人を嫌った犬の一生
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#53 [太郎]
示談書におじさんがサインした事により、この事件は全て集結した。

しかしこれからが大変だ。約束した以上、検査と予防接種にはつれていかなければならない。

もちろん、ゴンが易々と注射などを許す訳がない。どうしたらつれていけるだろう。

とりあえずまず口輪をつけることにした。

口輪とは、犬の長い鼻の部分にはめて、口を開けれないようにする道具だ。

これをつける事さえ一苦労だった。

⏰:09/04/15 15:03 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#54 [太郎]
お父さんはゴンの不意をついて、後ろから口輪をつけようとした。

その瞬間ゴンは怒り、お父さんの服の腕の部分に噛みついた。

「うぅ゙〜」と服を噛みちぎったゴン。慣れないものが怖かったのだろう。

それからは口輪をつけようとしてもゴンは警戒して、つける事はできなかった。

このままでは埒があかないので、近くの動物病院に電話し、相談してみた。

⏰:09/04/15 15:08 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#55 [太郎]
今の状況を伝えると、獣医さんは少し悩んだ。それはそうだろう。いくら獣医と言えど凶暴な犬は怖いに決まっている。

しかし、

「何とかしましょう。とりあえず当院にゴンちゃんをつれてきてください。」

と返事をしてくれた。さすが獣医さんだ、と俺は思った。

早速縄をつなぎ、イヤがるゴンを車に無理やり乗せた。

ゴンは「ヘッヘッヘ」と荒い息をしながらベロを出していた。それが可愛くて笑いが出た。

⏰:09/04/15 21:45 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#56 [太郎]
病院までは15分くらいの道のり。ゴンを病院につれて行くのは初めてで、ゴンも落ち着かない感じだ。もちろん俺もお母さんも不安でいっぱいだった。

病院につくと、女性の獣医さんが出迎えてくれた。案の定、その獣医さんにゴンは飛びかかろうとした。

ゴンの縄は俺が持っていた。ゴンはあっちこっちに行こうと引っ張ったが、俺の引っ張る強さの方が上だった。

獣医さんによると、今日は来診する動物が多いので少し待ってほしい、との事だ。

俺とお母さんとゴンは駐車場で順番を待つ事にした。

⏰:09/04/15 21:57 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#57 [太郎]
駐車場には、次々と受診の終わった犬や猫が出てくる。その度にゴンは飛びかかろうとしたり、吠えたりした。

病院から出てくるペット達は、ヒステリーに吠えまくるゴンを蔑むように見ていく。

みんなおとなしくて、服を着たり、オシャレをしたり、上品なペットばかり。まるで飼い主の着せ替え人形だ。

そんな犬達を見ても、ゴンの可愛さに勝てる犬はいなかった。親バカならず、飼い主バカなのかな。

数10分して、先程の獣医さんがやってきた。

⏰:09/04/16 09:06 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#58 [太郎]
ゴンはまた飛びかかろうとした。獣医さんもどうやって検査・予防接種をするか悩んでいた。

今思えば悩んでも一緒だった。ゴンがおとなしくなる事などないのだから。

「不意をついて注射をするしかないですね。」

獣医さんは言った。正論だった。

まず持ってきたジャーキーをゴンの前においた。そして「待て」をさせて、ゴンの意識をジャーキーに向かせた。

静かに後ろから近づく獣医さん。まさに一瞬だった。

⏰:09/04/16 12:11 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#59 [太郎]
「よしっ」の声とともにゴンはジャーキーを食べる。それと同時に獣医さんは後ろからゴンの腰あたりに注射を刺した。一気に予防接種を打ち込み、即座に逃げるようにゴンから離れた。

ゴンはジャーキーに夢中だった。食い意地のはった犬だ。無事予防接種は終わった。

それから狂犬病検査なのだが…

申し訳ないが、どう検査したか覚えていない。

確か唾液かないかを採集しての検査だったと思う。

そしてゴンをまた車に乗せ、支払いを済ませてから家に戻った

⏰:09/04/16 12:47 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#60 [太郎]
検査結果。ゴンに狂犬病の疑いはなかった。それをゴンが噛んだおじさんに伝えると、ホッと胸をなで下ろしていた。

病院から帰ってきた俺はどっと疲れていた。ゴンと一緒に外出すると、歩行者などにかなりの注意をはらわなければならないので、俺の気の張り方は尋常じゃなかっただろう。

ましてや、先日他人を噛んだばかりだったから。


それから一時は、平和な日々が続いた。

その頃の俺は、フリーターとして何も考えずバイトをしていた。将来の事でお母さんと毎晩のように喧嘩していた。その喧嘩をゴンは玄関で聞いていただろう。

⏰:09/04/16 12:58 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#61 [太郎]
俺は一切勉強する気はなかった。一回道を踏み外したんだから、もう元の道には戻れない。…言い訳だった。

そんなどうしようもない俺でも、ゴンはやさしく接してくれた。全て分かっているような目で。

「ゴン、お前はやさしいなァ。」

そう言うと、ゴンは俺の肘をペロっと舐めた。ゴンはいつでも俺の味方だった。

そのまま一年以上たった。ゴンに大きな異変が起きた。

⏰:09/04/16 13:04 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#62 [太郎]
ゴンは左目を手でかきむしるようになった。かゆそうに目を気にしている。

今からバイトだったので、気にしながらもバイトに行った。

蜂にでも刺されたかな?

そんな事を考えながらバイトの終わった俺は、家に着いてゴンを見た瞬間驚いた。

左目の色が白く濁っている。平たく言えば、左目は死んでいた。

白内障。高年齢の犬がよくかかる病気だ。目が白く濁り、視界を奪われるとゆう恐ろしい病気。

「ゴンの左目はもう見えてないみたいよ。」

お母さんが言った。

⏰:09/04/16 13:10 📱:D905i 🆔:l/weZALU


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