【こんな君も､あんな君も】

いつものように
コンビニでコーヒー牛乳を買った

いつものように
空を眺めながら帰った

消えそうで壊れそうな
優しい声が
聞けなくなったのは
いつからだろう

>>1-100

次の日
和哉に話そうかと思ったけど
迷惑かと思って
黙っておくことにした

いつものように
学校で話していると
後ろから視線を感じた

振り返ると
和哉の元カノが
こっちをじっと見ていた

あぁ ‥あの人か､昨日の

あたしは直感的に感じた

すると
和哉が元カノに気づいた

特に
間の悪そうな顔をするでもなく
目をそらすわけでもなく

｢ねぇ和哉?｣
元カノの奈津が
こっちに近づいてきた

あぁ ‥ この人だ

確信に変わった

だけどそこであたしは
思い出してしまった

和哉はまだ
奈津が好きなんだった‥

今どんな気持ちなのかな
あたしが和哉と話す時くらい
ドキドキしてるのかな

和哉は感情をあまり
表に出さないタイプだから
わからなかったけど

｢あのアルバム買った?｣
奈津は和哉の
ワイシャツの袖あたりを
少し掴んでいた

手をつないでるようにみえて
あたしは目をそらした

奈津と和哉は
音楽の趣味がにていたみたい

｢ああ‥買ったよ｣
いつもの笑顔とは違い
楽しそうで

奈津は生徒会長で頭もよかった
和哉と同じテニス部で
しかも可愛かった

認めたくなかったけど
お似合いだった
話だって合うだろうし ‥

確実にあたしは自信をなくした
別れたとは思えないように
楽しそうに話す２人

２人以外がぼやけて見えちゃって
ぼーっとただ見つめていた

｢買ったの?貸してよおっ｣
掴んだ袖を揺らしながら
あたしと同じ人を
見つめていたのだ

和哉には
どう映ってるんだろう?

｢じゃあ､明日持ってくるよ｣
笑顔で答え手を振った

たったの数分
スローモーションのように
何倍も長く感じた

涙はでなかった
学校なんかじゃ泣けなかった

　
きっと
とてつもない顔をしてたんだろう
和哉は奈津と話し終わるなり
あたしの頭をぽかんと叩いて
けたけたと笑った

あたしはあえて
何も言わなかった

｢なんか言いたそう｣
椅子に座り頬杖をついて
ぼそっとこっちを見て言った

あたしが軽く
横に首を振ると
何かを感じ取ったかのように

｢何で別れたかって?｣
得意げに
だけど困ったように

あたしが答えようとするのに
わざとかぶせたかのように
｢‥帰りね｣
にこっと笑ってどこかへ行った

別れた理由は気になっていた
奈津が振ったのは
確かだけど ‥

あんなに仲良さそうに話してた

気になってはいたけれ
なんとなく
知りたくなかった

急に雨が降り出した

｢あぁ‥雨だし｣
空を見上げて寂しそうにして

和哉の横顔が
やっぱり好きだった

｢傘‥｣
あたしは傘を広げ
和哉に渡した

不思議そうにこっちを見つめ
その傘の中にあたしを入れた