『　違　う　』

麻『普通じゃないよ。相手が翔太だったから。だって翔太は家族みたいなもんだし…』

徹『…。』

麻『…。』

徹『まぁ…いいや。』

その後も笑顔で色々な話をしたがやはり微妙な空気が流れていた。
少し気まづいまま居酒屋を出た。

幼なじみの翔太との事を言われなんだかムカムカしていた。なんで彼氏でもない人にそんな事説教されなきゃいけないの？と思えば思うほどイライラしてきてすぐに帰りたかった。

徹『少し歩いて行こう。』

こいつは空気が読めないのか。なんであんな話して気まづい後にまだ一緒に歩かなきゃいけないんだと思った。
けれどお酒も入っていたので少しさましてから帰ろうと思い歩いた。

徹『ちょっと座って。』

と言われ花壇のようなところへ座らされた。

徹『あのさ…俺…』

麻『何？』

徹『俺、麻美の事好きになっちゃったんだ。だから付き合ってほしい。』

説教の後に告白って。
しかもお酒呑んだ後だし。そう思うとあきれてしまい『フッ』と笑った。

なんでも話せて居心地がよくて親友の様に感じていたのに説教されてイライラしていた私はその告白がなんだか嫌だった。

麻『ごめん。今は友達としか思えない。』

そう断り、私達はそれぞれ帰宅した。

頻繁にきていたメールはまったくこなくなり、１ヶ月がたった。
そんなもんだよな、と思いながらもどこかで気になっていた。

毎日暑い日が続きセミの鳴き声が耳にまとわりつく。

『徹くんは今何しているのかな。』

頻繁にメールをしていた頃私の地元で夏にやる花火大会の話になったのを思い出した。
それから一緒に行こうかと約束した事も思い出した。

そんな時１ヶ月ぶりに徹くんからメールが届いた。

『明日、花火大会じゃん！もし良かったら一緒に行かない？』

すごく嬉しかった。
その日の夜、翔太に電話をし花火大会に誘われた事を話した。

翔『お前もちろん浴衣着てくんだろ？』

麻『えっ、いや、考えてなかった。』

翔『いゃいゃ着てけって！徹も喜ぶぜ！！』

もちろん浴衣を着て行く事は考えていた。
普段着とは違う姿を見てもらいたいなって。
でもフッた相手に今更そんな事するなんて逆にいけない気がした。

徹『駅前着いたよ！』

電話が着て慌てて家を飛び出した。
こんな時にかぎって履きなれない草履だなんて。
小走りで走って行くと駅前に徹くんの姿が見えた。

久しぶりに見た姿に胸がキュンとした。
呼吸を整えながら、結局浴衣を着てきてしまった事、その姿を見てどんな反応をされるかとか考えて恥ずかしくなった。

ゆっくりと近づいて行く。私に気付き近づいて来る徹くん。
少し照れた表情で…

徹『浴衣…可愛いじゃん！似合うよ！！(照)』

麻『…ありがと。(照)』

徹『じゃ歩こうか！』

久しぶりだと言う事もあって少しぎこちない２人だったが次第に前みたいに打ち解けていった。

橋の上で花火が上がるのを見た。
すごく綺麗で見とれてしまう程だった。
キラキラした花火を見つめながら考えた。

『私きっと徹くんが好き。でも、もぉ徹くんは私の事なんとも思ってないんだろうな。今更何を…。』

そう思ったら益々愛しくなった。
徹くんの左手を握りたかった。『好き』と伝えたかった。

でもやっぱり『今更』と言う言葉がはなれない。

徹くんは優しい。
だから花火大会の約束を守ってくれたんだ。

あっという間に花火大会は終わり駅へ向かう人の波にまぎれ私達は歩いた。
徹くんが人混みを嫌いな事知っていたからなるべくすいてる道を探して歩いた。

徹くんが電車へ乗り込んだ頃、１人家へ向かって歩いた。
次いつ会えるのかそればかり考えていた。

『次』は意外にも早くやってきた。

『大学の友達と遊ぶんだけど一緒にどう？できれば女の子１人連れてきてもらえるかな？』

そんなメールが届いた。

嬉しかったけど、女の子連れてこいと言う内容に複雑な心境だった。

でも、会いたい。

待ち合わせ場所へ着き、軽く自己紹介を済ませ４人でご飯を食べに行った。
その後カラオケへ行き、レンタカーを借りて海へ。

その間、徹くんは私とは１度も目を合わせてくれなかった。

海へ到着し言葉を失った。その日は偶然にも流星群が見られる日とあってプラネタリウムの様に辺り一面が星だった。

星を見ながら思った。
やっぱり私徹くんが好き。今更だったとしても伝えたいって。

徹『皆で写真撮ろうよ！』

東の空が明るくなった頃、記念にと４人で撮った。

レンタカーを返しそれぞれがそれぞれの電車で帰宅。

その間私達はメールをしていた。

徹『今日はありがとう！』

麻『こちらこそ！楽しかったよ！星も綺麗だった！』

徹『あれすごかったね！！流れ星産まれて初めて見たよ！！』

麻『13回も見ちゃったから逆に怖かったわ(笑)』

徹『あはは！確かに(笑)』

麻『でもあれ今日も見れるらしいよ！』

徹『そーなんだ！じゃ今日バイトの帰りにでも近くの公園寄ってみようかな！』