人を嫌った犬の一生
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#51 [太郎]
「いや、それだけは勘弁してください!お願いします!」

俺とお母さんは何度も何度も謝った。犬と言っても、俺にとっては家族、いや弟のような存在であるゴン。そんなゴンを保健所につれて行くなんて、絶対にできなかった。

「では、治療費と慰謝料を払ってもらいます。」

おじさんが提示した金額は相当な額だった。犬が人を噛んだ場合の慰謝料は相場が11万、昔フリーダイヤル相談の弁護士が言っていたのを思い出した。

⏰:09/04/15 14:49 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#52 [太郎]
しかし、おじさんは近隣に住む人。もしかするとこれから近所付き合いとしてまた会う事もあるかもしれない。相手の望む謝罪をしないと後味が悪い。お母さんはそう言った。

この件を別居中のお父さんに話した。結局、お金が絡んでくると、一家の大黒柱に頼むしかない。

お父さんはすぐに示談書を作り、相手が提示した分の慰謝料を持ってやってきた。

相手の家に行き、慰謝料を払い示談書を出した。そして、狂犬病の検査、及び予防接種をすぐに行う事を約束した。

⏰:09/04/15 14:57 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#53 [太郎]
示談書におじさんがサインした事により、この事件は全て集結した。

しかしこれからが大変だ。約束した以上、検査と予防接種にはつれていかなければならない。

もちろん、ゴンが易々と注射などを許す訳がない。どうしたらつれていけるだろう。

とりあえずまず口輪をつけることにした。

口輪とは、犬の長い鼻の部分にはめて、口を開けれないようにする道具だ。

これをつける事さえ一苦労だった。

⏰:09/04/15 15:03 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#54 [太郎]
お父さんはゴンの不意をついて、後ろから口輪をつけようとした。

その瞬間ゴンは怒り、お父さんの服の腕の部分に噛みついた。

「うぅ゙〜」と服を噛みちぎったゴン。慣れないものが怖かったのだろう。

それからは口輪をつけようとしてもゴンは警戒して、つける事はできなかった。

このままでは埒があかないので、近くの動物病院に電話し、相談してみた。

⏰:09/04/15 15:08 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#55 [太郎]
今の状況を伝えると、獣医さんは少し悩んだ。それはそうだろう。いくら獣医と言えど凶暴な犬は怖いに決まっている。

しかし、

「何とかしましょう。とりあえず当院にゴンちゃんをつれてきてください。」

と返事をしてくれた。さすが獣医さんだ、と俺は思った。

早速縄をつなぎ、イヤがるゴンを車に無理やり乗せた。

ゴンは「ヘッヘッヘ」と荒い息をしながらベロを出していた。それが可愛くて笑いが出た。

⏰:09/04/15 21:45 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#56 [太郎]
病院までは15分くらいの道のり。ゴンを病院につれて行くのは初めてで、ゴンも落ち着かない感じだ。もちろん俺もお母さんも不安でいっぱいだった。

病院につくと、女性の獣医さんが出迎えてくれた。案の定、その獣医さんにゴンは飛びかかろうとした。

ゴンの縄は俺が持っていた。ゴンはあっちこっちに行こうと引っ張ったが、俺の引っ張る強さの方が上だった。

獣医さんによると、今日は来診する動物が多いので少し待ってほしい、との事だ。

俺とお母さんとゴンは駐車場で順番を待つ事にした。

⏰:09/04/15 21:57 📱:D905i 🆔:NTagMB.Q


#57 [太郎]
駐車場には、次々と受診の終わった犬や猫が出てくる。その度にゴンは飛びかかろうとしたり、吠えたりした。

病院から出てくるペット達は、ヒステリーに吠えまくるゴンを蔑むように見ていく。

みんなおとなしくて、服を着たり、オシャレをしたり、上品なペットばかり。まるで飼い主の着せ替え人形だ。

そんな犬達を見ても、ゴンの可愛さに勝てる犬はいなかった。親バカならず、飼い主バカなのかな。

数10分して、先程の獣医さんがやってきた。

⏰:09/04/16 09:06 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#58 [太郎]
ゴンはまた飛びかかろうとした。獣医さんもどうやって検査・予防接種をするか悩んでいた。

今思えば悩んでも一緒だった。ゴンがおとなしくなる事などないのだから。

「不意をついて注射をするしかないですね。」

獣医さんは言った。正論だった。

まず持ってきたジャーキーをゴンの前においた。そして「待て」をさせて、ゴンの意識をジャーキーに向かせた。

静かに後ろから近づく獣医さん。まさに一瞬だった。

⏰:09/04/16 12:11 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#59 [太郎]
「よしっ」の声とともにゴンはジャーキーを食べる。それと同時に獣医さんは後ろからゴンの腰あたりに注射を刺した。一気に予防接種を打ち込み、即座に逃げるようにゴンから離れた。

ゴンはジャーキーに夢中だった。食い意地のはった犬だ。無事予防接種は終わった。

それから狂犬病検査なのだが…

申し訳ないが、どう検査したか覚えていない。

確か唾液かないかを採集しての検査だったと思う。

そしてゴンをまた車に乗せ、支払いを済ませてから家に戻った

⏰:09/04/16 12:47 📱:D905i 🆔:l/weZALU


#60 [太郎]
検査結果。ゴンに狂犬病の疑いはなかった。それをゴンが噛んだおじさんに伝えると、ホッと胸をなで下ろしていた。

病院から帰ってきた俺はどっと疲れていた。ゴンと一緒に外出すると、歩行者などにかなりの注意をはらわなければならないので、俺の気の張り方は尋常じゃなかっただろう。

ましてや、先日他人を噛んだばかりだったから。


それから一時は、平和な日々が続いた。

その頃の俺は、フリーターとして何も考えずバイトをしていた。将来の事でお母さんと毎晩のように喧嘩していた。その喧嘩をゴンは玄関で聞いていただろう。

⏰:09/04/16 12:58 📱:D905i 🆔:l/weZALU


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