〇ニ番目の四季〇
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#131 [ゆり]
高橋さんの肩が震えてるのがわかった。


完璧な高橋さんが
初めて見せた弱さだった。


あたしが言おうとしてる事気付いてるんだ…

あたしが最後を口にするのが恐くて、
あたしの言葉を遮ったの?

あたしが話すヒマないくらい
ずっとしゃべり続けていたの?

初めて来た場所に、
連れてきてくれたの?
 

⏰:06/05/30 06:16 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#132 [ゆり]
「高橋さん…今日は天気悪いから…キラキラ見えないじゃん…」

胸に顔を押し付けて
声にならないような声で言った。

切なくてたまんなかった。

「うん…」
また強く抱きしめられる。

高橋さんだけ雨に濡れていて、
あたしは守られてるみたいだった。
 

⏰:06/05/30 06:18 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#133 [ゆり]
だんだん雨脚が強くなる。


「車…戻ろ?」


あたしの声で高橋さんは身体を離して
コートを脱いであたしの頭にかぶせた。

「え?」
「いいから」

足早に車まで行き、
後部座席に乗り込んだ。
  

⏰:06/05/30 06:19 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#134 [ゆり]
高橋さんは後部座席から体を乗り出し
エンジンをかけて暖房を入れた。

雨は本降りだ。

ザァーザァー

窓ガラスに雨が当たる。

「高橋さん…大丈夫?」

「うん…てか、俺いつもゆりちゃんにそーやって聞いてきたよね、
大丈夫な訳なかったよな」

雨なのか涙なのかわからない雫が落ちる。
 

⏰:06/05/30 07:19 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#135 [ゆり]
「…大丈夫だったよ、
…あたし幸せだったから」


ただの強がりじゃなかった

幸せを守る為に強がってたんだよ。


「おいで」

あの日と同じ
優しい声と切ない表情。

あたしは素直に首に腕を回して抱き着いた。


二人共最後だってわかってた。
 

⏰:06/05/30 07:21 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#136 [ゆり]
「あー…ゆりちゃんだ」

そう言って軽く笑った。

「なにそれ?笑」

「香水の香り、
抱きしめると微かにするんだよね」


普段は普通に香水をつけてるけど、
高橋さんに会う事になったら付けた場所洗ったりした。

助手席に香りが残るといけないと思ったから。 
 

⏰:06/05/30 07:22 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#137 [ゆり]
「いっぱい気遣わせたね、ごめんね」


気付いてくれてると思わなかった。

涙が溢れた。

今日はもう堪えずに泣いた。


高橋さんはただあたしを強く抱きしめて、

それ以上は何もしなかった。
  

⏰:06/05/30 07:24 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#138 [ゆり]
正直、
別れを告げたら無理矢理抱かれると思ってた。
好き勝手に…
それで嫌いになれたらいいって思ってたの。

でもあたしは高橋さんを何も分かってなかったね。

辛いのはきっと
あたしだけじゃなかった。

高橋さんがくれた愛は本物だった。

あたしは一瞬でも、
確かに満たされたんだから。
 

⏰:06/05/30 07:31 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#139 [ゆり]
何分くらい経っただろう、
二人黙ったままずっと抱きしめ合ってて、
雨音だけを聞いてた。

高橋さんの濡れた髪が
愛しくてたまらなかった。


バッテリーが上がる前に
車のエンジンを切った。

いつもエンジンが切られると
まだ一緒にいられるんだって
嬉しくなったっけ。


でも今日は苦しいよ。
 

⏰:06/05/30 07:34 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


#140 [ゆり]
あたし達は後部座席に手を繋いで座った。

さっきよりよく聞こえる雨音に合わせて、

あたしは口を開いた。


「もう…今日で最後にするね」


しばらく沈黙が続いた。

あたしは言葉を続けた。
  

⏰:06/05/30 07:35 📱:V703SH 🆔:vYkyxf/c


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