悲哀恋々

からだに痣ができても
心に穴があいても
泣いて泣いて目が腫れても

あなたが好き

ただそれだけなのにね

『私、やるよ。そのかわり、辞めたくなったらすぐ辞めるから』

私は甘かった
こんなん楽勝だと思ってた

早速次の日
夕方に陽介と店の事務所に行った

陽介の店はデリヘル

事務所には
何人か女の子が待機していた

私は陽介に案内されて
奥にある部屋で
待ってるようにいわれた

初めての経験ってのもあって
私はそわそわしていた

しばらくして
がたいのいい坊主頭の人が
入ってきて言った

『こんにちは。俺は中山でここの店長任されてます』

『あーはい。私は寧々。ってか、陽介は？』

陽介の姿がない
臆病な私は急に恐くなった

『佐々木（陽介）なら、用事あるからって先帰ったよ』

帰った？
なんで私ひとりにすんだよ

陽介にイライラしながら適当に中山の説明を聞いていた

『じゃあ、今日からよろしくお願いします』

中山が気持ち悪い笑顔で言った

まだ20歳なりたての私
1日1日
汚れてって
金とsexに溺れてった

私の勤務時間は
夜8時から朝方4時まで
平均つく客は
5人か6人

最初はぐったりだった
見ず知らずの男と二人きり
服を脱ぐ事に抵抗を感じてたけど
馴れれば平気
脱がなきゃ金にはならない

お金だって
飲み屋してた時とは
比べものにならなかったし
ほしい物は何でも買えた

本番禁止
なんて守ってたのは最初だけ
sexすればお金をくれる客もいた

半年経つ頃には
風俗雑誌の撮影を定期的にしたり
毎日予約でうまった

私には宝物や
大事な人なんてなかった

だって
宝物を無くした時
どうするの？

大事な人を失った時…
あんな思いはもうしたくない

だったら
私はひとりでいい
適当でいい