〇ニ番目の四季〇
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#381 [ゆり]
いきなり二人きりで話すなんて
数日前から想像出来ない。
本当
些細なことで
人との繋がりって出来るものだ。
淳ちゃんは窓際の席に座った。
あたしはその隣の椅子に横向きに座った。
「先輩って…人生嫌になる事ってないですか?」
いきなりの質問に驚いた。
でも真剣な横顔だったから
真剣な質問なんだ
と思った。
:06/06/05 23:01 :V703SH :tPdHa1I.
#382 [ゆり]
「嫌になる事かぁ…
そりゃあるよ」
あたしはかなりの幸せ者だけど
全て嫌になる事もある。
家事も
恋愛も
学校も
将来も
全部捨ててしまいたくなる事もある。
でも全て捨てて自由になっても
あたしはきっとまた
その捨てたものを探し始めるんだろうって
思う。
:06/06/05 23:07 :V703SH :tPdHa1I.
#383 [ゆり]
淳ちゃんは下を向いたまま何も言わない。
あたしは聞いた。
「淳ちゃんは…人生が嫌になったの?」
「はい…」
右手で長袖の上から
左手首を強く握った。
瞬間になんとなく分かった。
この子リストカットをしてるんだ
って。
:06/06/05 23:11 :V703SH :tPdHa1I.
#384 [ゆり]
あたしにも経験がある。
お母さんが家を出てく前に
激しい夫婦喧嘩が
毎日毎日毎日繰り返されてた。
お皿は何枚も割れて
叫び声が響き渡ってた。
あたしは誰も憎めない
やり場のない気持ちを傷として残した。
死にたかった訳じゃないから
肩の辺りを切って
血を見て
落ち着いたりしてたんだ。
この事は誰も知らない。
:06/06/05 23:16 :V703SH :tPdHa1I.
#385 [ゆり]
どう聞いたらいいのか分からなかった。
でも何か訴えてるのは感じた。
「…痛い?」
普通に聞いてしまった。
淳ちゃんの横顔を見てたら
気付いてあげなきゃいけないって
気持ちになったから。
「…」
黙ったまま
小さく首を横に振った。
:06/06/05 23:20 :V703SH :tPdHa1I.
#386 [ゆり]
「リスカすると落ち着くんです…
だから痛みなんてない…」
蚊の鳴く様な声で呟く。
「そっか…」
「…気持ち悪いとか…思わないですか?」
「え〜?思いませんよ(笑
ほら」
あたしはTシャツの袖を捲くった。
深くはないけど
今も残ってる消えない傷痕。
淳ちゃんの目が一気に開いた。
:06/06/05 23:35 :V703SH :tPdHa1I.
#387 [ゆり]
傷を舐め合って
癒し合えるなんて思わないけど
少しでも
何か変われるなら
あたしはあっさり簡単に
初めて傷痕を人に見せた。
「もう切ってないんですか?」
「切ってないよ」
「どうやってやめられたんですか?私も強くなりたい」
強さかぁ。
そんなものあたしにはないな。
:06/06/06 07:23 :V703SH :Ks2JUYQU
#388 [ゆり]
ねぇ隼人
隼人はいつも
あたしが欲しがる言葉を
くれた訳じゃないけど
あたしが離れていかないようにと
いつも懸命に伝えてくれたね
その揺るがない想いを
時に疑い
時に信じた
あたしが持っていない強さを
隼人は持っていたよね
:06/06/06 07:30 :V703SH :Ks2JUYQU
#389 [ゆり]
傷付いても
好きだと言ってくれたよね
あんた懲りないねって
笑ってやったけど
その強さに
数え切れない程
救われてた。
あたしにもそんな強さがあったなら
過去を責めて
何度も隼人を苦しめなかったよね。
:06/06/06 07:32 :V703SH :Ks2JUYQU
#390 [ゆり]
「先輩?」
「…あ、ごめん!
あたしは原因が分かってたから…
問題が解決したら自然にやめられたよ」
「そうですか…」
寂しそうに俯く。
その時教室のドアが勢いよく開いた。
「お前らもう学校閉めるから帰れよ〜」
「あッはーい!」
二人で焦りながら教室を出る。
:06/06/06 07:43 :V703SH :Ks2JUYQU
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