*忘れない*

少女漫画も、小説も、結局は幸せになる結末…。
でもね、私の結末はちょっと違うのかも知れない。

彼は、男前ではない。どちらかというと、田舎ものの顔。
でも、その時私は横にいた女友達に『あの人かっこいいなぁ』って笑いながら言った。
すると友達は『ありえへん。』って拒絶した顔で言った。

音楽会も近づいて楽器の人は一生懸命練習していた。
私の友達は木琴をしていたので、その子と一緒に帰る為、私は１人で体育館の横で待っていた。
すると何人かの男の子が体育館から出てきた。
私はヤバい、またキモいって言われると思い、逃げた。

すると、この前練習の時にドラム叩いていて、私がかっこいいって言った男の子、Ｍが『おい！！なんで逃げねん!!』と私に話しかけた。
私はびっくりした。だって男の子から何か言われるとしたら、『キモい』『どっか行け』とかだけだったから。

私がＭに『別に…ただ私おったら邪魔になるから。』って言うと。
『別に邪魔ちゃうやろ。被害妄想強！！』って笑われた。
内心嬉しかった、男の子が笑ながら普通に話しかけてくれたのが。

その後から、私は本気で彼を意識し始めた。
友達を口実に彼の教室まで行ったり、少しでも彼を見たかった。
音楽会も無事に終わり、冬にはマラソン大会があった。
私はスポーツが苦手だった。
マラソンもいつも遅かった。

初めに男の子が走って、帰ってくる。
私はその時も彼が気になって、声は出せなかったけど、心の中で『がんばれ』って言ってた。
次に女の子の番。
一生懸命走った、でも、外周を走って、校内に入ってくる時にはほとんどの子がゴールしてる時だった。
もうほとんどの男の子は教室に入ってる。

私はゴールに入る瞬間、彼の声で『Ｋがんばれ』って聞こえた。
空耳かな、でも私はゴールまでも５０ｍは全力疾走で走った。
その後、教室に入るとき、Ｍを見かけた。
私は、あの声は空耳？って聞きたくって、Ｍに話しかけた。
『私が、ゴールする前誰かに応援してた？？』
すると彼は笑いながら、『お前にがんばれって言ったんやし』と言った。

『あ…そう…ありがとう』
内心すごっく嬉しかった、でも、私はずっと気になっていた。
男の子に嫌われてる私といたら、Ｍまで何か言われるんじゃないか。迷惑かけるんじゃないか。って。
だから私は、『私なんか応援したら、あんたまで友達にキモい言われんで。』って言った。

すると彼は『本間被害妄想。俺はお前になんも嫌なことされてへん。そら俺の友達がいろいろ言ってるみたいやけど、俺には関係ない事やん。だから普通に話してんねん。』って笑いながら言った。
この言葉に私はすごく救われた。

それから、ずっと彼の事を好きだった。
今まで、あの人好き。あの人かっこいい。って言ってたけど、その時の気持ちとは明らかに違う。
彼を見かけただけで、胸が苦しくなった。