人を嫌った犬の一生
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#7 [太郎]
1ヶ月くらい経っただろうか。ヨチヨチ歩きながらも、衣装ケースの小屋から這い上がって出てきて、家の中を歩きまわるようになった。

そのたびに家族の誰かが小屋に戻してあげる。

また出てくる。

の繰り返しだった。

ある日テレビを見ていると、玄関から「ゴンッ」と音がした。

行ってみると、子犬が玄関の段差から落ちたようだ。

それを見て子犬の名前は決まった。

⏰:09/04/14 11:16 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#8 [太郎]
言うまでもないかな。

名前は「ゴン」。

家族満場一致の決定だった。

それから数ヶ月で、ゴンは外に出るようになった。

俺の家は山の中だったので、無駄に庭が広かった。のびのびとゴンが育つように、庭の中で放し飼いをするようにした。

もちろん庭から外に出ないように、色々な場所に柵を作って。

⏰:09/04/14 11:20 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#9 [太郎]
初めて歩くうちの庭に、ゴンは興味津々だった。

お母さんの作った花壇をめちゃめちゃに荒らしたり、玄関の目の前に糞をしたりと、イタズラな面もあった。

幼い俺はゴンを叱る事はせず、叱り役はもっぱらお母さんだった。

その頃のお父さんは、家の中でも浮いていた。

帰ってきても「ただいま」も言わず、部屋に入る。

たまに夜中、お母さんとお父さんの喧嘩する声が聞こえる事もあった。

⏰:09/04/14 11:57 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#10 [太郎]
うちの家庭は壊れていた。

お母さんとお父さんの不仲に始まり、お母さんとお父さんの実家の不仲、お母さんの俺やお兄ちゃんに対する過度な叱り方(虐待)など…。

しかしそんな中でもゴンの可愛い姿を見ると癒された。ムードメイカー、と言えたのかな。

お母さんに叱られ泣いているとゴンが近づいてその場に座り、不思議そうな表情で首をかしげてきた。

その表情を見てさらに涙が溢れた。

⏰:09/04/14 13:47 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#11 [太郎]
何年か経つと、そんなあいくるしいゴンが人に慣れてない事に気付く。

郵便屋さんにすごく吠えたり、散歩に行くと他の人や犬に飛びかかろうとしたり。

人里離れた山の中で家族意外と触れ合うこともなく数年を過ごしたゴンは、他の人間を見ると怖かったのかもしれない。

小学校一年生になったある日、俺は珍しく友達をうちによんだ。

お母さんがゴンを鎖で繋いでいたが、友達が俺やお母さんが目を離したすきにゴンを撫でようとした。

⏰:09/04/14 13:53 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#12 [太郎]
するとゴンは、その友達の腕に勢いよく噛みついた。

「ゴン!やめなさいっ!!」

お母さんが鎖をひっぱり、友達からゴンを引き離した。

「いたいいたい!」

友達は泣いていた。7歳の俺は何もできなかった。

帰り道、友達は何も話さず帰っていった。

お母さんと俺は、お菓子を持ってその友達の家に謝りに行った。

⏰:09/04/14 13:57 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#13 [太郎]
謝罪はしたが、その友達とはそれ以来一切口をきかなくなった。

あの時「ゴンには触らないでね。噛まれるからね。」

と念を押して何回も言ったのにそれでもゴンに触った友達が悪いんだ、とゴンを恨むことはなかった。

幸い傷はそんなに深くなく、謝罪に行った時は大袈裟な包帯をしていたが、次の日にはバンソウコウに変わっていた。

⏰:09/04/14 14:01 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#14 [太郎]
お母さんはゴンを怒った。俺にはなぜゴンが怒られるのか分からなかった。

洗濯物を叩く棒でゴンを叩いた。ゴンは「キャン」と痛そうな声をあげた。

かわいそうで仕方がなかった。

「ゴンは触られたから噛んだんよ。なんでゴンを叩くん?」

お母さんに聞くと、次は俺が怒られた。

「あんたの友達が噛まれたんよ!あんた友達を何と思っとるの!?」

⏰:09/04/14 14:13 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#15 [太郎]
髪を引っ張られ叩かれ蹴られ、またいつもの虐待が始まった。小さな俺はひたすら耐えるしかなかった。

そして怒られたあとは必ずゴンのいる庭へ行く。

ゴンは俺に対し、申し訳なさそうな表情をし、木の影からこっちを見ていた。


「ゴン、おいで!」

そう言うと走って寄ってきた。

「ゴンが悪いんじゃないよ。」

そう言うとゴンは俺の手をペロと舐めた。

⏰:09/04/14 14:19 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


#16 [太郎]
他人には吠えたり噛んだりするゴンだったが、家族にはそんな事はしなかった。

隣に住む犬好きのおばさんが、「ゴンちゃんは、立派な番犬だね。」と言った。

まるで自分が褒められたようで嬉しかった。

そのおばさんが、ある日ゴールデンレトリーバーの雌のコノちゃんを買ってきた。

ゴンはコノちゃんを気に入ったのか、散歩で家の前を通るコノちゃんをジッと見つめていた。

たまにコノちゃんがうちの門まで来て、ゴンと門越しにジャレる事もあった。

⏰:09/04/14 14:28 📱:D905i 🆔:dDKpoZ0.


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