弱虫‥

｢連絡待ってたのに‥｣

｢シラけるだろ｣

｢え‥？｣

｢俺が連絡してもシラけるだけだからしなかった｣

｢ごめん.かずが冷たいから寂しかった..｣

｢俺もう決心しちゃった｣

―‥ﾄﾞｸﾝ
心臓が高鳴る.

｢‥何の決心？｣

｢別れる決心｣

別れる決心‥？
なにそれ.嘘でしょ？
でも確かにはっきり
かずは"別れる決心"
そう言った.

｢え‥？｣

｢近くでいい男探せよっ｣

かずは明るく言った.

あたしの目からは
何かが流れ‥
プライドの高いあたしは
どこにもいない‥
ひたすら"嫌"と言った.

けいたから振られた時の
事を思い出していた.

けいたを忘れたのは
かずがいたから.
不器用だったけど
流れるものを止めて
くれたのはかずが
言った言葉たち‥

かずの大切さ‥
今更気づく
自分はバカだ‥

後悔しかなかった.

｢‥か‥ず‥好きな人でも‥できたの？｣

｢できねえ｣

あたしは泣きながら
言った事のない
自分の素直な気持ちを
かずに伝えた.

かずが好き.
かずが必要.

けいたに振られた時の
事も‥寂しかった事も‥
全部‥全部‥
我慢してた事も‥
すべて‥
偽りなくすべてかずに
伝えた.そして‥

かずがまたあたしを
好きになってくれる日まで
待つと伝えた.

重い事は分かってた.
でも重いって思われても
このままバイバイは
辛すぎて立てそうに
なかったから.

かずをあたしの心の
中で思う事だけは
許して欲しい.

｢ごめんな‥｣

かずは黙ってあたしの
話を聞いていた.
沈黙のあとこう言った.

｢寂しかったよな‥ごめん.寂しいしつらいのにそんなに俺の事好きでいてくれて‥｣

かずはそれ以上は
何も言わない.
きっとかずは泣いていた.
それをあたしに
気づかれたくなくて
なにも喋らなかったん
だと思う.

かずは最後に
言葉につまりながら.

｢‥っあり‥がと‥‥な｣

そう言った.

｢じゃあな｣

電話は切れた.
あたし達はこうして
終わった.

付き合い始めた頃は
真夏だったのに‥
気づけば肌寒く感じる
11月になっていた.

１年くらいたった
気がしていた‥

明日からかずのいない
生活が始まる.