幸せをありがとう。
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#1 [うた] 08/10/16 23:48
都会育ちのあたしと、海に沿った田舎町で育った彼との過去物語です。
¨友達以上恋人未満¨
一線を越えることを願ってた一方、関係が壊れることに脅え気持ちに鍵を掛けました。
今君に一言伝えるとすれば、あたしはこう伝えます。
「 倖生、幸せをありがとう。」
この小説に、彼との過去を残します。
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#18 [うた]
三時間にも及んだ梓との電話を切った後、夕食の事が頭に浮かび急ぎで階段を下りてった。
「 ‥あの、ごめんなさい 」
そう頭を下げると『 女の子同士は話が弾むものよっ!さぁ食べよーね 』と、シワを寄せて笑顔で許してくれた。
あたしは「 以後、気つけるようにするね 」と言うと、『 徐々にでよかよ?』と言われた瞬間に、¨大事にしてあげよ¨と初めての気持ちになったのを、覚えてる。
お風呂に入って歯を磨き、お婆ちゃんの髪を解かしてあげ、受信してたメールに返信をして、就寝した。
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:08/10/18 15:50
:D904i
:Q8QhFWeM
#19 [うた]
‐朝7時‐
¨うーちやん、朝なりよっ!うーちやん、朝なりよっ!うーちやん、朝なりよっ!¨
前、梓が勝手に自分のボイスを目覚ましに設定し、そのボイスで目を覚ますのが朝の習慣へとなってた。
階段を下りる途中に漂う、お味噌汁の幸せになる匂い。
「 おはよ、千宗さん 」と言うと、『 詩、おはようさん 』と返事が返ってくる。
涙が出る程に幸せで、「 おはよう 」と言えば「 おはよう 」と応答がある事に、愛を感じてた。
‐昨日の夜‐
「 婆ちゃんって名前、何さんって言うの? 」
『 チヒロじゃよ 』
「 へー、初耳で逆に気持ち悪くなってきたー 」
『 あははは、詩は変わってる子なんやね 』
「 うん。よく冷たいって言われる‥。チヒロって漢字は?千と千尋の千尋? 」
そう聞くとメモ用紙に、¨蒼乃 千宗¨と書いた。
蒼乃とは名字で、父親の名字を名乗り生きてきたあたしにとっても¨蒼乃¨とは、名字です。
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:08/10/18 16:50
:D904i
:Q8QhFWeM
#20 [うた]
『 父親の宗一の宗に、母親の千代の千を一文字づつ授かったのよ 』
「 へー、幸せだね。あたしなんか、親に愛されてたかさえ分かんなくなってきたよ‥ 」
『 あたしが愛してあげようね 』
素敵な名前があるって事で、名前で呼ぶようにすると提案したのは、あたしだった。
「 ねぇ、千宗さん?あたし学校ってどうすんのかな? 」
『 さっき、明日香さんが電話で、中学校に話はしてある。って言われたんじゃよ 』
「 ‥ママ、電話だけ? 」
そう言うと千宗さんは、苦笑いをしあたしの頭を撫でてくれた。
『 あんたはもう捨てられたのよ 』と、誰かに言われたようだった。
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:08/10/18 17:11
:D904i
:Q8QhFWeM
#21 [うた]
‐うた、小説休憩‐
皆さん
楽しんでくれてますか?

うた
:08/10/19 00:17
:D904i
:bpC4A9aY
#22 [うた]
‐うた、小説再開します‐
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:08/10/19 13:39
:D904i
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#23 [うた]
ピンポーン
『 千宗、おっはよーっす!荷物あったで持ってきてやったー 』
チャイムが鳴り、勝手に家の中に侵入してくる誰か。
千宗さんは声を聴くと立ち上がり、玄関の方へと足を向け『 レイは、毎日元気があってよい限りよ 』と、優しい顔で対応してた。
『 あ、こんちわー!てか、おはよーございます。うたさん 』
作業着を着て、荷物を肩に担ぐ男が発した¨うたさん¨に、あたしは驚きすぎた。
「 え、あんた誰?」
『 俺?レイだよ。倖生の一応親友をやっとる 』
「 こ、‥倖生? 」
『 バイク乗ってた男前よ、知らん?『 梨花似の無口で美人な奴が来たで、見に行け 』って言われたんじゃけ 』
「 あぁー、‥で? 」
『 いや、倖生が惚れてまうのもわかるわっ!俺の彼女に‥いやっ‥嫁さんになりませんか? 』
すると、『 あはははは、詩はまだ嫁さんになれる歳やないんよ?なぁ、詩? 』と、千宗さんが間を割ってくれた。
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:08/10/19 14:04
:D904i
:bpC4A9aY
#24 [うた]
あたしはレイが持ってきた荷物の宛先欄に目をやると、ビリビリとガムテープを剥がし、中に入ってる新品の制服を取り出した。
『 あ、制服やね 』と、千宗さんが言うと「 うん 」と答え階段を上り、部屋へと戻った。
全身鏡の前に立ち、新品の制服に身を包む自分を見る。
スカートがやけに長く、鞄も靴下もジャージも制服も全てあたし好みではなく、着崩しをして階段を下りてった。
「 千宗さん、似合う? 」
そう言うと、朝ドラを夢中で見てた千宗さんとレイが振り返った。
『『 ・・・・・・・・・ 』』
スカートは太股よりも短く、靴下は指定の白より紺を選び、制服は着ずにワイシャツにカーデガンを羽織り、緩くしたネクタイを結び、鞄とジャージは東京で使ってたボロボロを好んで用意した。
「 ・・行ってきまーす 」
そう逃げるように千宗さんに伝えると、新品のローファーではなく愛用のスニーカーに足を通し玄関のドアを開けた。
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:08/10/19 14:22
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:bpC4A9aY
#25 [うた]
玄関を出てすぐ、目の前にある防波堤に立って海を眺め深呼吸をした。
『 うたさーん?パンツ、ワカメちやん状態になっとるよ? 』
振り向き防波堤の下を見ると、バイクにまたがり眠そうに見上げる、倖生が居た。
「 別に減るもんじゃないし、好きなだけ見れば? 」そう言うと、ボカっと誰かに頭を叩かれた。
さっきまで下に居たはずの倖生が横に立ち『 大事にしろや、あほ 』と言うと、煙草を取り出して腕を組み、ずっーと海の先を眺めてた。
隣に感じる倖生の等身大は、温かく大きかったです。
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:08/10/19 14:37
:D904i
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#26 [うた]
あたしは倖生を睨んで防波堤を下り、スタスタと歩き出す。
『 ちょっ、うた、乗ってかんのがや? 』
倖生を無視し更に歩き進める。
倖生は重いバイクを押して、あたしの隣であたしのペースに合わせて歩き出した。
「 なにやってんの? 」
『 歩きも案外、有りやな 』
そう言うと倖生は、八重歯を出して笑ってた。
その光景が眩しくて、ドキって心臓が痛くなったのを覚えてる。
きっとこの瞬間にあたしは、あの人に容姿も声の質も優しさも似てる倖生に、恋をした。
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:08/10/19 16:21
:D904i
:bpC4A9aY
#27 [うた]
「 ってか、あんたがしてる行動結構キモイよ? 」と、冷たく言うと、『 あはは、別に人にどう思われようと関係ねーよ。一番重要なのは、俺がどうしたいかだとは思わん? 』と言ってきた。
確かに、倖生の言う事は正解に一番近いんだと思う。
けど、荒んでたあたしには綺麗事にしか聴こえなかった。
「 あんたってさ‥ 」
『 ん?俺ってなに?いや、俺は倖生やぞ 』
「 春に‥自殺した元彼に似てて、目障りなんだよね 」
そう言うと、あたしはスタスタと歩き出した。
倖生は、隣には居なかった。
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:08/10/19 16:40
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