リセット

あせらない。
悔しくない。
まだ大丈夫。
諦めない。

25歳の私。
私はやっとリセットボタンを押せました。

掴んだ手は
そのまま首に移動してきた。

私は血走ったひかるくんの目をじっと睨んだ。

でもどんどん苦しくなってきて…

私は絶対悪くないのに
涙が出てきて…
何度も何度も謝った。

「ねぇ…苦しい…」

すると急に手を離した。

ﾌﾞｫｰﾝってエンジンをふかしていきなり暴走運転が始まった。
買い物に向かっていた道路をＵターンして
猛スピードで走りだした。車がいるとクラクションを鳴らし窓から顔をだして「じゃまなんだよ、どけよババア！」とか罵声を吐き狭い道もスピードを落とすことなく走っている。

私は暴走運転の車の中で必死にひかるくんの名前を呼んだ。
お願い、辞めてって何度も叫んだ。

恐怖で息が上手く出来なくなる…

昔、事故にあった時の記憶が甦り、頭を抱えた。涙で前が見えない。足が異常にｶﾞｸｶﾞｸした。

呼吸の仕方がわからなくなる…
吸っても吸っても上手く吸えない。

……

『過呼吸』

私には無縁だと思っていたけどこの時に初めて私の中から姿を現した。

もう
酸素が足りなくて苦しくて必死に息をする。
周りの音なんてもぅ何も入ってこなくなり、
ただひたすら息をした。

吸っても吸っても足りなくて苦しくて苦しくて

落ちつくまでに
ずいぶん時間がかかった気がする。

気がついた時、
車は停車していて

ひかるくんは私の背中をさすってくれていた。

顔をあげると
ひかるくんは自分の服の袖で私の涙と汗を拭いてくれた。

「…大丈夫か？」

優しい目をしてひかるくんがボソッと聞いてきた。

私はこくりと頷いた。

ひかるくんは
ひかるくんに戻っていた。

「本当ありえないな、俺。なにやってんだ。最低だ。」

私を抱き寄せる。

…そうだ、エクレアでぶち切れられて、怖くて怖くて私意味わかんなくなったんだ。

「怖かった。」

それだけ伝えて
ひかるくんから離れた。

「あたし帰る。」

ひかるくんは焦った様子で私の腕をつかんだ。

「無理だよ、本当ごめん。本当ごめんなさい。もう二度とこんな事のないようにするから。
お願い。信じて。」

すごい悩んだけど
ひかるくんの真剣な目が嘘をついていなくて
まだ一度だし、もう手なんで出さないってゆうし、許してみようと思った。

見事に、それからは一度も手をあげることはなかった。

この事件があってからはひかるくんは気にしてるのか優しくなり、仲良しで過ごした。

私が疲れて帰るとご飯を作って待っててくれる。

「特製ネギ抜きスペシャル！」

わたしが嫌いなネギを抜きにして美味しいチャーハンを作ってくれたときはお腹が破裂するんじゃないかと思うほど大量に食べた。
ひかるくんは私の食べっぷりにビックリしていた。

…だって美味しいんだもん。
私一人の為に一生懸命作ってくれるって事が何より嬉しかった。

私も出来る限り尽くした。ひかるくんの為にって思うとどんな事でも楽しく感じる。

「お～やるなぁ～」
「おっお前わかってんじゃん」
「あいちゃぁん」

「ありがとう」とか素直に言えないひかるくんだけど嬉しい時、私の頭をｸﾞｼｬっとしてｴｸﾎﾞを作って喜ぶ顔が大好きで
いつもいろいろ考えた。