“なんであなたなの”

そう言われて
間違ってるって
気付いた時には
もう止められなかった。

男を好きになった俺の話です。

店員10円くらいまけてやれよとか思いながらも

｢あの、どーぞ。俺ちょーど10円あったんで｣

ってﾚｼﾞに10円玉を置いた。

｢え!ごめんなさいっ!同じ高校ですよね?あとで返しますね!｣

晴香先輩はそう言うと頭をﾍﾟｺｯと下げた。

いや、10円くらいいーですけど…って言おうと思ったのに晴香先輩は買い物するとﾀﾞｯｼｭで店を出て行った。

…早っ!!（笑）

てか名前も学年も聞かずにどうやって返す気だよ。

美人だけどｱﾎなんか?

すると携帯が鳴った。

“まだｺﾝﾋﾞﾆ?なに買ってるのー?”

莉奈から

だ。
は?ふざけんな、何買おうがいーだろ。まじめんどくせぇ。

数日後結局莉奈とは別れて、俺は自由になった。
彼女はしばらくいらない。

あのｺﾝﾋﾞﾆでの出来事もすっかり忘れていた。

｢かなた!美人がお前のこと呼んでるよ!｣

あるときｸﾗｽのやつにそう言われて入口に目向けると晴香先輩がいた。

えっ…なんで!

｢吉川くん!遅くなっちゃったけどお金!ありがとう!｣
そーいやそんなこと忘れてた。

｢どーも…よく探せましたね（笑）｣

｢特徴言ってみんなに聞いたの!細くてｷﾚｲな顔してる人って｣

｢あー、そーなんですか｣

相変わらず晴香先輩からはいい匂いがする。

｢10円助かりました♪ありがとう♪｣

そう言って背を向けて歩いて行った。

そしてくるっと振り返ると優しく笑ってﾋﾗﾋﾗと手を振った。

なんかかわいーかも。

てかかわいいだろ。

もっと堅いｶﾝｼﾞかと思ったらそーでもないし。

俺と晴香先輩はそれをきっかけに話すようになってだんだんと｢晴香先輩｣｢かなちゃん｣って呼び合うようになった。

かわいいと思ったけど

だから好きだとか付き合いたいとか告白したいとかそんなんじゃなくて

なんか見てて話してて癒されてた（笑）

いつも優しく笑ってる晴香先輩を見るとほっとした。

晴香先輩は俺のこと弟みたいにかわいがってくれて｢かなちゃんかなちゃん｣っていつも優しかった。