隼人にだけ
弱音が吐ける様になった。
過去にあった辛い事も
本当は家に一人で
寂しい事も。
そしたら隼人は
毎日あたしが帰る時間に
「おかえり」のメールをくれた。
毎日。
それだけであたし
めちゃくちゃ救われたんだ。
:06/06/03 20:41 :V703SH :ip8fjOhw
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