世界で一番幸せになりたい人たちへ

初めての面会の日｡
マサに会えたのが
嬉しくて嬉しくて
マサが隣にいないことが
寂しくて
泣きじゃくる私に
マサは言った

｢おまえのことなんか好きでもなんでもなかった｡てか邪魔｡俺がこっから出るまでに俺んち出てって｡顔も見たくねえ｡消えろ｣

頭が真っ白になった｡

｢私のこと好きじゃなかった?…嘘だ｡嘘だよねマサ｣

祈るようにマサを見つめるとマサはすっと私から目をそらした｡

｢もう二度と俺の目の前に現れんな｣

そういうと奥に消えてった

ﾊﾟﾆｯｸ手前の頭で考えた

夢を見てるんだ
嫌な夢

マサが裏切るなんて
そんなわけないよ

そう思って
自分のほっぺを
おもいっきり
つねってみた

｢なんで覚めないのよ…｣

なんとなく現実を理解した私はその場で泣き崩れた｡

マサは本気だ
マサがそんな冗談を言うわけない｡私はもうマサの彼女じゃないんだ

それからどうやって帰ったかは覚えてない｡気付くと昨日まで笑って一緒に暮らしてたマサの家の前にいた｡周りも暗くなってた｡

もうここは私が帰る家じゃない

実家に帰らないと…
頭では分かってても
体が動かない｡

実家は大嫌いだった
義父はアル中で暴言暴力が絶えない｡帰ったらまたきっと殴られる｡

母親は大好き｡でも義父と私の間に挟まれてかなり苦労していた｡
母親に辛い思いはさせたくない｡私がいなければいいんだ……

そう思って飛び出した家にまた戻ることになるなんて

あのときマサは家出した私のことを嫌な顔ひとつせずに受け入れてくれた｡私が落ち着くまで話を聞いてくれた｡

いっぱいいっぱい助けてもらったのに｡

私がマサに与えられたものなんてあったのかな…

重い足を引きずるように実家に帰った｡

｢ただいま｣

小声で呟くと
母親が出てきた｡

私と目が合った母親は
安心したような､でもどこか不安そうな顔で笑った｡

｢おかえり｡｣

リビングに入ると義父が酒を片手に偉そうに座ってた｡この光景を見て何度殺してやろうと思ったか分からない｡だけど私には殺す勇気なんかなかった｡