〇ニ番目の四季〇
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#323 [ゆり]
着信
隼人
緊張して電話に出る。
「もしもし」
「あ、もしもし」
「何か用ですか?」
「あ、やー何してた?」
「別になんにも…」
「…そっか、えっと明日会えない?」
心臓がドキッとした。
:06/06/03 21:48 :V703SH :ip8fjOhw
#324 [ゆり]
「いいよ、何時にどこ行けばいい?」
平常心を装って
答える。
「じゃあ…昼にいつものとこで。大丈夫?」
「分かった、じゃあね」
ずっと待ってたくせに
素っ気なく終わらせてしまう。
素直じゃないというか可愛くない。
でもこれだけは素直に認めるよ、
あたしはまだ
隼人が好き。
:06/06/03 21:52 :V703SH :ip8fjOhw
#325 [ゆり]
次の日
曇り空の中
いつもの駅に降りた。
春なのに肌寒くて、
あたしは手に持ったバックを肩にかけ直し
ジャケットの前で腕を組んだ。
ホームの階段を上ると
見慣れた後ろ姿があった。
:06/06/03 21:54 :V703SH :ip8fjOhw
#326 [ゆり]
「おまたせ」
後ろから声をかけると
隼人が焦った様に振り返る。
「あ、うん、いきなりごめんね」
「いいよ」
いつも通り歩き出す。
気まずい空気なのに
何故かすごく安心したのを今でも覚えてる。
:06/06/03 21:58 :V703SH :ip8fjOhw
#327 [ゆり]
近くのファミレスに入り
禁煙席に座った。
「吸わないの?」
「煙草吸いながらする話しじゃねーし…」
その言葉で
あたしの心臓はまた早くなった。
メニューを開き
「アイスティー」
と言うと
すかさず隼人が
「ケーキは?」
と聞く。
いつもの会話。
それがなんか嬉しかった。
:06/06/04 09:20 :V703SH :Ecxpdyi.
#328 [ゆり]
「今日はいいや」
「珍しいじゃん」
隼人が少し笑った。
少しホッとした。
アイスティーとコーラがくると沈黙。
あたしは口を開いたけど
正直何言ったか覚えてない。
頭テンパってた。
隼人は
「…謝って済む事じゃないって分かってるけど
ごめん。
あの時、俺にお前引き止める権利なんてなかった。本当ごめんな」
そう言いながら
辛そうな顔をしてた。
:06/06/04 09:23 :V703SH :Ecxpdyi.
#329 [ゆり]
「ごめんはもういいよ…」
謝られるのはあんま好きじゃない
言われる度に自分が可哀相になってくるから。
「…でも俺、本気で好きだよ。お前の事」
「…」
「だから別れたくない」
「…」
あたしは下を向いてた。
正直どうしたらいいのか分からない。
好きだけど…
信じたいけど…
でも…恐い。
:06/06/04 09:26 :V703SH :Ecxpdyi.
#330 [ゆり]
「…これ…」
そういって隼人が
何かをあたしの前に置いた。
視線を上げると
あたしが投げ捨てた
指輪があった。
「…え」
静かに手に取る。
中に記念日が彫られてるシルバーリング。
確かにあたしのだ。
「お前の指輪そんな小さいんだな」
隼人が寂しそうに笑った。
:06/06/04 09:30 :V703SH :Ecxpdyi.
#331 [ゆり]
そして迷いない
いつもの瞳で言ってくれた。
「信じれなくても…俺は好きだから
それだけは分かって。」
その時の隼人の顔を見て
声を聞いて
あたしはもう一度
この人を信じようと決めた。
:06/06/04 09:32 :V703SH :Ecxpdyi.
#332 [ゆり]
理屈じゃない
ただあたしには
隼人が必要なんだ。
信じなきゃいけないって
気持ちじゃなくて
あたし自身が信じたいって
確かに思ったから。
:06/06/04 09:35 :V703SH :Ecxpdyi.
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