〇ニ番目の四季〇
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#235 [ゆり]
「…ごめん…」
やっと出た言葉がこれだった。
あたしは電話を切った。
ベッドに潜り込んで泣いた。
なんでもっと上手に
生きられないんだろ。
:06/06/01 07:05 :V703SH :c.8GcieI
#236 [ゆり]
1時間半くらい経った頃
また携帯が鳴った。
隼人からのメールで
「出てきて」って内容だった。
あたしはどこに?と思いながら
階段を下りて外に出た。
汗だくの隼人がいた。
:06/06/01 07:08 :V703SH :c.8GcieI
#237 [ゆり]
泣き過ぎで頭がぼーっとしてる。
「隼人…もう秋だよ?」
あたしは真顔で言った。
「うるせーよ!笑
チャリで来たんだから仕方ねーだろ」
息が上がってた。
「学校からチャリで来たの?」
「うん、全力疾走で笑」
隼人は笑顔で顔を流れる汗を拭いた。
:06/06/01 07:12 :V703SH :c.8GcieI
#238 [ゆり]
「…なんでぇ?」
あたしはアホな子みたいに
首を傾げて聞いた。
全然頭が働かない。
「ゆりに会いたかったから」
隼人はまた笑顔でそう言い
あたしの手を握った。
「検査するやつ…検査薬っつーの? 買ってきたから。
出来るか?」
:06/06/01 07:16 :V703SH :c.8GcieI
#239 [ゆり]
検査薬…
その言葉でようやく頭が働き出した。
「恐い…」
あたしは俯いた。
握られる手に力が入る。
「やらないままでも不安なだけだろ?
俺待ってるから」
しばらく俯いて
あたしは頷いた。
「わかった…」
:06/06/01 07:19 :V703SH :c.8GcieI
#240 [ゆり]
自転車にかけてあった袋を外し
あたしに渡す。
中にはポカリとプリンとポッキーも入ってた。
「ちゃんと出来たらポッキー食わせてやるよ」
笑って隼人が言った。
「それ新商品の苺のやつ?絶対食べたい」
「じゃあ頑張れ!俺ここにいるからな」
優しく笑ってくれた隼人に後押しされて
あたしは家に入った。
:06/06/01 07:25 :V703SH :c.8GcieI
#241 [ゆり]
トイレに入って
箱を開けて
説明書を簡単に読んで
検査した。
何を祈る訳でもなく、
時間が過ぎるのを待った。
結果は
陰性。
妊娠してなかった。
:06/06/01 07:27 :V703SH :c.8GcieI
#242 [ゆり]
あたしは無言のまま
検査薬を袋に入れて
ごみ箱の奥の方につっこんで
家を出た。
外には落ち着かない様子で煙草を吸う隼人がいた。
あたしに気付き煙草を消す。
「ゆり!どうだった?ちゃんと出来たか?」
「…出来た。だからポッキー」
あたしは右手を出した。
その手を強く握って
「後だよバカ!結果は!?」
と言った。
:06/06/01 07:35 :V703SH :c.8GcieI
#243 [ゆり]
「妊娠してませんでした…
お騒がせしてごめんなさい」
あたしは頭を下げた。
隼人は気が抜けた顔を見せた。
「まじで?」
その後に両手であたしの手を握って
大きな溜め息を吐いて言った。
「ゆり…ごめんな…」
:06/06/01 07:39 :V703SH :c.8GcieI
#244 [ゆり]
「…なんで?」
「不安だったよな、もっと早く気付いてやれなくて
ほんとごめん」
「…隼人って優しいね」
あたしはしみじみ感じた。
2時間くらいかかる距離をチャリで走ってきてくれた。
検査薬買うのも
恥ずかしかっただろうな。
あたしが好きなチョコレートもちゃんと買ってきてくれて
本当に嬉しかった。
:06/06/01 07:45 :V703SH :c.8GcieI
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